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右の大砲、大器の片鱗、育成の星…ソフトバンクのネクストブレイク候補が主力離脱をチャンスに変える!
右の大砲、大器の片鱗、育成の星…ソフトバンクのネクストブレイク候補が主力離脱をチャンスに変える! 中軸定着を期待したい正木智也(写真提供・日刊スポーツ)  4月4日には実に12年ぶりの単独最下位となるなど苦しいスタートとなったソフトバンク。そこから5連勝で一気に借金を完済するなど地力を見せているが、不安要素は少なくない。まず痛いのが主力の故障による離脱だ。開幕前に栗原陵矢がわき腹を痛めて二軍スタートとなると、開幕3戦目には昨年MVPの活躍を見せた近藤健介が早くも椎間板ヘルニアで長期離脱。さらに柳田悠岐も12日のロッテ戦で自打球を受けた影響で登録抹消となっている。また投手陣もわき腹を痛めていたスチュワートが8日に検査とリハビリのためにアメリカに帰国となり、早期復帰は難しい状況だ。故障者以外にもオフにフリー・エージェント(FA)で甲斐拓也が巨人に移籍した穴は大きく、昨年チームトップの14勝をマークした有原航平と抑えのオスナも不安定な投球が続いている。開幕から躓いたのも当然と言えるだろう。  そうなってくると重要なのが離脱、不調の主力を補う既存戦力の底上げだ。キーマンとなる選手としてはどんな名前が挙がるのだろうか。まず野手でここまで存在感を見せているのが正木智也だ。昨年は夏場以降に外野の一角に定着してキャリアハイとなる71安打、7本塁打をマーク。今年もここまで全試合5番としてスタメンで出場して2本のホームランを放ち、チーム2位となる8打点をあげているのだ。慶応高校、慶応大学時代から長打力には定評があり、課題だった対応力も年々アップしている印象を受ける。主力不在の間にさらに成績を伸ばして一気に中軸に定着したいところだ。  正木の学生時代からの後輩である広瀬隆太も楽しみな存在だ。ルーキーイヤーの昨年は二軍でチーム2位となる打席数を経験すると、一軍でも35試合に出場して24安打、2本塁打とまずまずの成績を残した。今年は開幕二軍スタートとなったが、4月5日に一軍に昇格し、12日のロッテ戦では今季初ホームランを含む3安打の活躍を見せている。守備面はまだ課題が多いものの、正木と並ぶ貴重な右の大砲候補として期待は高い。  今年は二軍暮らしが続いているものの昨シーズン終盤に大器の片鱗を見せたのが笹川吉康だ。昨年6月に初めて一軍昇格を果たすと、セ・パ交流戦の阪神戦でプロ初本塁打を記録。その後は再び二軍でのプレーが続いたが、シーズン終了間際に再び一軍登録されると、日本シリーズでもスタメン起用されてヒットを放った。193cm、95kgという体格を生かした豪快なフルスイングは柳田を彷彿とさせ、とらえた時の打球の勢いと飛距離は圧倒的なものがある。課題の確実性を向上させて一軍定着を目指したい。  そして野手で秘密兵器となりそうなのが4年目の山本恵大だ。国士舘高校時代からその打撃には光るものがあったが、進学した明星大では首都大学野球の二部リーグに所属しており、4年時には怪我もあって育成ドラフト9位という評価でのプロ入りだった。それでもプロ入り後は三軍で力をつけると、今年は二軍で37打数18安打、打率.486という驚異的な成績を残し、4月12日に支配下昇格を果たして見せたのだ。その日のうちに一軍登録され、代走ながら試合にも出場したところにも期待の高さがうかがえる。新たな“育成の星”として今後ぜひ注目してもらいたい選手だ。  一方の投手では前田純、前田悠伍という2人の前田の名前がまず挙がる。前田純は日本文理大時代は130キロ台中盤のスピードながらボールの質の良さが評価されて2022年の育成ドラフト10位で入団。2年目の昨年は二軍で10勝をマークしてウエスタン・リーグの最多勝に輝き、7月には支配下昇格を勝ち取った。今年もここまで勝ち星こそないものの、一軍で2試合に先発登板して防御率は1点台と安定した投球を見せている。貴重な先発左腕として今後も期待だ。一方の前田悠伍は大阪桐蔭時代から注目の投手で、2023年のドラフト1位で入団。昨年は高卒ルーキーながら二軍で12試合に登板して防御率1点台と結果を残し、シーズン終盤には一軍デビューも果たしている。高卒の投手が苦戦している中で希望の星と言える存在だ。  