OECDの平均を上回り、6人に1人が“貧困”である日本。しかし、そうした現状を無視する安倍首相に作家の室井佑月は「こりゃ、ダミだ。」と呆れる。

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 NHK「クローズアップ現代」のキャスター、国谷裕子さんが、3月いっぱいで番組降板なんだとか。

 テレ朝「報道ステーション」の古舘さん、TBSの「NEWS23」の岸井さんも降板するんだっけ?

「クローズアップ現代」も「報道ステーション」も「NEWS23」も、それぞれの局の看板番組だ。実際、それなりに視聴率を取り、番組としての実績がある。

 なのに、なんで?

 そういや読売テレビ「情報ライブミヤネ屋」でコメンテーターやってた青木理さんも、番組をおろされたっていってたっけ。その前は「報道ステーション」でコメンテーターをやっていた古賀さんだ。

 このラインナップを目にすると、ちょっと考えちゃうよ。べつに意味なんてない、そういわれても。

 なので、今回は突っ込みどころ満載な国会のことじゃなく、べつのことでも書くか、と思った。

 この国の貧困率。ものすごく深刻だ。

 平成24年は相対的貧困率が16.1%だった(ちなみに、OECD平均11.3%)。子供のいる現役世代で、ひとり親家庭の貧困率は54.6%(ちなみにOECD平均は31%)。

 この国では一世帯当たりの手取り収入240万円、労働者一人当たり120万円ぐらいがボーダーラインだといわれている。

 
 メディアでは「景気は上向き」みたいなことばかりをいいつづけているけど、あたしのまわりにも貧困に苦しみだす人がちらほらと出てきていて辛い。16%といえば、6人に1人が貧困ということだもん。たまたまそういう人もいるという数字じゃない。

 6人に1人が5人に1人になり、3人に1人となる。自分はかろうじてセーフでも、自分の子がそこにはまる可能性は高い。

 去年、政府が子どもの貧困対策として「子供の未来応援基金」というのをはじめたが、もっと国としてきちんと対策を打ってくれと我々はせっついたほうがいいんじゃないか。

 そんなことを考えながら、ボケッと国会の様子をネットで見ていたら……。

 安倍首相が、野党からパートの増加や一人あたりの賃金の低下を指摘され、

「妻は働いていなかったけれども、『景気が本格的に良くなって来たからそろそろ働こうかしら』と思ったら、我が家の収入は妻が25万円で私が50万円で75万円にふえるわけでございますから。2人で働くことから2で割ると平均の収入は下がっていく」

 と返答していた。パートで25万円? 夫の月収が50万円?

 ノーッ! 厚労省が出している数字では、現金給与総額の平均は、27万4千円じゃ。パートは9万6千円。

 こりゃ、ダミだ。あの方のまわりには6人に1人の人はいないみたいだし、無視することにしたんかな。自分のお仲間に、そういう人はいないから。

 あ、やべぇ。この手の話は、しばらくやめとこうと思ったばかりだったわさ。あちゃっ。

週刊朝日 2016年1月29日号

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室井佑月

室井佑月

室井佑月(むろい・ゆづき)/作家。1970年、青森県生まれ。「小説新潮」誌の「読者による性の小説」に入選し作家デビュー。テレビ・コメンテーターとしても活躍。「しがみつく女」をまとめた「この国は、変われないの?」(新日本出版社)が発売中

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