急速に広がりを見せる、お年玉ならぬ「お盆玉」。世間では「余計な文化を増やすなっての!!」「これ以上普及しちゃうと困る~!!」と案の定、親世代を中心に、こんな声が続々と上がっている。戦犯は誰だ。出てこい。プンプンしながら取材したら、仕掛け人はすぐに判明した。
お年玉用のぽち袋、祝儀用品などを製造・販売するマルアイ(山梨県)である。同社が「お盆玉」の命名者で、平仮名の「おぼんだま」とともに商標登録もちゃっかり済ませている。
少子化に伴い、お年玉袋や祝儀袋の需要が減る中、日本の伝統文化に根ざした新たな商品がつくれないかと考えたそうだ。同社の商品企画担当者が言う。
「孫や子が帰省した際に小遣いを渡す文化は、年始だけではありません。お盆時期の帰省は古くから一般的で、そこでおじいちゃんやおばあちゃんがお小遣いを渡す例は決して珍しくない。お盆に渡すお小遣い専用の袋があってもいいのではと考えました」
構想約1年。2010年に関連商品を発売したが、当初の売れ行きは「惨憺(さんたん)たるものだった」という。
「商品化したところ、『お盆にまでお小遣いをあげないといけないの?』という世間の拒絶反応がすごかった。小売店の売り場担当の方からも『ここまでやりますか……』とあまり好意的な反応は得られず、まったく売れませんでした。社内では、3年やってみてダメなら撤退するしかないと話していました」
転機は3年後に訪れた。郵便局に「お盆玉袋を置いていますか」というお客の問い合わせが複数入り、日本郵便がマルアイのお盆玉袋に目を付けたのだ。日本郵便は翌14年、全国2万の郵便局の店頭に商品を設置。これで一気に認知度が高まった。
「おかげさまで、今年度の売り上げは初年度の4倍に膨れました。郵便局に置いていただけるなんて願ってもなかったこと。しかもこちらから営業をかけたのではなく、向こうから『設置したい』とお声がけいただいた。正直なところ、この話がなかったら、とっくに撤退していたと思います」
この不況下に「他力本願」でビッグビジネスが転がり込んできたわけだ。うらやましい限りである。
一方の郵便局も、「夏に売れる商品ができた」と笑いが止まらない。