投手でもう1人面白いのが甲斐の人的補償で巨人から加入した伊藤優輔だ。プロ入り1年目のオフにトミー・ジョン手術を受けたこともあって2年目から育成契約となったが、4年目の昨年に支配下復帰を果たすと、一軍でも8試合に登板して防御率1.04と結果を残した。今年は開幕一軍入りは逃したものの、二軍ではここまで2試合に先発して防御率1.50をマークしている。12回を投げて9四球という数字は課題が残るが、元々制球力がある投手だけに、先発ローテーションに入ってくる可能性もあるだろう。  主力が相次いで離脱しているのはチームにとってはピンチだが、これまで出番のなかった選手にとっては逆にチャンスであることは間違いない。今回名前を挙げた選手以外からも、この絶好の機会をモノにしてブレイクする選手が出てくることを期待したい。 (文・西尾典文) 西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間400試合以上を現場で取材し、執筆活動を行っている。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。
蓮舫氏に「参院選出馬」待望論? 都知事選惨敗で白ジャケットはすべて処分…それでも立憲が期待するわけ
蓮舫氏に「参院選出馬」待望論? 都知事選惨敗で白ジャケットはすべて処分…それでも立憲が期待するわけ 東京都知事選への立候補を表明し、会見する立憲民主党の蓮舫氏  昨年7月の東京都知事選に落選した後、政界から姿を消した蓮舫氏に、今夏の参院選に出馬するという噂が持ち上がっている。立憲民主党関係者は、「東京都連を中心に、蓮舫氏待望論が出ている。最も積極的なのは手塚仁雄幹事長で、蓮舫氏と高校時代からの友人だ。そもそも蓮舫氏に政界入りを勧めたのも、手塚氏だった」と話すのだが……。 *  *  *  蓮舫氏が初出馬した2004年の参院選では、東京選挙区で97万票余りを得て3位当選。民主党政権時の10年の参院選では約171万票を獲得し、トップ当選を果たした。  しかし16年の参院選ではトップこそ維持したものの、獲得票数は激減。そして22年の参院選ではさらに約67万票まで減らし、定数6の中で4位当選に甘んじた。  そんな中での24年の東京都知事選出馬は、「一か八かの賭け」だったに違いない。20年の都知事選で366万票余りを獲得した小池百合子知事には、元側近の小島敏郎氏やカイロ時代にルームメイトだった北原百代氏からの告発でカイロ大学をめぐる学歴詐称疑惑が再燃。しかも小池知事にとっては3期目。21年に1年遅れで開催された東京オリンピック・パラリンピックのようなビッグイベントもなく、目立ちたがり屋の小池知事はやる気を失っていると囁かれていた。  だが蓮舫氏の計算は大きく狂った。小池知事の得票は、300万台を切ったものの、安定の戦いを繰り広げた。立憲民主党を離党し、広く野党の支持を得ようとした蓮舫氏は計算外が相次ぐ。最大の計算外は安芸高田市長だった石丸伸二氏の出現だ。年上の議員をばっさりと切り捨てる動画で話題の主となった石丸氏は166万票近くを獲得し、128万3262票の蓮舫氏を大きく引き離した。 都知事選での落選が決まり、仲間に声を掛けられ涙ぐみながら陣営の会場を去る蓮舫氏(撮影/上田耕司) 政界から引退したように思われていたが…  惨敗した蓮舫氏は外部との連絡手段をメールのみにし、「戦闘服」だった白のジャケットも全て処分。噂されていた衆院東京26区への出馬もなく、政治から事実上引退した。そうした蓮舫氏を次期参院選に引っ張り出そうというのは、立憲民主党がその「知名度」に期待を寄せなくてはならない理由があるからだ。  24年10月の衆院選で、自民党は公示前勢力から67議席減の191議席しか獲得できず、公明党も7つの小選挙区を含む8議席減の24議席にとどまった。後に無所属で当選した三反園訓氏や広瀬健氏が自民党に入党したが、いまだ与党は半数を制していない。  一方で立憲民主党は、公示前から50議席を増やしたものの、比例区での得票は7万2000票しか増加せず、小選挙区では147万5000票を減らした。同じ民主党系の国民民主党が、小選挙区と比例区に大幅に得票を増やしたのに比べると、勢いに大きな差が見える。国民民主党は次期参院比例区で10議席の獲得を目標としている。その影響はかつて同じ政党だった立憲民主党にも及ぶはずだ。  