ほかほかごはんで菌が増殖。梅干しの抗菌効果も限定的。素手で握らないで!
ほかほかごはんで菌が増殖。梅干しの抗菌効果も限定的。素手で握らないで!

 海水浴や山登り、バーベキューなど、アウトドアのレジャーが楽しい季節がやってくる。手作りのお弁当を持っていきたいところだが、気になるのが食中毒。気温が高くなるこの時期は、野外で手軽に食べられるおにぎりでさえ、食中毒の原因となる細菌が増えやすく、注意が必要だ。

【写真】アニサキスを内視鏡で摘出する様子

「おにぎりの食中毒の主な原因菌は、“黄色ブドウ球菌”。私たちの手や腸、のど、鼻などに存在する菌の一つです」

 こう話すのは、長年、地域の食の安全を担ってきた元墨田区食品衛生監視員の笹井勉さん(食品衛生アドバイザー)だ。

 おにぎりを作るとき、ごはんを素手で握っていないだろうか。炊きたてのごはんは湿度も温度も高く、原因菌にとっては居心地の良い環境。手からごはんに付着した菌は、増殖する際に「エンテロトキシン」という毒素を作る。この毒が多量に蓄積されると、食中毒の症状をもたらす。

「黄色ブドウ球菌による食中毒の発生件数は、6月ぐらいから増え始め、7~9月にピークを迎えます」

 と笹井さんは解説。症状は通常、食後1時間から6時間の潜伏期間の後、吐き気や嘔吐、腹痛、下痢などが起こる。なかでも嘔吐が激しいのが特徴だ。

 おにぎり食中毒というと、昨年5月に地震の避難所で起きた集団食中毒が記憶に新しい。34人が症状を訴え、21人が入院した。

 このとき、食中毒の原因となったおにぎりの具は、“おかか”。梅干しだったら大丈夫だったのでは?と考える人もいるだろう。

 だが、梅干しを入れても、おにぎり全体が大丈夫というわけではなさそうだ。梅干しの抗菌作用について、東京都衛生局が東京都健康安全研究センターで実験。使われた菌はサルモネラ菌と病原性大腸菌O157で、その結果、梅干しのまわりでは抗菌性があったが、全体の抗菌までには至らなかったという。

 とくに、消費者の嗜好が影響する市販の梅干しは、さらに抗菌作用が低い可能性も。

「近年は健康志向の高まりで、減塩梅干しが増えています。実際、昔は塩分が20~25%、酸が6%ぐらいだったのが、今は、塩分は5%程度、酸も2~3%です。それだけ抗菌性は弱まっていると考えられます」(内閣府食品安全委員会)

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