中村千晶 誰も見たことのない「生き物」を生み出す 世界的にも注目される特殊メイクアーティスト・快歩 特殊メイクアーティスト、快歩が創る作品は、カラフルでポップで、ちょっと妖しい生き物たち。その世界観が今、世界でも注目されようとしている。意に沿わない仕事はしないと決めた。けれども自分の表現のためには、手間も暇もお金も惜しまない。CGやAIが台頭してきた現在、特殊メイクは岐路に立つ。でもバーチャルには出せない世界を、快歩は見せつける。 現代の肖像 1/3
内視鏡AIでがんの見逃しをゼロに 世界の患者を救う使命感 AIメディカルサービス代表取締役CEO・多田智裕 AIメディカルサービス代表取締役CEOで医師の多田智裕は、参加した勉強会で、AIで胃がんを検出するというアイデアを思いつく。見逃しを防ぎ、早期発見の可能性を高めるのではないか。起業し、内視鏡画像診断支援AIの開発に走り出した。気の遠くなるような機械学習作業や、社員の確保、薬事承認など苦労の連続。それでも挑戦した原動力は何だったのか。 現代の肖像 12/20
ルールや社会を“ゆるめる”ことで生きやすい社会に 世界ゆるスポーツ協会代表理事・澤田智洋 世界ゆるスポーツ協会代表理事、澤田智洋。もしもハンドボールが、手にハンドソープをつけ、つるつると滑るボールを操るスポーツだったらと想像してほしい。運動の苦手な人がむしろ得意になるかもしれない。こうした「ゆるスポーツ」を作り、広めているのが澤田智洋。きっかけは息子の障害だった。社会がゆるくなれば、みんながもっと生きやすくなると、もみほぐしていく。 現代の肖像 12/13
「まじめなことを話しても引かれない場所を」 Social Book Cafe ハチドリ舎店主・安彦恵里香 「Social Book Cafe ハチドリ舎」店主、安彦恵里香。広島市の平和記念公園から徒歩3分。古い雑居ビルの2階の窓には毎夜遅くまで明かりがともる。核問題、差別と人権、ジェンダー不平等……多様な社会課題を扱うイベントを月に30本続けるソーシャルブックカフェ「ハチドリ舎」。店主の安彦恵里香はマイクを手に、いつものフレーズでイベントの始まりを告げる──。 現代の肖像 12/6
八嶋智人 いつもご機嫌で共演者とも打ち解け、携帯の連絡先は4千件 楽しむことを徹底する理由 この人が出ていたら絶対に面白いと思わせる俳優、それが八嶋智人ではないか。ドラマや映画、そして、バラエティー番組までも。どんな現場でもご機嫌で、共演者ともすぐに打ち解け仲良くなる。仲間と立ち上げた「カムカムミニキーナ」の場は、特に大事に思う。12月5日からはカムカムの新作「鶴人」が上演される。自ら裏方仕事もやりながら、いい芝居のために努力を惜しまない。 現代の肖像八嶋智人 11/29
大越裕 地方からベストセラー本を連発するライツ社 「世の中を揺り動かす本だけを作る」徹底的なこだわり 本は売れないと言われて久しい。それなのに、兵庫県明石市の出版社「ライツ社」は、ベストセラーを次々生み出す。編集長の大塚啓志郎は一冊ずつ、丁寧にこだわり抜いて作る。その本を、営業責任者の髙野翔がベストセラーにするべく営業をかける。きちんと作って売れば、出版はまだ儲かる。何よりも本を大事に思う2人が、どうやってヒットを生むのかを追った。 現代の肖像ライツ社髙野翔大塚啓志郎 11/25
「医療は総合力が重要なのです」 徳田虎雄の主治医、湘南鎌倉総合病院院長・小林修三の命の支え方 湘南鎌倉総合病院院長、小林修三。湘南鎌倉総合病院は、徳田虎雄が創設した徳洲会グループで、「24時間・年中無休の救急診療」を受け継いでいる。その院長である小林修三は、徳田の最期を主治医の一人として看取った。内科医として、日々、患者へも向き合う。救急は外科医が花形になるが、それを支える内科も麻酔科も重要。院長として総合力を高め、健康と命を支えていく。 徳田虎雄小林修三湘南鎌倉総合病院現代の肖像 11/15
中村千晶 「感情が変われば呼吸も体温も瞳孔の開きかたも変わる」 俳優・池松壮亮が目指す表現とは 2003年、子役でスクリーンデビューを果たした「ラスト サムライ」からずっと、池松壮亮は俳優として注目されてきた。どう演じるか。どう役と向き合うか。常にその問いを自身につきつけ、呼吸から体温まで操りながら演じようとする。11月8日には主演をつとめた映画「本心」が公開。26年の大河ドラマも決まった。俳優として、新たな挑戦が始まっていく。 現代の肖像池松壮亮 11/8
リト「もう謝りたくない」 弱みだった発達障害の特性を生かし、会社員から葉っぱ切り絵アーティストに 葉っぱ切り絵アーティスト、リト。リトは自分のADHDの特性を生かし、葉っぱ切り絵アーティストとして活動。会社員時代は仕事ができず、悩みに悩んだ。もう「すみません」は言いたくない。「ありがとう」と言われる仕事をしよう。試行錯誤の末、アーティストの道へ。今では福島に個人美術館ができ、海外にもファンが増えた。動物が織りなす優しい世界は、リトからのメッセージが込められる。 現代の肖像リト 11/1
