非小細胞がんのステージ別、年齢別の「治療なし」の割合(%)(週刊朝日 2017年12月8日号より)
非小細胞がんのステージ別、年齢別の「治療なし」の割合(%)(週刊朝日 2017年12月8日号より)

 がんの治療は進化し、高齢者にも対応できるようになっている。しかし、それは“健康で長生き”に貢献しているのか。患者本人が「無治療」を希望するケースもある。好評発売中の週刊朝日ムック「肺がんと診断されました」から、最新動向を紹介する。

 がん患者の高齢化が進むなか、医療の進歩で高齢者でも治療は可能になっている。しかし、「何歳まで安全な治療が可能なのか?」という問題が問われるようになってきた。

 そんななか、国立がん研究センターが2017年8月に、初めて高齢者のがん治療についての分析をまとめた報告を発表した。全国427施設で約70万件の症例を集計した「2015年がん診療連携拠点病院等院内がん登録全国集計」で、「75歳以上、85歳以上の高齢のがん患者さんでは、若い年代の患者さんと比較して、部位や病期によって『治療なし』の割合が多いことが分かった」という結果だった。

 この集計では、さまざまな種類のがんのデータがまとめられているが、ここでは肺がんの非小細胞がんを抽出した。これによると、早期のステージIで、75歳以上84歳以下の「治療なし」は7.1%だが、85歳以上になると25.4%と跳ね上がる。根治が見込めないステージIVでは75歳以上84歳以下でも30.2%となり、85歳以上では58%と6割近くが治療を受けていない。

 国立がん研究センターは、この報告書に「併存疾患の有無、全身状態等から若い年代と同様の積極的な治療を行うことが難しいと推測されました」と見解を記している。

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