立憲民主党は19年に参院選比例区で約792万票を得て、8議席を獲得。22年には約680万票を得て、7議席を獲得した。19年の比例区では岸真紀子氏(自治労)が約15万票でトップを占め、水岡俊一氏(日教組)、小澤雅仁氏(JP労組)、吉川沙織氏(情報労連)、森屋隆氏(私鉄総連)と、5人の労組の組織内候補が上位を占め、川田龍平氏、石川大我氏、須藤元気氏がその後に続いた。  22年の参院選比例区では、辻元清美氏が42万9000票を獲得してトップを占めた。なお辻元氏は私鉄総連の支援(19年の参院比例区での森屋氏の得票数から約10万票と推定される)を受けており、辻元氏の純粋な個人票は約30万票ほどだと思われる。  参院選比例区では、1人が当選するにはおよそ100万票が必要とされる。しかも蓮舫氏は、辻元氏ほどの個人票が見込めない。今年初め、こういう話が立憲民主党内でささやかれた――「蓮舫氏が次期参院選で比例区から出馬する場合、得票数は15万から20万だろう」。 共産党・小池晃書記局長に都知事選での健闘を称えられ、抱擁を交わす蓮舫氏(撮影/上田耕司) 蓮舫氏出馬に危機感を募らせる立憲議員  もっとも立憲民主党なら15万票から20万票の個人票があれば、比例区で議席を確保することは可能だろう。ただし蓮舫氏が出馬し、当選することで、押し出される候補が出てくることは必然だ。  立憲民主党は次期参院選比例区で、19年に議席を獲得した5つの労組の組織内候補に加え、20年に国民民主党から立憲民主党に移ったJAM・基幹労連から郡山あつし氏を擁立する。さらに「小沢枠」で森裕子氏も出馬の予定だ。「小沢枠」からは2022年に青木愛氏が6位で当選している。  これに2019年に当選した非労組系の3人を加えると10議席が必要となる。須藤氏の辞職により繰り上げ当選し、次期参院選で東京選挙区にまわる奥村政佳氏を除いても、全員が当選するには100万票以上の上積みが必要になる。これに蓮舫氏が入るとなると、党内での比例区当選をめぐっての争いはさらに激化する。「特に参院で、蓮舫氏の出馬に反対の声が大きい」(立憲民主党関係者)というが、自分たちの政治生命がかかってくるから当然だろう。  立憲民主党なら15万票から20万票の個人票があれば、当選できると前述したが、そもそも蓮舫氏が比例区で20万票を獲得できるかどうか。22年の参院選で元アイドルで自民党の今井絵理子氏が獲得したのは14万9000票で、元キャスターで日本維新の会から出た石井苗子氏は7万4000票。2012年の都知事選で史上最多の433万9000票を獲得した猪瀬直樹氏に至っては、4万4000票を得たに過ぎない。  蓮舫氏は都知事選で敗退した後もXでは発信を続け、昨年10月の衆院選の選挙番組にも出演したが、「終わった人」感は否めなかった。それでも立憲民主党は、蓮舫氏を次期参院選の起爆剤として期待しているのだろうか。 (政治ジャーナリスト・安積明子)
日本ハムとソフトバンク「差は確実に縮小」  昨季優勝争った2球団の“力関係”、今季の展望は
日本ハムとソフトバンク「差は確実に縮小」 昨季優勝争った2球団の“力関係”、今季の展望は 日本ハム・新庄剛志監督  昨年はソフトバンクが圧倒的な強さで4年ぶりの優勝を果たしたパ・リーグ。今年も優勝候補の一番手として推す声は多いが、その一方で連覇に向けて不安要素があることも事実だ。そしてそんなソフトバンクの対抗馬として真っ先に名前が挙がるのが日本ハムである。一昨年まで5年連続Bクラス、2年連続最下位と低迷していたが、昨年は一気に2位へ浮上。今年は9年ぶりとなるリーグ優勝への期待も高まっている。  果たしてこの2チームの力関係はどう変化しているのか。また優勝争いのキーマンになる選手は誰なのか。オフとキャンプの動向から探ってみたいと思う。  まず今年のソフトバンクで最大の焦点と言えるのがフリーエージェント(FA)で巨人に移籍した甲斐拓也の後釜問題だ。甲斐は昨年まで7年連続で100試合以上にスタメン出場するなど不動の正捕手としてプレーしており、その穴を埋めるのは簡単ではない。ちなみに昨年、甲斐以外にスタメンで出場した捕手は海野隆司(38試合)と谷川原健太(3試合)の2人だけである。  まだ若くて打撃にも力がある谷川原にかかる期待は大きいが、スタメンで出場した2月23日のオリックスとのオープン戦と、3月1日の西武との球春みやざきベースボールゲームズではいずれも大量失点を喫してチームも敗れている。