「学科の名前が“実践”栄養学科というだけあって、働いてから使えることがたくさんありました。大学では包丁の研ぎ方から教わったので、現場でいざというときに『私、できます』と言える機会も多かった。学生時代は細かいことまで覚えるのは大変だと思っていましたが、細かいことこそが現場で生きると実感しています」

 学生の半数以上が児童学部に所属し、多くが主に保育士や幼稚園教諭を目指す聖徳大(千葉県松戸市)も、「就職したばかりでも幼稚園や保育園で実際に活用できる教育が評価されている」(総務課・南地礼智さん)といい、実践力は成果を上げている大学に共通するキーワードといえそうだ。

 手に職つける大学選び。学生が気をつけるべきポイントは何か。

 リクルート進学総研の小林浩所長は、取得できる資格は同じでも、大学ごとの個性に目を向けることをすすめる。

「たとえば同じ看護でも、大学院まであってプロフェッショナルな看護師を養成する大学、ホスピタリティーある看護師を育てる大学、外国人患者に対応できるよう英語教育に力を入れる大学と、それぞれに違いがあります。少子化が進む中、資格が取れるのは当たり前品質で、どういう人材を育成できるかが、大学にとっても生き残りのポイントになってくると思います」

 さらに注意点もある。進路を決める前の職種や資格の選択は慎重にしたい。特に専門性が高い職種では、進学後に方向性を変えようと思ってもリセットしづらい。また、働くイメージを十分に持たないと、就職した後に思わぬ問題に突き当たることがある。

「いま新人看護師の間で『リアリティーショック』という問題が起きています。実際に仕事につくと、血を見たり人の死を目の当たりにしたりして、『こんなはずじゃなかった』というギャップを感じ、途中で看護師を辞めてしまう人もいるのです」(小林所長)

 資格取得が進路で重要視される背景には、保護者の思いも強く反映されているようだ。リクルート進学総研が高校生の保護者を対象にした調査では、子どもについてほしい仕事があると考える保護者のうち「役に立つ資格を身につけてほしい」と望む人は9割以上に及ぶ。関わり方次第で、進路選択に重大な影響を与えると、保護者は肝に銘じたほうがよさそうだ。

「上から目線でアドバイスするのではなく、いろいろなデータを見ながら、親子で会話することが大事です」(同)

 資格の人気、取りやすさや就職率などに振り回されることなく、自分に合った仕事が何かをじっくり考えてから大学を選びたい。

週刊朝日 2016年3月11日号より抜粋