AIJ投資顧問による詐欺事件で、苦境が浮き彫りとなった厚生年金基金。バブル経済の崩壊以降は株や不動産といった資産がデフレに陥り、さらに2008年のリーマンショックで世界的に景気が低迷、年金資産を運用して増やすことが難しくなっている。その結果、「年金倒産」する企業も出てくると「家計の見直し相談センター」の藤川太氏は指摘する。

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 厚生労働省が全国577基金の決算をまとめたところ、純資産が最低責任準備金を下回っている基金がほぼ半数の287となりました(2011年度)。基金は、独自の「上乗せ」に加えて、厚生年金の一部の運用や給付を「代行」しています。最低責任準備金は、基金が「代行」として預かっているはずの年金を給付する原資です。これに満たないと、「上乗せ」どころか、公的制度である厚生年金の給付にも支障をきたす危険性が生じてしまいます。この状態を「代行割れ」と言います。

 財政が苦しいからと基金を解散しようとしても、「代行」の不足分は、基金に加入する企業が国に返さなければなりません。もともと国が管理すべき資産だからです。

 それが返せないから解散できず、その間に「赤字」が広がって基金が破綻……。最悪の場合は、基金に加入する企業、すなわち、あなたの勤め先が「年金倒産」する危険すら出てきます。

 これは、すでに現実のものとなっています。倒産を避けるには、やはり、掛け金を値上げするか、給付額を引き下げるしかありません。

 こうした苦境を受けて、厚労省は民主党政権時代の12年11月、「代行割れ」の基金を5年以内に解散させ、基金制度自体も10年後に廃止する試案を示しました。これが実現すれば、「上乗せ」がなくなる企業が出てくるかもしれません。

 今回の衆院選で、制度の存続を前提に見直しを考える自民党が政権に復帰しました。風向きが変わると思われます。しかし、相変わらず不安を完全に拭い去ることはできなそうです。

週刊朝日 2013年1月4・11日号