その後、もうろうとした状態で病院内を歩き回り、押さえようとすると暴れる行為を繰り返したため強制退院となった。田中さんは困った家族に連れられて、赤松医師の元にやってきた。

「問診のほか脳波測定などをして、高齢発症の『側頭葉てんかん』と診断しました。前の病院では詳しい診断がついていなかったため、このタイプのてんかんに合う薬が処方されていませんでした。そこでラモトリギンを飲んでもらったところ、発作はぴたっと治まりました」(同)

 田中さんは発症前の状態に戻り、認知機能の低下などもなく、元気に過ごしているという。

 高齢発症の側頭葉てんかんに効果的なほかの新薬は、レベチラセタム(2010年発売)の錠剤が知られている。これら2剤は他の薬と一緒に飲んではいけないなどの相互作用が少なく、持病のある高齢者には使いやすい。

 抗てんかん薬は、電気的興奮にかかわるさまざまな部位に作用して発作を抑える。新薬は作用する部位が既存の薬と違うことから、これまでの薬で効かなかった人にも効果が得られる可能性がある。16年5月に登場したペランパネルもその一つだ。

「臨床試験で投与した難治性部分てんかんの患者さんは、この薬を従来の薬と併用することで、連日起こっていた発作がほぼゼロになりました。さまざまな新薬の登場により、今後、薬で改善する患者さんが増えると考えています」(同)

週刊朝日  2016年7月29日号より抜粋