「脂肪のとりすぎがメタボを助長している」

 そう警鐘を鳴らすのは、沖縄の食文化に詳しい西大学院の西大八重子学院長。60年代前半、米国発のファストフード店が日本で初めて沖縄に進出するなど、「食の欧米化が進み、伝統料理離れが起きた」(西大さん)という。

 西大さんによると、沖縄の伝統料理は「炒め物料理のチャンプルーに代表されるように、肉や魚、野菜、海藻などを偏りなく使い、そのうまみを利用することで塩分を控えるのが特徴」という。実際、沖縄の食塩摂取量は今も全国で最も少ない。

 長寿食といわれる伝統料理に親しむ高齢世代と、脂肪過多の食事を好む若い世代。両世代の食生活の差が死亡率にも表れているとみられ、県は「伝統料理の良いところは取り入れ、バランスよい食事を」と訴える。

 福島は東日本大震災と東京電力福島第一原発事故を境に、メタボ該当者・予備軍の比率が大きく増えた。10年度は計27.9%、15年度は29.6%。5年間の差は1.7ポイントと、全国で最も大きい。

 特に、予備軍を含めないメタボ該当者の比率は原発事故前に15%台だったが、事故のあった11年を境に17%台へと急増。県健康増進課は「震災で避難生活を強いられた人が多く、生活習慣が変化した。気軽に運動できなくなったり、調理済み食品を購入する人が増えたりしたことが大きい」とみる。

 日本肥満症予防協会によると、肥満者は標準体重の人と比べ、高血圧になる確率が2~3倍高い。血液中の塩分濃度が高くなると、それを薄めようと水分が血管内へと動き、全体として血液量が増加。血圧が上昇し、血管に負担がかかる。

 宮城は、男性の1日の平均食塩摂取量が11.9グラムと、全国で最も多い。秋田、福島などメタボ比率上位の東北の県は、食塩摂取量が多い傾向だ。

 宮城県の「14年県民健康調査」によると、20歳以上対象の調査で、めん類のスープや汁を「ほとんど全部飲む」「8割飲む」と答えた人が男性47.3%、女性19.4%。女性と比べ、男性の割合が大幅に高い。

 宮城県気仙沼市で、食育コーディネーターとして活動する佐藤聰子さん(74)は、塩分計を手に地域の家庭を回り、減塩メニューを指導している。佐藤さんの幼少期、生魚など生鮮食材を口にする機会は1年を通じて少なく、冬はイカの塩辛や魚の干物など保存食がよく食卓にのぼったという。

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