一方の海野は3月2日のロッテ戦(球春みやざきベースボールゲームズ)で5回まで3人の投手とバッテリーを組んで無失点に抑え、打っても2打数2安打3打点の活躍を見せた。現時点では海野が一歩リードという印象を受ける。ただキャッチャーは経験がモノを言うポジションであり、シーズンの勝負所で大きな弱点となることも考えられるだろう。  ソフトバンクの野手でもう一つ気がかりなポジションが二遊間だ。ショートのレギュラーである今宮健太がキャンプ中に左足のふくらはぎを痛めて離脱。いまだに実戦復帰を果たせない状況である。セカンドは牧原大成が有力だが、実績のある三森大貴がトレードでDeNAに移籍して退団となった。センターラインをどう固定していくかにしばらく頭を悩ませる可能性も高いだろう。  そうなってくるとキーマンとなりそうなのは二遊間の新たなレギュラー候補である。長打力のある2年目の広瀬隆太、昨シーズン途中で加入したダウンズ、抜群のスピードと安定したスローイングが光るルーキーの庄子雄大などが戦力となるかで、チームの成績も大きく変わってくることになりそうだ。  一方の日本ハムはオフの補強こそFAで中日から福谷浩司を獲得したくらいで、あまり大きな動きはなかったが、上積みが期待できる選手が多いというのが大きな強みと言える。投手では新庄監督が早々に開幕投手に指名した金村尚真にかかる期待が大きい。ルーキーイヤーの2023年は故障もあってわずか4試合の登板に終わったが、昨年は7勝をマーク。防御率も2.38と1年を通じて安定した投球を見せた。  また、ともに育成出身の福島蓮と柳川大晟の2人も着実な成長を見せており、2年目の細野晴希も成長ぶりをアピールしている。既に実績のある投手が多い中で、彼らが戦力になってくれば、相当厚みのある投手陣となる可能性は高い。昨年のドラフトで将来性の高い投手の獲得に振り切ったのも、現有戦力の底上げができているという手応えがあったからと言えそうだ。  野手陣も昨年はレイエス(25本)、万波中正(18本)、清宮幸太郎(15本)、マルティネス(13本)、郡司裕也(12本)と5人が二桁本塁打をクリア。これは12球団でトップの数字である。また水谷瞬も昨年は9本塁打を放つなどブレイクしており、不振だった野村佑希も控えている。この中で外国人選手の2人を除く5人が25歳前後とまだまだここから成績を上げる可能性も高い。  二遊間はソフトバンクと同様に流動的だが、昨年水野達稀が大きく成績を伸ばしたのはプラス要因だ。ソフトバンクも近藤健介、山川穂高、栗原陵矢など中軸は強力だが、柳田悠岐が年々成績を落としていることを考えると、打線の厚みという意味では日本ハムも引けを取らないと言えるだろう。  こうして見てみると、昨シーズンと比べて両チームの差は確実に縮まっている印象を受ける。ただ、ソフトバンクに有利な材料と言えるのが経験値の高さだ。日本ハムは若い選手が多いチームだけに優勝経験のある選手が少なく、勝負どころで力を発揮できるかは未知数である。そんなチームをどうマネジメントしていくのか。新庄監督の手腕がより問われるシーズンとなりそうだ。(文・西尾典文) 西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間400試合以上を現場で取材し、執筆活動を行っている。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。
ソフトバンクが最下位、上位2チームは流石の育成力 “若手充実度”ランキング【パ・リーグ編】
ソフトバンクが最下位、上位2チームは流石の育成力 “若手充実度”ランキング【パ・リーグ編】 ソフトバンクで順調な成長を見せている前田悠伍(写真提供・福岡ソフトバンクホークス)  まもなくキャンプインするプロ野球。シーズンの行方に大きく影響を与えるのが若手選手の成長である。そんなチームの将来を担う若手選手が充実しているのはどの球団なのか。充実度をランキング形式で紹介したいと思う。若手選手の対象としては2025年の満年齢が24歳以下とし、一覧の()の選手は育成選手となっている。また、今年のルーキーについては対象として考えず、あくまで昨年の成績で評価した。今回はパ・リーグの6球団についてだ。 *  *  * ■1位:オリックス(前年2位) 一軍主力投手:宮城大弥、吉田輝星 一軍主力野手:紅林弘太郎、太田椋 一軍戦力投手:山下舜平大、斎藤響介 一軍戦力野手:来田涼斗 二軍主力投手:佐藤一磨、川瀬堅斗、(前佑囲斗) 二軍主力野手:池田陵真、横山聖哉、元謙太、堀柊那  パ・リーグ三連覇から5位に転落したが、若手選手の充実度という意味ではトップとして評価した。投手では山下が故障で停滞したものの、トレードで獲得した吉田が中継ぎとして一軍に定着。高卒2年目の斎藤も順調にステップアップしている印象を受ける。二軍でもともに育成ドラフト出身の佐藤と川瀬が楽しみな存在となっている。野手も紅林に続いて太田が主力へと成長。二軍ではともに高卒ルーキーの横山と堀が多く経験を積んだ。近年はフリーエージェント(FA)でも積極的な補強を見せているが、次世代の主力育成も進んでいるという印象だ。 ■2位:日本ハム(前年1位) 一軍主力投手:  一軍主力野手:水谷瞬 一軍戦力投手:福島蓮、柳川大晟 一軍戦力野手:細川凌平 二軍主力投手:達孝太、根本悠楓、畔柳亨丞、松浦慶斗 二軍主力野手:有薗直輝、阪口樂、宮崎一樹、進藤勇也  新庄剛志監督就任3年目に2位へと躍進した日本ハム。万波中正、金村尚真などは年齢的に対象外となったが、新たな若手の台頭もあって若手の充実度もリーグ2位と評価した。野手は現役ドラフトで加入した水谷がブレイク。細川、有薗、阪口などは少し停滞している感はあるが、ルーキーの宮崎と進藤も二軍でまずまずのスタートを切った。投手ではともに育成ドラフト出身の福島と柳川が揃って一軍の戦力へと成長。二軍の主力としてカウントした4人も全員が高卒で、ここからの成長も期待できる。昨年のドラフトではスケールの大きい投手を数多く指名しており、近い将来投手王国となることも期待できそうだ。 ■3位:楽天(前年4位) 一軍主力投手:内星龍 一軍主力野手: 一軍戦力投手:古謝樹 一軍戦力野手: 二軍主力投手:松田啄磨、(古賀康誠) 二軍主力野手:入江大樹、黒川史陽、中島大輔、武藤敦貴、吉野創士  停滞している選手も目立つが、1年目から戦力になったルーキーが多く、僅差で3位と評価した。投手では内が先発に転向して100イニングをクリア。ルーキーの古謝も5勝をあげ、松田もポテンシャルの高さを見せた。一方の野手は一軍で戦力になっている選手は見当たらず、二軍でカウントした黒川と武藤は期待されながらも伸び悩んでいる印象が強い。昨年ルーキーながら二軍の主力となった中島もチームに似たタイプの外野手が多く、入江もルーキーの宗山塁の加入で一軍昇格は簡単な状況ではない。そのようなチーム事情を考えると、3位評価でも楽観視はできないという状況といえそうだ。 ■4位:ロッテ(前年3位) 一軍主力投手:横山陸人 一軍主力野手: 一軍戦力投手:中森俊介 一軍戦力野手: 二軍主力投手:田中晴也 二軍主力野手:山本大斗、寺地隆成、上田希由翔、(松石信八)  佐々木朗希がメジャーに移籍したロッテ。新たなエース候補として楽しみな存在が今年高卒3年目の田中だ。昨年は二軍で主戦となり、一軍でも初勝利をマークしている。今年高卒2年目の木村優人、早坂響が続いてくると、一気に将来の投手陣が明るくなるだろう。野手は少し伸び悩んでいる選手が多い印象を受けるが、その中で希望の星となりそうなのが寺地だ。昨年は高卒ルーキーながらイースタン・リーグで首位打者争いを演じるなど、ミート力の高さは抜群。上田、松石も二軍で多く経験を積んだ。少し心配なのが松川虎生だ。昨年は二軍でもベンチを温めることが多かっただけに、今年は巻き返しに期待したい。 ■5位:西武(前年5位) 一軍主力投手:武内夏暉 一軍主力野手: 一軍戦力投手: 一軍戦力野手:長谷川信哉、滝沢夏央、山村崇嘉 二軍主力投手:菅井信也、羽田慎之介、豆田泰志 二軍主力野手:古市尊、(金子功児)  昨年は歴史的な低迷となった西武。特に課題となっているのが野手だ。長谷川、滝沢、山村の3人は一軍の戦力としてカウントしたが、成績的には寂しい数字に終わっており、チーム事情でやむなく起用したという印象を受ける。二軍も育成ドラフト出身の2人くらいしか目立つ選手はいなかった。ドラフト2位ルーキーの渡部聖弥がいきなり一軍の戦力となることも期待できるが、野手陣の立て直しには時間がかかる可能性は高いだろう。一方の投手は武内が1年目から先発の中心として活躍。