「そういう場合は、慌てて手術する必要はありません。サングラスを使って眼に入る紫外線をカットする、点眼薬を使うなどして、様子を見てもよいでしょう」

 ただし点眼薬は、軽いうちなら進行を遅らせる効果は期待できるが、根本的な治療にはならない。

「40代になったら数年に一度は検診を受けて、白内障など眼の病気がないかチェックしましょう。白内障だと診断されたら半年~1年に一度は検査を受けて、進行具合を確認しておくとよいでしょう」(稲村医師)

 にごった水晶体を取り除き、水晶体の役割をする眼内レンズを入れるのが白内障の手術だ。機器などが進歩したおかげで、切開の傷は約2、3ミリとからだへの負担は軽くなり、日帰り手術で受けられる場合がほとんどだ。

「白内障に対する手術の安全性は非常に高いのですが、患者さんの年齢が上がるとリスクが高まる可能性があります」

 と稲村医師は説明する。水晶体は年齢とともに硬くなる。若いころはゼリーのように軟らかだが、年を重ねるとチーズぐらい、さらに高齢になると鰹節のように硬くなることがある。

「手術では、水晶体を超音波で崩しながら取っていくのですが、水晶体が軟らかければ比較的安全に崩して吸い取れます。しかし水晶体が硬くなればなるほど、崩しにくくなるし、時間もかかります」(同)

 硬い水晶体を崩すためには、超音波のエネルギーを強める必要がある。すると角膜の一番内側にある内皮細胞や、水晶体が入っている袋(嚢)の裏側を傷つける心配も出てくる。

「また高齢になると、水晶体を支えるチン小帯という組織も弱ってくるので、眼内レンズの移植や固定も、若い眼よりも難しくなります」(同)

 白内障になったら、すぐに手術すべきなのだろうか。 眼科医を対象におこなったアンケート調査(「白内障手術適応に関するアンケート調査」2013年 日本眼科学会)の結果では、手術を勧める際に最も重要とする項目については、“生活不自由度”という回答が一番多い。また、視力の基準は、普通運転免許の基準となる0.7未満の割合が最も高い。

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