公用文書毀棄罪で告発状を提出していた神戸学院大学の上脇博之教授が怒る。
「昭恵氏が口利きをして、夫人付き政府職員の谷査恵子氏が財務省に問い合わせを行ったことが赤裸々に書いてあったから、財務省は改竄したのです。その事実こそが国民にとっては重要で、昭恵氏が関わったから8億2千万円もの無理な値引きが行われたことが明らかになったわけです。それが罪に問われないなら、口利きする政治家の天国になってしまいます」
また、検察は交渉記録などが、財務省の管理規則によって保存期間が過ぎた文書は廃棄されなければならないことから、公用文書を廃棄したと認めることは困難だったとの見解を示した。このため、不起訴の判断に至ったと説明した。
「文書の保存期間が切れていても、交渉記録が職員の手控えや個人メモであっても、国会に提出された時点で公用文書になるはずです。公用文書の定義である『公務所に用に供する文書』ならば、公文書でも私文書でも構わないのです。検察まで忖度したと言われても仕方ありません」(上脇氏)
元東京地検検事の郷原信郎弁護士はこう見る。
「虚偽公文書作成については、検察自身もこれまで捜査報告書をはじめとして、大なり小なり事実に反する書面を作ってきた。だから、そのハードルを下げて摘発の対象にすることはできないだろうと見ていました。しかし、上脇教授が指摘する公用文書毀棄は別です。たとえ財務省にとっては用済みの文書でも、国会から求められて提出したのだから公用文書になるという理屈は十分通る。起訴していれば有罪になったはずです。なぜ起訴しなかったと言えば、最初から全面不起訴の結論ありきだったからです」
実際に、大審院(最高裁)の判例にも、保存期間を過ぎた文書でも廃棄すれば、毀棄罪に該当することが示されているという。
上脇教授は近日中にも、検察審査会に申し立てを行う予定だ。告発状が受理されれば、検察審で「起訴相当」の議決が出る可能性も十分あるだろう。