怪我で今年は出遅れることになったが、菅井、羽田もスケールの大きい投手で将来が楽しみな存在だ。ただ高橋光成、平良海馬などメジャー志向の強い主力も多いだけに、さらなる底上げが必要だろう。 ■6位:ソフトバンク(前年6位) 一軍主力投手: 一軍主力野手: 一軍戦力投手: 一軍戦力野手: 二軍主力投手:前田悠伍、大山凌 二軍主力野手:笹川吉康、広瀬隆太、井上朋也、イヒネ・イツア  12球団で唯一一軍の戦力としてカウントできる24歳以下の選手がおらず、今年も6位評価となった。ただ二軍ではルーキーの前田、大山、広瀬が1年目から結果を残したのは大きなプラスだ。特に前田は高卒ながら早くも一軍デビューを果たしており、将来のエース候補として期待は高い。また野手では笹川がポストシーズンでもスタメン出場するなど成長を見せている。三軍、四軍で育成選手も多く抱えていることから他球団とは少し事情は異なるが、やはりある程度早くから主力になれる選手をいかに多く獲得して育てていくかが常勝軍団復活のためにも重要になりそうだ。 (文・西尾典文) 西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間400試合以上を現場で取材し、執筆活動を行っている。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。  
立憲民主党の代表選、自民党の総裁選直後で埋没? 党内から「うちは学級委員会の選挙」との揶揄も
立憲民主党の代表選、自民党の総裁選直後で埋没? 党内から「うちは学級委員会の選挙」との揶揄も 立憲民主党の泉健太代表    立憲民主党の代表選が、9月7日告示、23日投開票と決まった。どういう狙いで日程が決まったのかはわからないが、自民党総裁選が20日に実施されるため埋没する可能性もある。裏金問題で自民党が支持を失っている今こそ政権奪取に向けた千載一遇のチャンスのはずだが、党内の“実力者”たちによる支持固めが表に裏にと活発化しているのが現状だ。小沢一郎氏の動きにも注目が集まる。こうした動きについて政治ジャーナリストの安積明子氏に聞いた。  * * *  自民党総裁選と立憲民主党代表選。いずれも岸田文雄首相と泉健太代表の苦戦が予想されるが、とはいえ他に有力な候補は不在というのが両党の共通点だ。  昨年来、「政治とカネ」問題に揺れる自民党だが、東京地検特捜部は7月30日、公設秘書給与の詐欺容疑で広瀬めぐみ参院議員の事務所や自宅を家宅捜索した。広瀬氏は今年2月、週刊新潮にカナダ人のサックス演奏者との不倫を報じられた“前科”がある。自民党はすぐさま広瀬氏を離党させたが、問題はくすぶる。広瀬氏は2022年の参院選で、「小沢王国」と言われた岩手県選挙区で30年ぶりに自民党に議席をもたらしたが、それが脆くも崩れてしまったことになる。 小沢氏の目的は「泉降ろし」?  一方で、最近の小沢一郎衆院議員の動きは活発だ。目的は次期代表選で、なんとしても泉代表を降ろすこと。21年の代表選で泉代表を推して当選に導いた小沢氏だが、泉体制で希望した選対幹部のポストを得ることができなかったことがくすぶっているらしい。  22年の参院選で泉代表は「(現有の)23議席以上と比例票1300万票」を目標に掲げたが、立憲民主党は6議席減の17議席しか取れず、比例票についても677万1945票を獲得するにとどまった。この時、小沢氏の側近である森裕子氏と木戸口英司氏が、それぞれ新潟県選挙区と岩手県選挙区で落選した。木戸口氏と戦い、勝利したのが前述の広瀬氏で、自民党公認候補だった。 【あわせて読みたい】 自民、かともに民意が反映されない代表戦は変えるべき “時代を変えるリーダ”を選ぶ「4つ」の改善点 古賀茂明 https://dot.asahi.com/articles/-/230139?page=1  このとき、敗戦を受けて泉代表は、「責任は重く受け止める」としながらも辞任はしなかった。衆院選は政権をかける選挙だが、参院選はそうではないという理屈だろう。しかしそれでは民主党政権時の主要メンバーたちは収まらない。とりわけ自民党が「政治とカネ」問題で失墜している今は、政権奪取のチャンスでもある。にもかかわらず、「頼りない泉代表」に、将来の首相になるかもしれないポジションを渡すわけにはいかない――。  