人間の行為において、ミスをゼロにするのは難しい(※写真はイメージ)
人間の行為において、ミスをゼロにするのは難しい(※写真はイメージ)

 がんと告知された患者は、ただでさえ冷静に説明を聞くことが難しい心理状況なのに、かぎられた診察時間で、医師と適切にコミュニケーションをとることはさらに難しいことといえるでしょう。ここでは、「がんだったのに、見落とされていた」「一つの治療法だけ強引に勧めてくる」について、日本医療コーディネーター協会代表理事・嵯峨崎泰子さん、聖路加国際病院相談支援センター医療連携室・がん相談支援室アシスタントナースマネジャー橋本久美子看護師に回答してもらった内容を紹介します。

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Q:がんだったのに、見落とされていた

A:まず、最初の診断の医療ミスの可能性を探ってみましょう

 担当医から「良性の腫瘍です。急いで治療する必要はないでしょう」と説明を受けたのに、その後体調が悪化、別の病院でがんと診断されたというケースもゼロではありません。こんなとき、「がんを見落とされていた! すぐに治療していれば、治療効果が高かったはず」と思うのは当然です。

 がん治療はチーム医療が基本なので、担当医単独で診断を下すことはまずありません。しかし画像に映りにくかったために発見できなかった、医師によって判断が分かれたなどのケースもあります。また、いくら検査法が進化しても、担当医がどんなに経験を積んでいても、人間の行為において、ミスをゼロにするのは難しいことです。

 まず、今の担当医に、最初の段階で見落とされた可能性があるか、治療が遅れたことで効果が下がったか、相談してみましょう。正しい意見を述べてくれるはずです。

■法律の専門家に相談してベストな対応法を選ぶ

 医療ミスの可能性を疑う場合や、不信感をぬぐえないで悩む場合は、病院の患者相談室や医療ADR(裁判外紛争解決手続き)部門、あるいは外部の医療コーディネーターや法テラス、自治体の法律相談などに相談し、専門家とともにベストな対応法を選びましょう。

 しかし、まずは今の担当医のもとで、がん治療に専念することが第一です。

 医療ミスのケースでは、「診断になんとなく違和感があった」「良性と信じたかったので、自分で感じていた疑問に目をつむっていた」などの声を聞きます。最初の診断時、おかしいなと思ったら担当医に確認し、場合によってはセカンドオピニオンを受けることが大切です。

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感情的になってはダメ