消費増税を受けて値札を張り替える店員 (c)朝日新聞社 @@写禁
消費増税を受けて値札を張り替える店員 (c)朝日新聞社 @@写禁

 総務省が5月16日に発表した2013年の家計調査報告によると、2人以上の世帯が持つ貯金や株式などの平均貯蓄額は1739万円。調査を開始した02年以来では過去最高で、12年に比べて81万円増えたという。

 この結果に「うちにそんな貯蓄はないのに!」と驚いた人も多いのではないか。それもそのはず、この数字にはいろんなカラクリが隠されているのだ。みずほ証券の上野泰也チーフマーケットエコノミストは言う。

「貯蓄が増えたのは13年の株高の影響です。保有している有価証券の時価が上がったにすぎません」

 家計調査をみると、13年は株式などの有価証券は、24.4%多い240万円と大幅に増えた。これが全体の平均貯蓄額を引き上げた。

 さらに、4千万円以上の貯蓄を持っている世帯は全世帯の11.1%だが、この世帯の貯蓄額は全体の44%(3.3ポイント増)を占める。一方、貯蓄100万円未満の世帯も、全世帯の10%いる。一部の裕福な世帯が、アベノミクスの影響でさらに豊かになったというのが実態のようだ。

 第一生命経済研究所の永濱利廣エコノミストは言う。

「株式を保有している世帯は、全世帯の1割程度しかありません」

 それだけではない。調査方法にも偏りがあることが指摘されている。

「日本にいる約5千万世帯のうち、調査では約8千世帯を抽出しているだけ。しかも、家計調査に回答するには家計簿を精査するなどの手間がかかるので、専業主婦がいる公務員など、安定収入のある世帯の比率が高まる傾向があります」(永濱氏)

 前出の上野氏は「平均貯蓄だけを見てはいけない」とも話す。

「金額の低い世帯から高い世帯へと順番に並べ、ちょうど真ん中となる中央値は1023万円です。平均貯蓄額が過去最高でも、中低所得者層の実感に合ってないのはそのためです」

 公表された派手な数字に惑わされず、地道に家計を守っていくしかないようだ。

週刊朝日  2014年6月13日号より抜粋