菅直人第2次改造内閣の官房長官で、野田佳彦内閣では経済産業相を務めた枝野幸男前代表は代表選に意欲を見せ、党内の最大グループ「サンクチュアリ」に影響力を持つ赤松広隆前衆院副議長や小沢氏らと面会し、支持を求めている。 立憲民主党の政治塾で講演する枝野幸男・前代表   「馬場さん、玉木さんとやったことがパーになる」  一方、泉代表は、連合の芳野友子会長や国民民主党の玉木雄一郎代表、そして日本維新の会の馬場伸幸代表、社民党の福島瑞穂党首らと次々に会談をこなし、国民民主党とは政策協議をすることで合意した。  ここまでは「野党共闘」の模索だといえるだろう。だが泉代表は、さらに日本共産党(以下共産党)の田村智子委員長とも会談する予定だ。これを国民民主党の榛葉賀津也幹事長に「馬場さん、玉木さんと(会談を)やったことがパーになる」と牽制されると、泉代表は「玉木さんも志位(和夫、前共産党委員長)さんとピアノを弾いていた」と反論した。  これこそ泉代表の「焦り」の象徴ではないか――。  21年の衆院選で13議席を失った責任をとって枝野前代表が辞任した後、代表選で泉代表が選任されたのは、より現実性を求めて保守層にウイングを広げることを期待されてのはずだった。立憲民主党が自民党に代わって政権を取ろうというのなら、安全保障や原発政策で理想路線を堅持する共産党と組むのは現実的とはいえない。 【こちらもおすすめ】 疑惑の斎藤元彦兵庫知事に「辞めろ!」 苦情殺到に県職員は疲労困憊、「形を変えたパワハラだ」 https://dot.asahi.com/articles/-/230190?page=1 立憲民主党の野田佳彦元首相    たしかに民主党政権を生み出した09年の衆院選では、共産党の「候補擁立の自粛」は助けになった。共産党は03年の衆院選では小選挙区と比例区を合わせ316人を、05年の衆院選でも292人を擁立した。しかし09年の衆院選では171人と大きく数を減らし、結果的に民主党の大勝を導いている。  ただ、当時の民主党は「大きなかたまり」だったが、現在の立憲民主党はそうではなく、より大きくなろうとすれば、国民民主党や日本維新の会との連携が必要になる。彼らは共産党に対して距離を置く姿勢を崩していない。泉代表がかねて共産党とパイプを作ってきたのなら別の話になるかもしれないが、そういう様子も見られない。 衆院選で引責辞任した枝野前代表が次期衆院選で党の顔に?  21年の人事の件に加え、こうした泉代表の行動も小沢氏の癇に障っているのだろう。小沢氏にとって枝野前代表は「09年の政権交代を実現させた同志」といえるが、03年に初当選し、鳩山(由紀夫)政権で内閣府大臣政務官を務めたにすぎない泉代表は「同格」ではない。また50歳になったばかりの泉代表が再選されれば、幹部の若年化が固定化されかねない。これは民主党政権で閣僚を務めた人たちにとって、あまりうれしくない話だろう。  小沢氏は野田元首相にも接近し、7月19日と31日に会談した。25日には赤松氏と面会し、30日には枝野前代表とも懇談した。あたかも「対泉包囲網」を小沢氏が作ろうとしているかのようにさえ見える。  もっとも小沢氏が枝野前代表に会ったからといって、小沢氏が枝野前代表を支持するとは限らない。小沢氏が率いる一清会からは、「21年の衆院選で引責辞任した枝野前代表が、次期衆院選で党の顔になろうとするのはいかがなものか」と批判する声も聞かれる。 立憲民主党の党内グループ「一清会」の臨時会合を終え、記者団の取材に応じる小沢一郎氏=2024年8月6日、国会 【こちらもおすすめ】 パワハラ疑惑の斎藤元彦・兵庫知事 「俺が来ているんだ。知事なんだぞ」職員が遭遇した酷い視察 https://dot.asahi.com/articles/-/225513?page=1  政権交代が実現した09年当時、民主党はパワーがあり、「鳩山・菅」という“スター”を抱えていた。枝野前代表のほか、前原誠司元民進党代表や玄葉光一郎元外相といった40代の若手政治家も綺羅星のごとく存在した。では自民党が振るわず、野党にとって政権奪取のチャンスだと言われる現在はどうか。ある立憲民主党関係者は代表選について、こう述べていた。 「自民党総裁選と比べたら、うちの代表選は学級委員会の選挙のようなもの。だから埋没しないように、なんとか工夫しなければ」  ちなみに、民主党時代の1999年9月、このときも自民党総裁選の4日後に代表選を行った。結果、代表は菅氏から鳩山氏に。そして、2000年の衆院選で32議席増やした。  今回はその前例にあやかるのか、それとも「コップの中の争い」で終わるのか。 (政治ジャーナリスト・安積明子)
