暑くなると気になる人も多い、汗と体臭の問題。わが国では数少ない原発性局所多汗症の専門外来で数多くの治療にあたり、腋窩多汗症(えきかたかんしょう)に対するボトックス治療の経験も豊富なのが、愛知医科大学病院皮膚科講師の大嶋雄一郎医師だ。多汗症治療の現状と治療を受ける際のアドバイスを大嶋医師に聞いた。

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 日本でわき汗に悩んでいる人は、医学的な統計論文などでは、かなりの数にのぼると考えられています。一説には約720万人ともいわれ、症状が重度の人は358万人というデータもあります。しかし、そのうち実際に病院などで治療を受けている人は、わずか5~10%程度といわれます。その理由は、本人が病気として認識していない、恥ずかしくてなかなか受診に踏み切れないなどがあると思います。

 昨今、QOLを落とす病気がさまざまな分野で注目されていますが、本人が悩んでいて日常的なストレスになっているのであれば、ぜひ医療機関を受診してください。

 腋窩多汗症の診断は日本皮膚科学会の「原発性局所多汗症診療ガイドライン」に基づいて行われます。(1)最初に症状が出たのが25歳以下である(2)両わきに同様に発汗がみられる(3)睡眠中は発汗が止まっている(4)1週間に1回以上多汗がある(5)家族歴がみられる(6)日常生活に支障を来す、のうち2項目以上を満たす場合には、発汗検査を実施し診断を確定します。

 治療はガイドラインにより、第一選択が塩化アルミニウムの塗り薬です。多くの人はこれで効果が出ます。それでも汗が止まらない人や皮膚がかぶれる人は、2012年に保険が認められた、ボトックス治療が適用されます。効果は4~9カ月で、定期的に治療する必要はありますが、重度の症状の人への有効性が認められており、ガイドラインでも、次回の改訂では治療推奨度が上がると思います。

 ボトックス治療は現在、医師であれば専門科にかかわらず、講習を受けて治療資格を得ることができます。ただ、日本皮膚科学会の診療ガイドラインをきちんと認識していて、ある程度経験のある医師のもとで治療を受けるのがいいでしょう。腋臭症(えきしゅうしょう)と腋窩多汗症は別の病気ですが、汗を抑える治療によって臭いを抑えられる場合もあります。専門に治療する医師によく相談してみてください。

週刊朝日 2014年7月4日号