最初に3種類の匂いを嗅いでから、次々に出てくる匂いを当てる。嗅覚は敏感だ。しかも、コーヒーとカレーじゃ間違いようがない。これは難なくクリア。

 爪楊枝のような4種類の短い棒を見てから、次々に出てくる棒の細さを当てるもの。これは視覚のテストなのだろう。指先を使った細かいテストも。ぼくは指先が器用に動かないだけに苦手だ。

 100から7ずつ引いていく数字の問題や、背中に「ス」「マ」「ヌ」という文字を書かれて当てる問題も。これは筋トレの本山輝幸さんが以前にやったものだった。何種類ものテストを集中的にやった。何やら脳波のような波線が動いていたようにも見える。近赤外光脳機能イメージング装置にはどのような結果が出ているのか。ぼくは機械を覗き込もうとしたが、見てもまったく理解できないとわかって諦めた。

 主治医の朝田隆先生に聞くと、

「この検査は脳への刺激がどういった形で伝わっているのかを調べるものです。ただ、個人的には、本山さんがよく言う感覚神経が脳につながっているかどうかが科学的に立証できるのではないかと期待しています」

 そうであれば、ぼくが効果を信じている本山理論がこの装置で科学的にも立証されるのだから、とても楽しみである。

 まさに、ちょうど同じ時期にオリーブクリニックのデイケアでは、味覚ゲームで舌を鍛えるトレーニングもした。

 午前10時にスタッフの佐藤有香さんが、

「今日は味覚のゲームをします。これまで触覚と聴覚のゲームをやりましたが、今日は舌に集中させて何の味がするかを当ててもらいます。人数が多いので2階と3階で二つの班に分かれてやりましょう」

 3階の班になったぼくたちには、1枚ずつ紙が配られる。何か本格的なテストのようだ。裏返しにして渡された紙を開くと、「味覚当てクイズ」とタイトルが。

「舌や口から伝わる情報には甘いや苦いのほかにも質感や温度などさまざまありますので、そこに集中し意識を向けながら考えてみてください」

 佐藤さんからは、味覚が敏感になると体調の変化に気づきやすくなるとも説明された。最初のテストは「ジュースの種類当て」だった。

 部屋の奥では「ガガガー、ガガー」という音がする。それと何か甘いフルーティーな香りが。どうもスタッフの藤田道子さんが、ミキサーで果物ジュースを作っているようだ。声をかけると、厳しい顔で叱られた。

次のページ