放送作家・鈴木おさむ氏の『週刊朝日』新連載、『1970年代生まれの団ジュニたちへ』。今回は「尿もれ」をテーマに送る。

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 あなたが今、大切だと思う臓器はなんですか?と、すごい質問から入りましたが、この質問、世代によって本当に変わると思う。

 僕が構成を担当している番組の中で健康を扱う番組もある。がんや認知症などを取り上げる回はやはり視聴率も良い。ほかにも、豚肉vs.鶏肉vs.牛肉、最強なのはどれ?とか。夏野菜で一番体にいいのはどれだ?とか。40代の自分でも興味のあるものを取り上げるようにしている。が、たまに、自分の年齢よりさらに上の人が興味を持つネタを扱うことも多々ある。そういう回は、妄想しながらの会議になったりする。

 あるとき、NHKのある番組で「尿もれ」をテーマにして1時間番組を作り高視聴率を獲得したものがあった。

 その放送後、会議で、うちの番組のプロデューサーが「うちも、うちなりに尿もれとかやってみます?」と言った。正直、NHKが尿もれで1時間番組を作ったときも衝撃だったが、それが高視聴率だったことも衝撃。そしてうちの番組Pが尿もれをテーマに提案したときもさらなる衝撃。正直、他の番組で取り上げたテーマで視聴率が良かったものを、うちの番組なりの方法で取り上げることもある。だけど、だけどだ、僕が構成をメインでやっている番組で尿もれは勘弁してほしいと思った。酔っておしっこをもらしたことはあるけど、尿もれはない。高齢になると尿もれする人は増えるのだろうし、興味がある人も多いのかもしれない。だけど、いくらなんでも自分のテリトリーを超えすぎている。そう思って、それだけは勘弁してもらった。

 僕は今、45歳になった。一昨年、育休中に、毎日料理を作り、スーパーに行き食材と向き合うことも多くなった僕は、育休明け、その番組の会議に戻ったときに、食材や料理に対するテーマへの食いつき方が変わっていた。ある意味、主婦のチャンネルもゲットしたからだ。

 
 そしてもう一つ変化がある。昨年から、酒を飲んだ翌日の抜け方が悪くなっている。これは1970年代生まれの我ら団ジュニ世代の超あるあるだろう。

 40代中盤を迎えての酒の抜けと翌日の体調。本当に悪くなっている。3杯ハイボール飲むくらいだったら余裕だったのに、体調によっては翌日抜けてなくてビックリ。

 そんなときに、その健康を扱う番組の会議で出たテーマが「肝臓」。40代、50代になっての肝臓の変化。どう肝臓が変わってくるかが資料に詳しく書いてある。前の自分だったら「ふ~~ん」くらいだが、ジャストエイジになった今、食い入るように見てしまう。そして肝臓の次に「腎臓」の資料も食い入るように見てしまう。

 30代までは、心臓、胃、肺の大事さはわかっていた。だけど、40代になると、肝臓や腎臓の大切さが本当に身に染みてくるんだなと思った。

 そんで、昨日、僕と同世代の女性が話していた。「最近、くしゃみして尿もれするようになっちゃったんだよね」

 僕が番組で「尿もれだーー!」と言う日も近いのかもしれない。

週刊朝日  2017年6月30日号

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鈴木おさむ

鈴木おさむ

鈴木おさむ(すずき・おさむ)/放送作家。1972年生まれ。19歳で放送作家デビュー。映画・ドラマの脚本、エッセイや小説の執筆、ラジオパーソナリティー、舞台の作・演出など多岐にわたり活躍。

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