頭にイメージング装置の装着プローブをつけると、配線が多数あって少し重い(写真:本人提供)
頭にイメージング装置の装着プローブをつけると、配線が多数あって少し重い(写真:本人提供)

 認知症早期治療実体験ルポ「ボケてたまるか!」の筆者であり、MCI(軽度認知障害)当事者・山本朋史記者が、脳の機能を可視化できるという「近赤外光脳機能イメージング装置」で自分の脳がどのように働いているのか調べる治験をしてもらった。

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 近赤外光脳機能イメージング装置は診察室の隣室の中央に置かれていた。思ったほど大きな機械ではない。S社のイメージング担当の人と検査を担当する専門家2人がテストをしながら、ぼくの脳の血流を調べるのだ。テストの時間は1時間半ほどだという。

 最初に頭に簡単装着プローブというものをつけた。1年半前に脳機能研究所でぼくの脳波を調べたときにつけたヘッドギアに似たものだった。装着プローブをつけると、オウム真理教の事件を思い出す。

 テストを実施する中田裕子さんが、

「山本さん、頭がきつくはありませんか。これから、私がいくつかの質問をしていきます。慌てなくていいですから、ゆっくり答えてください」

 最初は、これまで何回もやっているMMSEとよく似た認知機能検査だった。部屋はぼくがテストに集中できるように少し暗くしてある。次に変形した木で作られたジグソーパズルもやった。

 1問目は簡単にはめ込むことができたが、2問目からはうまくできない。七つのピースをあちこち動かすが、指示された形になってくれない。

「あーっと、これではダメだ。何でここに入らないのだろう」

 口からグチが出る。すると中田さんから、

「言葉は出さないでください。イメージング装置が脳の動きに正確に反応しなくなりますから。集中して問題を考えているときに、脳細胞がどのように働いているかを調べる機械です。答えが正解だったかどうかはあまり関係がありません。パズルにだけ集中してください」

 そうは言われたものの散々な結果だった。3問中、できたのは最初の問題だけだった。

 次は音を聞き取る聴覚テスト。高音、低音など4種類の音をまず聞く。間隔を置いて音を聞いて、最も高い音はどれだったか答えるテストだった。それまで、聴覚には自信があった。だが、60歳を過ぎてから急に耳が遠くなったような気がする。

 高音はわかるのだが低い音がなかなか聞き取れない。何種類かテストをやったが、最後のほうはほとんどヤマカン。音のテストが終わったところで、

「どれくらい合っていましたか」と聞いたら、「最初は順調でしたが、後半は少し外れていました」。

 不安は広がる。次に嗅覚のテスト。コーヒーの匂いとカレーの匂いと香水の匂いが機械的に出るものを使って調べる。

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