「こっちには来ないでください。今日はここから立ち入り禁止。山本さんはいつもズルして覗き見するから」

 あらためて、佐藤さんの説明に注目する。紙コップに入ったジュースを渡された。

「これには、何種類かの果物が入っています。何味か考えてみてください」

 ぼくは、口でジュースをころがしながら飲んだ。

「おいしい。甘い」

 すぐに飲み干すと、佐藤さんからダメ出し。

「じっくり味わって飲まないとわからないでしょ」

 もう一杯いただいて、すぐにわかった。

「リンゴとミカン」

 しかし、解答欄は三つある。答えは三つあるのですかと聞くと、「必ずしもそうではありません」とは言われたが、あと一つはピーチに決めた。

 正解はオレンジとリンゴ。ミカンとオレンジは同じではないかと思ったが、正確には違うそうだ。ミカンというと温州ミカンのことだという。およそ半数が正解だったが、ぼくは外れ。

 次はグリーンスムージー材料当て。スムージーにした5種類の野菜が何かを当てるのだ。また、紙コップに入ったドローリとしたスムージーを、飲むというか、少しずつ噛みながら飲み込む。すぐに、セロリはわかった。あとコップについたスムージーの橙色のカスを見てニンジンもわかった。

 あと三つ。ホウレン草か小松菜かどちらかは入っている。ウーン、ピーマンかな。キュウリかもしれない。キャベツのような味もした。あとは、大根、パセリ、白菜といろいろな野菜が思い浮かぶ。

 あまりおいしいものではないが、もう一杯お代わりをしてしまった。隣のMさんの解答をカンニングして覗き見すると、セロリ、ニンジン、白菜、レタス、パプリカと書いてあった。レタスか、天候の関係か最近はちょっと高いが毎日食べている。パプリカはスーパーで見たことはある。ピーマンに黄色や赤の色がついたものだが食べたことはない。

 結局、セロリとニンジンのほかは、ホウレン草とレタス、キュウリを入れた。佐藤さんが覗き込んだので、

「全問正解ですか」

 と聞くと、「三つだけ当たっています」とニンマリ。ウーンと唸って、いくつか書き直したが最後まで正解にはならなかった。正解はセロリ、ニンジン、ホウレン草、トマト、黄パプリカだった。全問正解が2人いた。負けるとくやしい。

 最後は果物スムージー材料当て。使用している果物は全部で七つ。これは難問だ。ゆっくり口に含むとツブツブがあったので、すぐにイチゴはわかった。あとつい最近に料理で使ったラ・フランスも入っていると思った。ちょっと高いかなと思ったが、これは変に自信があった。

 あと、リンゴとミカン、それにレモン。五つはわかった。あとはパイナップルとかグレープ、柿、バナナ、サクランボなどが頭に浮かんだが、ほかは思いつかない。右隣の女性の解答を覗き見するとキウイフルーツと書かれていた。これだ。カンニングは恥ずかしいと思ったが、全問正解のためにはいたしかたない。キウイフルーツと柿を書き加えた。

 ここでちょうど制限時間となった。一つずつ正解が発表されたが、柿はなかった。柿ではなく、バナナだった。まあ、7問中6問正解ならまずまずだと思ったら、後ろに座っていたYさんが全問正解だったという。最後まで全問正解は一つもなかった。

週刊朝日 2016年3月11日号より抜粋