グループ犯罪ものなので定番の、個性的なメンバーをそろえていく過程が読ませる。「七人の侍」にしろ「荒野の七人」にしろ、だんだんメンバーがそろっていくのが面白いじゃないですか。

長田:隠し財産を強奪しようとか、大好きなんですよ、わたしも。

縄田:これはやられたと思った場面があります。両国の川開きの日に金蔵を破るのですが、そのシーンが100ページ以上にわたって続く。すぐにピンときたのは、赤狩りでハリウッドを追われたジュールス・ダッシン監督のギャング映画「男の争い」で、20分間音のない金庫破りのシーンが続きます。

長田:映画ならグループ犯罪もので浮かぶのは「オーシャンズ11」ですね。

縄田:「オーシャンズ11」は、オリジナルの「オーシャンと十一人の仲間」のほうが数倍面白いんですよ。フランク・シナトラが主演で、ディーン・マーティンやサミー・デイビスJr.らシナトラ一家勢ぞろいの映画でね。

長田:スクリーンを離れても危ない人たち(笑)。

縄田:仲間の一人が「その金を強奪したら娘を大学にやれるのか」と聞くと、主人公が「馬鹿やろう、大学ごと買ってやれるさ」と答えるんですよ。

長田:そうか、その点、『躍る六悪人』はもっと大仰な台詞をいう人物があってもいいのかもしれません。たとえばサッカーでいえばファンタジスタといいますか、とんでもないことをやる人がやってきて周囲を動かすような。

縄田:これを映像化するとしたら、どの役をどの俳優がやるといいだろうかと考えたりするわけですよ。それで、河内山宗俊は案外、山田孝之あたりが坊主頭にしたらできるんじゃないかと思いました。

長田:えー! 縄田先生、見てますか、彼の出演作品を。

縄田:缶コーヒーのCMはたくさん見ています(笑)。

 17年は憎まれ口を叩く暇がないほど傑作が多かった。ほかにも武内涼『駒姫』などは、ページをめくるごとに涙腺がゆるみました。

長田:みなさん現実でない世界を読みたいという思いが強いのかもしれない。殺伐として苦しい世の中だったりしますので。これからお正月にかけて読みたいものがたくさんできました。

(構成/小柳学)

■縄田一男が2018年に期待する3人の作家

<簑輪諒>
『でれすけ』は「これが人生だな」と思わせる作品。26歳でデビューして3年でこれを書けるとは末恐ろしい。
<今村翔吾>
鳶の世界を舞台にした「羽州ぼろ鳶組」シリーズはどれも出来がいい。どんなエンターテインメントを紡いでくれるか楽しみ。
<浮穴みみ>
まるで夢を見ているかのような読後感の短編集『鳳凰の船』。これからもがんばってください。

週刊朝日 2018年1月5-12日合併号