NHK大河ドラマ「軍師官兵衛」で主役・黒田官兵衛を演じる岡田准一さん。ライバルの竹中半兵衛と官兵衛の関係を、岡田さんはこう推察する。

「黒田官兵衛が天下統一を意識したのは、羽柴秀吉と竹中半兵衛との出会いからだったと思います。半兵衛から『天下』と聞いて、織田信長だったらできると考えるようになった。官兵衛は半兵衛に最初会ったときから、静かで思慮の深い男だと思った。2歳年上ですが、半兵衛の読みにはなかなか勝てない。息子の松寿丸(のちの黒田長政)を半兵衛が守ったのも、二人の信頼が厚かったからだと思います。

 半兵衛と官兵衛はこれまでの武将と違って、軍師と言われます。今回の大河ドラマでは、ぼくは『最後まで半兵衛に勝てなかった官兵衛』を演じます。半兵衛は36歳で亡くなりますが、半兵衛が死んでいなくなってから官兵衛は軍師として急成長します。

 半兵衛とは上下関係というより、勝てなかった恩師といった感情があったと思います」

 岡田さんは大河ドラマの仲間に気を使っている。1年間の長丁場なので、共演者だけでなく裏方さんも名前で呼んで家族的な雰囲気を大切にしたいそうだ。

「宇喜多直家役の陣内孝則さんからは、ときどきメールで応援していただいています。やはり大ベテラン。『官兵衛ドノ、頼みまするゾ!』と陣内節を付けるような台詞を言う。なんかコテコテというか、貫禄があって素晴らしいですね。大河ドラマでは大先輩方と共演させていただけるので勉強になります。陣内さんからは、メールで『いいぞ。思う存分やってくれ』という感想を言っていただき、とても励みになりました。

 これからの収録になりますが、本能寺の変を知って中国から山崎に大返しするよう秀吉に進言したときには、官兵衛には、すでに後の秀吉の天下取りが見えていたと思います。秀吉が天下を取って官兵衛の器量を恐れたときには隠居します。

 秀吉は天下を取ると好き勝手やり、周りは石田三成など若手で固めた。官兵衛がうっとうしくもあったのでしょう。三成に対しては、やがて反目するときの伏線となるよう、今から若い三成に対して存在感を見せつけるように演じています」

 岡田さんはドラマが始まる前に姫路と福岡に足を運んだ。市民からは「官兵衛さん、期待しているよ」と何度も声をかけられたという。

「司馬遼太郎さんの『播磨灘物語』を読むと、官兵衛がいかに人を殺さずに戦に勝つかを考えていたかがよくわかります。本当は残虐なこともしています。しかし、そう思わせない魅力が黒田家には代々伝わっていたのです。

 関ケ原合戦のときには、中津城で持っていたカネをすべて使って九州を平定してしまいます。関ケ原が1日で終わらなかったら、どのようになっていたか興味はあります。長政が家康に褒められて右手で握手されたと聞き、『そのとき、左手は何をしていたのか』と官兵衛が長政を叱責したという有名な話がありますが、ぼくは史実ではないと思います。官兵衛は息子の長政が52万石という福岡藩を家康から与えられたことを喜んだはずです。

 官兵衛は何よりも家臣を含め黒田家を大切にした軍師ですから」

週刊朝日  2014年4月25日号