「平穏死」や「尊厳死」と呼ばれるそんな死に方を、病院ではなく自宅で迎えたいと希望する人は多い(※イメージ)
「平穏死」や「尊厳死」と呼ばれるそんな死に方を、病院ではなく自宅で迎えたいと希望する人は多い(※イメージ)

 死期が迫ったときに延命治療を断って穏やかな最期を迎える――。「平穏死」や「尊厳死」と呼ばれるそんな死に方を、病院ではなく自宅で迎えたいと希望する人は多い。

 家族は、その希望をかなえてあげたいと思うものだが、あわてて救急車を呼んでしまうと、延命治療がなされて、なかなか死ねない状態になってしまう。救急隊や搬送される病院は、延命治療をするのが仕事だからだ。

 とはいえ、自宅で放置して医師の死亡診断がなければ、不審死とみなされて警察の調べが入ることもある。

「もし自宅での看取りを希望するならば、まず、看取りのできる在宅医を見つけることが必要です」

 そう話すのは、『「平穏死」10の条件』(ブックマン社)などの著書がある長尾クリニック(尼崎市)院長で、日本尊厳死協会副理事長を務める長尾和宏医師だ。

 在宅医とは、定期的に患者の自宅を訪問して診療をおこない、本人や家族の呼び出しがあれば24時間365日いつでも駆けつけてくれる医師。それぞれ「訪問診療」と「往診」と呼ばれ、そうした医療を「在宅医療」と呼ぶ。現在では、訪問看護や訪問介護などと組み合わせて地域包括ケアの一部として考えられる場合が多い。

 長尾医師はこう説明する。

「いい在宅医を選ぶポイントは、三つあります。まず、[1]自宅から近いこと。[2]医師との相性。そして、[3]看取りの実績があることです」

 自宅から近いということは、在宅医療ではきわめて重要な条件だ。

 たとえば、がんの手術を受けるなら、遠くても手術が得意な大病院や「名医」を求める価値はあるだろう。しかし、在宅医療の場合、遠いと緊急時に医師の往診が間に合わない。医師が近くにいることが最大のメリットであり、中学校の校区を目安に探すのが理想だという。

 自宅から近いことの次に重要なのが、医師との相性。どんなにいい在宅医でも、患者や家族にとって合わないと、長くは続かない。

 3番目の看取りの実績は、これまで一般の人が情報を得る手段がなかった。

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