■京漬物(京都・赤尾屋)


明治時代から宮内省御用達として納めてきた赤尾屋は、元禄12(1699)年創業。名物のみやこ漬は、キュウリなどを京都大原のチリメン赤紫蘇で漬け込んだ。白醤油で漬けた小かぶら漬、京都壬生が原産の伝統野菜を用いたみぶ菜など多彩な味を楽しめる。予算に応じて好みの商品の詰め合わせが可能
京都市東山区本町7-21

■たぬき煎(東京・たぬき煎餅)
昭和7(1932)年、皇太后(大正天皇の妻・貞明皇后)がお買い上げになった。昭和10年に宮内省御用達となり、17宮家の御用を拝命。厚焼きの大狸と薄焼きの小狸はサクッと柔らかく、古狸は歯ごたえ十分で、上質の米を使っているのがよくわかる。直焼詰合18枚入り3240円ほか
港区麻布十番1-9-13

■六時屋タルト(愛媛・六時屋)
こし餡をカステラ生地でくるむ菓子は、松山藩主・松平定行が考案したというローカルスイーツ。昭和28(1953)年に国体で松山を訪れた昭和天皇ご夫妻は、六時屋のタルトを召し上がった。気に入られたようで、昭和41年に植樹祭で訪れた時にも、ご用命があったという。特大2本入り3024円ほか
松山市勝山町2-18-8

■シャトーブリヤン・ミュール(山梨・サドヤワイン)
昭和11(1936)年、フランスの苗木でブドウ栽培に成功。辛口ワインの醸造を始め、4年後に宮内省に納入を開始。納得いくワインが完成し「シャトーブリヤン」の名で販売を始めたのは昭和25年。昭和44年には皇太子(現天皇)が醸造所を訪ねた。カベルネ・ソーヴィニョンを使用している。2700円
甲府市北口3-3-24

■稲庭干饂飩(秋田・佐藤養助商店)
宗家の佐藤(稲庭)吉左ェ門が、佐竹藩主の御用製造を仰せ付けられていた歴史を持つ。明治14(1881)年、明治天皇が巡幸の際に湯沢でご覧になり、明治20年から宮内省お買い上げとなった。厳選した数種類の小麦粉をブレンドした専用粉を用い、喉越しがよい。化粧箱入り150g5本入り3240円ほか
湯沢市稲庭町字稲庭229

 小田原みのや吉兵衛の「美濃」の封を開けて驚いた。紅の蒲鉾の色が非常に薄いのだ。同じことは竹丸渋谷水産の「昆布〆たらこ」にもいえる。二つとも、優しい味わいがした。

 これは他の「御用達」にもいえる。味も香りも、強く主張することはない。口にすると、自然に穏やかな気持ちになってくる。これこそが、日本を代表する老舗の味の特徴か。

 本記事では「御用達」と呼んでいるが、実はこの言葉は現在使われてはいない。「宮内省御用達」という制度は明治24(1891)年に確立され、戦後も「宮内庁御用達」と名を変えて存続していたが、昭和29(1954)年に廃止されたのだ。民主主義の下、商業機会の均等化を目指すためである。

 制度こそなくなったが、皇室ゆかりの品を作り続けてきた各社の技が優れているのは、間違いないだろう。匠の技を用いた品々は、流行に左右されない、いつまでも愛される味の逸品ばかりといえそうだ。

週刊朝日   2016年10月28日号