そこで、編集部が、在宅医療をおこない厚生労働省が定める要件を満たす診療所3980件の報告書を、厚労省の下部組織で各都道府県にある厚生局に情報開示請求。今年6月刊の週刊朝日ムック「自宅で看取るいいお医者さん」に看取り実績などの公的な情報を掲載した。

 長尾医師は話す。

「これまで講演会などでよく、『どうしたら看取りの実績がわかるのか』と質問を受けましたが、一般の人に紹介できる調べ方がありませんでした。しかし、このムックが出たことで『これを参考にして選んでください』と言える資料ができました」

 在宅医療をおこなう診療所のことを在宅療養支援診療所といい、全国に1万数千件あるとされる。その中でも、厚労省が定める基準の「自宅看取りの年間件数4件以上」「緊急往診の年間件数10件以上」などを満たす機能強化型という診療所と、14年度の診療報酬改定で新設された「在宅療養実績加算」を届け出ている診療所を、ムックに掲載している。患者数や自宅看取り件数などの数字は、14年7月に提出された直近1年間の実績だ。

 では、このデータをどう読み解けばいいのか。

 長尾医師は、「数字は正直です。その診療所の在宅医療の質がおおよそ推測できます」とした上で、次のように語る。

「まず看取りの実績が重要です。しかしその件数が多ければ多いほど良いとも限らず、ランキングをつけてもあまり意味がありません。そこががんの手術数とは違うところ。手術は多いほど、技術の質が担保される傾向があります。しかし、在宅医療の場合、年間数件以上の看取りをおこなっている診療所は、それで十分立派な診療所と言えます。厚労省の基準の年間4件を満たすのに、どこも四苦八苦しているのが実情です」

週刊朝日  2015年12月4日号より抜粋