あって当然の「性の健康と権利」が日本にないのはおかしいって言いたかった SRHRアクティビスト・福田和子 SRHRアクティビスト、#なんでないのプロジェクト代表・福田和子。海外で当たり前となっている、安全で安価な避妊や中絶の方法が日本にはなかった。それって、女性の権利じゃないの? 福田和子は留学先で日本と海外のジェンダー医療政策の差異を知り、帰国後に「#なんでないのプロジェクト」を立ち上げた。私の身体は私のもの。多くの選択肢から自由に選べるようになればいい。仲間と縦横に連携しながら、しなやかに活動をする。 現代の肖像福田和子 10/25
憑依や除霊 見えない世界を研究し見えてくるもの 京大大学院特定准教授 デ・アントーニ アンドレア 京都大学大学院人間・環境学研究科特定准教授、デ・アントーニ アンドレア。イタリアで日本語を学ぶうちに、仏教に興味を持ち、地獄の研究をするようになった。当時の夢はロック歌手。学者にだけはならないと思っていたのに、巡り巡って日本に来て、現在は京都で憑依や除霊を研究している。見えない世界の研究から見えてくるものがある。アンドレアの目に映る世界は、日本は、社会は、どんなものなのかを追った。 現代の肖像デ・アントーニ アンドレア 10/18
吉井妙子 すべては「母を笑顔にしたい」から始まった“東京のお笑いシーンを変えた”K-PRO代表・児島気奈 K-PRO代表、児島気奈。子どもの頃から、お茶の間でお笑いを家族で見るのが日課だった。家族が笑顔になるお笑いが大好きだった。その気持ちは大人になっても変わらず。いや、お笑いへの愛はずっと深くなった。いつしか見る人から、企画をする人へ。お笑いライブ制作会社を立ち上げ、東京のお笑いシーンを変えたとも言われる。でも、ただただお笑いが好きなだけなのだ。 現代の肖像児島気奈 10/11
観客の情が揺さぶられるようなダンサーに 英国ロイヤル・バレエ団 プリンシパル・高田茜 英国ロイヤル・バレエ団 プリンシパル、高田茜。3歳の頃、テレビCMで流れたバレエの映像に一瞬で心奪われた。バレエを学ぶため、自分の道を自分の手で切り開いてきた。2008年に憧れていた英国ロイヤル・バレエ団に入団すると、16年には最高位のプリンシパルに。高田茜のバレエ人生は、常にけがとの闘いでもある。落ち込むこともあるが、それも表現になると信じ、理想の踊りを追求する。 現代の肖像髙田茜 10/4
千葉望 “純度の高い”挑戦が新しい価値を作る 「和久傳」代表取締役社長・桑村祐子 「和久傳」代表取締役社長、桑村祐子。京都にある料亭「和久傳」。2代目の女将・桑村祐子は母の跡を継ぎ、母とはまた違う目線で和久傳を作り上げてきた。「室町和久傳」では新しく料理の名物を誕生させた。おもたせのお菓子の販路を開拓し、料理人の教育・独立制度を作った。「和久傳ノ森」も力を入れている。工房でありながら、森を作る。純度の高い気持ちで向き合うからこそ、新しい価値が生まれる。 現代の肖像桑村祐子 9/27
生徒たちに言い続ける「ぬくもりを伝える人となれ」 聖光学院中学校高等学校校長・工藤誠一 聖光学院中学校高等学校校長・工藤誠一。東大合格者数が100人となった聖光学院は今年、メディアでも注目を集めた。校長・工藤誠一の地道な改革が実を結びつつある。勉強漬けのカリキュラムではない。キャンプに宿泊旅行、文化祭など、多くの行事を用意し、工藤自らも楽しんで参加する。工藤が目指すのは、優秀で目配りができて、思いやりのある子を育てること。ぬくもりを伝えられる人になってほしいと願う。 現代の肖像工藤誠一 9/20
中村千晶 「俳優になりたい」と告げたとき、父からは一言「なめんな」 窪塚愛流が模索する自分だけの俳優像 俳優、窪塚愛流。俳優、ミュージシャン、ダンサーと、アーティスト一家に生まれた窪塚愛流は、自然と俳優になりたいと思うようになった。甘く見ていた世界ではなかったが、作品ごとに演技の壁が立ちはだかる。父が窪塚洋介というイメージも強い。だが、俳優の道は家族からもらった夢でもある。初舞台「ボクの穴、彼の穴。W」への挑戦も決めた。自分だけの俳優像を模索して進む。 現代の肖像窪塚愛流 9/13
革ジャンにサングラス 個性的な昆虫学者の“ご機嫌な生き物愛” 国立環境研究所生態リスク評価・対策研究室室長・五箇公一 国立環境研究所生態リスク評価・対策研究室室長、五箇公一。黒ずくめの服装にサングラス。最初はその姿に圧倒されるが、口を開けば人懐こさがにじみ出る。学者として環境保全を研究し、これまでにもヒアリなど有害生物の侵入を予測し、初期段階での食い止めに貢献。仕事に邁進する一方で、テレビにも出演し、その愛嬌で人気を博す。全力で楽しむことが、環境問題の啓発に一役買う。 現代の肖像五箇公一 9/6
「見間違い」が作品の着想のヒントに アーティスト・鈴木康広の気づきの力 アーティスト、鈴木康広。本来、マイナスにも捉えられる「見間違い」が作品の着想や制作のヒントだとアーティストの鈴木康広は言う。ふだんは見向きもされないもの、日常に当たり前に存在するものが、鈴木の気づきの力で「見立て」の作品として具現化される。鑑賞者は現実と仮想の境界に立ち、自分ならではの新しい気づきを「発見」することができる。 現代の肖像鈴木康広 8/30