「昔ながらのしょっぱい味が当たり前に地域に受け継がれてきた。改善には長い時間が必要です」。今後も家庭訪問を繰り返し、減塩を粘り強く訴えるという。

 次に、メタボ該当者・予備軍の割合が低い都道府県にも目を向けてみよう。

 メタボの比率が最も低かったのは岐阜。平均腹囲も男性は全国で最小、女性が全国で4番目に細く、男女ともにスリムな人が多いようだ。県の担当者は「県内の高校生もやせ形が多い印象。若いころから、過剰に食事を摂取していないのでは」という。

 都道府県別に、メタボ健診で腹囲が90センチ以上だった人の比率をみると、岐阜は男女ともにスリムだ。新潟、静岡、長野、山梨などを含め、中部地方はおなかの出た人が少ないようだ。

 長寿県で知られる長野は、女性の平均寿命が全国1位(87.67歳)で、男性が全国2位(81・75歳)。メタボ比率が低い理由の一つとして、県は野菜摂取量の多さをあげる。「農業従事者や家庭菜園をしている人が多く、新鮮な野菜を食べる機会が多い」(県健康増進課)という。

 ただ、野菜摂取量が多いとメタボにならないかといえば、そう単純ではない。

 福島は男女ともに1日の平均野菜摂取量が2位と長野に次いで多いが、メタボ比率が高い。と同時に、長野と並んで塩分摂取量が多い。福島県の担当者は「ドレッシングなどに塩分が多く含まれている可能性もある」とみる。野菜摂取と減塩を両立させる工夫をするように県民へ呼びかけている。

 食生活とともに、メタボに関連しそうな指標が運動量。東京、京都、神奈川など都市部の都府県は、1日の平均歩数が多く、メタボ比率も低い。通勤や仕事で歩いたり、階段の上り下りをしたりする機会の多さが歩数の差につながっているのだろう。

 メタボ比率の高い沖縄、宮城、秋田、宮崎、高知、和歌山などは総じて平均歩数が少ない。「県土が広く、移動に車を使うことが多い」(高知県健康対策課)、「雪で外出する機会が減る」(秋田県健康推進課)などそれぞれの地域事情もあるようだ。

「和歌山は、軽四自動車の保有率(普通車・小型車・軽四の登録台数に占める軽四の割合)が全国1位だったこともある。コンビニに行くのも検診に来るのも軽四だ」と苦笑するのは、和歌山市の角谷リハビリテーション病院の有田幹雄院長。

 和歌山は特定健康診査の受診率が、40.6%と全国ワースト2位。メタボ該当者・予備軍の比率は、全国で7番目に高い。有田さんは「自分の人生の道筋を考えたうえでアプローチしないと、生活習慣病は解消できない」という。地域の小中学校や高校で、子どもの血圧を測定したり、健康をいかに長く保つかについて話したりしている。

「自分の健康は、自分で守る」。これが有田さんのメッセージだ。人生100年時代と言われる今、長い生涯を頭に思い描き、毎日の食卓や行動から変えていく。それが大切なことのようだ。(藤嶋亨)

週刊朝日  2018年3月23日号