帯津良一(おびつ・りょういち)/1936年生まれ。東京大学医学部卒。帯津三敬病院名誉院長。西洋医学だけでなく、さまざまな療法でがんに立ち向かい、人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱。「死を生きる」(朝日新聞出版)など多数の著書がある帯津良一(おびつ・りょういち)/1936年生まれ。東京大学医学部卒。帯津三敬病院名誉院長。西洋医学だけでなく、さまざまな療法でがんに立ち向かい、人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱。「死を生きる」(朝日新聞出版)など多数の著書がある
仰向けに寝てはダメ?(※写真はイメージ)仰向けに寝てはダメ?(※写真はイメージ)
 西洋医学だけでなく、さまざまな療法でがんに立ち向かい、人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱する帯津良一(おびつ・りょういち)氏。貝原益軒の『養生訓』を元に自身の“養生訓”を明かす。

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【貝原益軒 養生訓】(巻第五の6)
夜ふすには必側(かならずかたわら)にそばたち、
わきを下にしてふすべし。
仰(あお)のきふすべからず。
仰(あお)のきふせば気ふさがりて、
おそはるる事あり。

 益軒先生は寝るときの姿勢についても、いろいろと説いています。寝つきのいい私は、寝るときの姿勢について、あまり関心を持ったことがないのですが、益軒先生の注文は、事細かです。まず、こう始まります。

「夜寝るときには必ず側臥位(そくがい)になり、わきを下にしないといけない。仰向けになって寝てはいけない。仰向けで寝ると、気がふさがって、うなされることがある。胸の上に手を置くのもいけない。寝入って、気がふさがり、うなされやすい。この二つは避けなければいけない」(巻第五の6)

 寝る向きは人によって様々だと思うのですが、少なくとも益軒は側臥位がお好みだったようです。さらにこう続きます。

「夜、床に入って、まだ眠りにつかないうちは、両足を伸ばしているのがよい。寝入ろうとする前に両足をかがめて側臥位になるのがよい。これを獅子眠(ししみん)という(ライオンはこうして寝入るんでしょうか)。

 胸や腹に気が滞っているようだったら、両足を伸ばして、胸や腹を手でなでおろすとよい。気が上る人は、足の親指をしきりに動かすとよい。人によっては、このようにすると、あくびを繰り返すようになって、滞った邪気を吐き出すのに役立つ。ただ、大あくびはしないほうがいい。

 また、寝入ろうとするとき、口を下に向けていてはいけない。睡眠中によだれが出てよくない。(略)両手の親指を内にして握って寝ると、手で胸を圧迫してうなされることがなくなるのでよい。習慣になって、眠っても手を開かなくなる。この方法は『諸病源候論(しょびょうげんこうろん)』(隋の時代の医者、巣元方の著書)に書かれている」(巻第五の7)

 
 このほか、寝巻きで顔をおおわない、明かりは消す、つけるにしてもかすかにしておく、といった注意とともに「眠るときは口を閉じるべきだ。口を開いて眠ると、真気(しんき)を失い、歯が早くぬける」(巻第五の8)とも言っています。

 眠り方についてこんなに注文があると、かえって眠れなくなってしまうのではないでしょうか。私の寝つきがいいのは昼間に一生懸命働くのと、晩酌のお陰だろうと思っています。でも、晩酌と寝酒はちょっと違います。アルコールには興奮作用があるので、寝酒をすると眠りが浅くなります。晩酌から寝るまでに時間を置くようにしています。

 眠れない人には白隠禅師(はくいんぜんじ)の「内観の法」がおすすめです。白隠禅師自らが不眠症になったときに編み出した方法です。

(1)大の字に仰向けになり、目をつむって、全身の力を抜く(2)鼻からゆっくり息を吸いながら、お腹をへこませる(3)十分に吸ったら、鼻から静かに息を吐く。お腹は膨らませる(4)これを3回ほど繰り返し、心が静まったら、自分の心の中を見つめる。

 この方法で大切なのは、「眠ろう」「眠らなければ」と思わないことです。眠れたらもうけものぐらいの気持ちで続けていると、眠れるようになります。

週刊朝日 2018年3月9日号

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帯津良一

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帯津良一(おびつ・りょういち)/1936年生まれ。東京大学医学部卒。帯津三敬病院名誉院長。人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱。「貝原益軒 養生訓 最後まで生きる極意」(朝日新聞出版)など著書多数。本誌連載をまとめた「ボケないヒント」(祥伝社黄金文庫)が発売中

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