日本喜劇人協会の会長に就任し、名実共に「小松の親分」となった、コメディアンの小松政夫さん。若いころは自動車販売の営業マンで、パンツ一丁で洗車をし納車するなど独自の方法で優秀な業績をおさめていた。その後植木等さんの付き人に。当時を林真理子さんとの対談で次のように振り返る。

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林:植木等さんの付き人になったんですね。すごく可愛がってくださったんでしょう?

小松:どうしてこんなに可愛がってもらえるのかというぐらい、可愛がってもらいましたねえ。入って2カ月ぐらいだったかな、植木さんがちょっと体を悪くして入院して、退院したときに「快気祝いコンペ」みたいなゴルフコンペがあったんです。僕、お伴して運転していったんですけど、名門コースには「運転手控室」というのがあって、プレー中、そこで新聞や雑誌を読んだりしているんです。「メシ食うときはそこから注文しなさい。俺のツケにしておくから」って言われていたんですけど、よし、車を洗おうと思って、2月か3月の真冬、パンツ一丁になって車をピッカピカに洗ったんです。4時間かけて。

林:パンツ一丁になるの、お好きなんですね。(笑)

小松:そしたら植木さんが喜びましてねえ。「おっ、これは新車か!」って。「おまえ、メシ食ってないだろ。俺ンとこにツケが回ってきてないぞ。帰りに車を止められる食いもの屋があったら止めろ」って言うんです。

林:あら、やさしい。

小松:そば屋に車を止めて、「好きなものを食べろ」って言うんだけど、僕はそば屋に入ったらかけそば、中華屋に入ったらラーメンと決めているから、メニューを見るまでもなく「かけそばをお願いします」「そうか。俺は天丼とカツ丼」。えっと思ったら、天丼をちょっと食べて、「俺、さっき食ったんだ。もう食えねえ。おまえ食べろ」って。初めから計算ずくなんですよね。押しつけがましくないようにっていう。

林:いい方ですねえ。

小松:涙が出そうでした。

週刊朝日 2013年1月18日号