ちなみに、割当基準日に株を買っても、その日のうちには株主になれない。権利を得るには基準日の3営業日前までに株を買う必要があるので、注意したい。

 基準日をねらって株を買い、ほどなく売却して優待だけを得ようとする投資家もいる。一方で、こうした短期取引での優待獲得を排除しようとする企業側の動きもある。

「優待対象を、1年など一定期間以上保有の株主に限定したり、長く保有するほど内容が充実したりする『長期保有優遇型』の企業が増えています。長期で保有する安定株主を増やしたいという企業のねらいがあると考えられます」(中村氏)

 長期保有優遇型の銘柄は、1年間、3年間など企業が設けた保有期間のハードルを超えれば、優待の額面が数倍になる銘柄もある。たとえば、リンクアンドモチベーションを千株保有する場合、1年以上2年未満だとクオカード1500円分だが、3年以上保有だと4500円分になる。

 さまざまなお得さを味わえる優待だが、株式投資だけにリスクもある。値下がりによる元本割れのほか、優待銘柄ならではのリスクが優待の廃止や改悪だ。

「一般的に優待は小口株主に有利で、機関投資家には不利になる。利益還元を公平にするため、配当に集中するという理由で廃止に踏み切る企業もあります。株価への影響が特に大きいのは、業績不振で優待をやめるケースです」(同)

 優待が人気の銘柄で制度が廃止されると、投資家の失望売りで株価が急落する恐れもある。特に、無配や業績低迷の銘柄は、優待目的の投資家が多い。廃止されると保有理由がなくなり、売り浴びせられる。

 こうしたリスクを減らすため、優待ねらいでも業績のチェックは欠かせない。売上高や、本業での利益を示す営業利益が減り続ける企業は、魅力的な優待内容でも投資対象から外すのが無難だ。過去数年間の業績は会社四季報やネット証券の銘柄情報で確認できる。

 うまくいけば、優待と配当、そして値上がり益の三つのお得さを味わえる。積極的に利益をねらうもよし、市場が急落する局面を待って投資するのもよいだろう。

 優待目的の投資なら、保有中は目先の株価に一喜一憂せず、長期的な視点で楽しもう。また、投資は必ず余裕資金で、自己責任であることもお忘れなく。

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