「40年前の契約書を見直しもせず、言い訳にするのは本末転倒です。別荘を調査すると、古すぎて使用できる状態ではない」

 石橋前理事長の母親の問題も告発されている。母親は学園長で、中学、高校の校長なども兼務していた(現在は辞任)にもかかわらず、12年の秋から学校に来ていなかったという。

「それなのに年間約2千万円も、前理事長の母親に支払われていたんです。学園側は『母親はがんの再発の告知を受け、闘病生活を送り、在宅で仕事をしている。母親への役員報酬は退職金の分割払い』と説明しましたが、納得できません」

 こうしたことなどが学園内で問題化すると、6月には、理事長だった石橋慶晴氏は退任して理事になり、理事だった妻の石橋香苗氏が新理事長に就任した。

「結局は、夫と妻を入れ替えただけ。石橋家の独裁体制は何も変わっていません」

 7月には英国のオークション「クリスティーズ」で、学園所蔵のバッハの直筆の楽譜が売却されたことが海外でも報道された。

 告発を受けて文部科学省と東京都は学校の運営を調査。毎年3億円の補助金を出している都は、上期の支出を保留した。

 本誌が石橋前理事長を電話で直撃すると、「すいませんが、広報を通していただくようお願いします」。

 学園の広報に取材を申し込むと、弁護士事務所から次のような回答があった。

「A社に対する業務委託について、『架空請求』『水増し請求』があったとの指摘がされておりますが、そのような事実はございません。役員報酬につきましても不正な支出ではございません。業務委託や報酬の見直しに関しては、新たな経営改善計画の中で既に対応済み」

 その上で、前理事長の退任に関して触れ、

「今般、『作る会』が起こした学内騒動につきましては大変遺憾でありますが、当学園といたしましては、学生・生徒の皆様が落ち着いて勉学に打ち込める環境を確保・維持することを最優先に考え、経営改善に向けて日々邁進しております。もっとも、一時的ではあれ、学内にこのような無用な騒動を生じさせたことは事実でありますので、石橋慶晴氏が理事長職を辞することで、騒動の鎮静化を図ることといたしました」

 などと回答した。横山教授はこう訴える。

「『作る会』が騒動を起こしたわけではなく、今まで明かされることのなかった情報を公開しただけです。そして彼らに経営は任せられないとなったのです」

週刊朝日 2016年9月2日号