国民に対し「丁寧に説明する」と繰り返し約束してきたが、それは籠池氏を詐欺師と決めつけることだったのか。これから公判がありますが、行政の長である総理が、刑事司法の「推定無罪の原則」を破ったとんでもない暴言です。名誉毀損に当たる可能性がきわめて高いからです。

 名誉毀損の免責要件は事実の公共性と、目的の公益性です。もし籠池氏から名誉毀損で民事訴訟を起こされたら、安倍首相はどういう反論ができるだろうか。公共性はありますが、「妻はだまされた」なんて自己弁護でしかないから、公益目的とは到底言えません。ましてや、一体何をだまされたというのか。昭恵氏が名誉校長になるときに、籠池氏が何かだましたわけではないでしょう。

 今回の検察の捜査にも政権の意向が働いたと疑わざるを得ません。国の補助金の不正受給であれば、補助金適正化法が適用されるべきなのに、大阪地検はより罪の重い詐欺罪で起訴した。検察実務の常識ではあり得ないことです。大阪府からの補助金不正受給も行政処分の対象で、わざわざ詐欺罪で立件する話ではありません。法治主義の観点からも大問題です。

(構成/本誌・小泉耕平、亀井洋志)

週刊朝日 2017年11月3日号