エッフェル、密会、秘書給与詐取事件…広瀬めぐみ氏は自民党離党でも歳費、期末手当はそのまま
エッフェル、密会、秘書給与詐取事件…広瀬めぐみ氏は自民党離党でも歳費、期末手当はそのまま 国会に初登院したときの広瀬めぐみ氏=2022年8月3日    またもや国会議員の「政治とカネ」の問題が浮上した。自民党の広瀬めぐみ参院議員(7月30日に離党)をめぐる秘書給与詐欺事件だ。自民党女性局のパリ研修旅行でのごたごたや外国人男性との密会など、何かと世間を騒がせてきた広瀬氏だが、今回は検察が捜査に乗り出した。国会議員の政策担当秘書の経験がある政治ジャーナリストの安積明子氏はどう見たか。  * * *  東京地検特捜部は7月30日、広瀬めぐみ参院議員(岩手選挙区)の都内の自宅や事務所などを家宅捜索した。広瀬氏が参院選に初当選した5カ月後の2022年12月から03年8月まで、公設第2秘書として届け出ていた公設第1秘書の妻の給与を勤務実態がなく、だまし取った疑いだ。 広瀬氏は弁護士なのに  一報を聞いて、「いや、まさか」という気持ちと「やはり」という気持ちが交錯した。秘書給与詐取は刑法上の詐欺罪に相当する。広瀬氏は弁護士なのだから、この種の行為が違法であることを知っていたはずだ。しかも00年9月には山本譲司氏、03年7月には辻元清美氏が秘書給与詐欺事件で執行猶予つきの有罪判決。山本氏は懲役1年6カ月の実刑判決を受けたという前例がある。田中真紀子氏も02年、秘書給与流用疑惑で刑事告発された(不起訴処分)。細川護熙政権で自治大臣(当時)を務めた佐藤観樹氏も懲役1年4カ月の実刑判決を受けている。  実際には秘書給与のピンハネは、秘書による“自主的な寄付”などの形をとって行われている。多くは事務所経費の捻出なのだろうが、それだけではない。  たとえば、すでに政界から消え去った元議員の例だが、筆者の知人が政策秘書になったとき、「月額10万円の上納」を求めてきたと聞いた。その後、事務所経費の支払いに充てられていた旧文通費(現在は調査研究広報滞在費/月額100万円で非課税)の振込先を、いつの間にか議員の口座に変更していたことが発覚。知人と第1秘書が問い詰めると、「せっかく国会議員になったのだから、オレも良い生活がしたい」と弁明したらしい。 【あわせて読みたい】 「ドリル」「エッフェル」「ブライダル」… 岸田人事で話題の“三姉妹”はどうなった https://post.dot.asahi.com/articles/-/202654?page=1  では広瀬氏はどうなのか。夫妻そろって弁護士。さらに参院議員として歳費などの収入もあり、世間的には経済的な困難さはないはずだ。  にもかかわらず、妙な違和感があるのは否定できない。22年の初当選以降、ホームページなどでは国際的な問題に取り組む弁護士としてのキャリアを強調しているが、昨年7月の自民党女性局のパリ研修旅行に参加したときにはSNSにフルコースと思われる豪華ディナーの写真をあげて批判をあびた。  また昨年10月には地元紙の岩手日報から取材を受け、紙面では「スケジュールが『夜までびっしり』の日々を送る」「取材した日、昼食にありついたのは午後3時」と超多忙ぶりが強調されたが、ちょうどこの頃にカナダ人のサクソフォン演奏者と密会。翌年2月に週刊新潮に報じられている。 「参議院議員会館の喫茶店にて。岩手日報の取材でした!」(本人インスタグラムから)    自民党はそのような広瀬氏をすっかり持て余したのだろう。東京地検特捜部の家宅捜索が行われた30日夜に離党に向けた動きが報じられ、広瀬氏は離党した。  自民党の茂木敏充幹事長は広瀬氏に「説明を求める」と述べたが、自民党はいまさら離党者に対して何の強制もできないため、それは単なるポーズにすぎないのではないか。しかしそのような無責任さは、国民にとっていったいどれだけ無駄になっているのか――。  洋上風力発電事業をめぐる汚職事件で受託収賄罪で起訴された秋本真利衆院議員にしても、4800万円以上の派閥のパーティー券のキックバックを受けて政治資金規正法違反の罪で起訴された池田佳隆衆院議員にしても、自民党を離党・除名となったが議席を有したままで、裁判が確定するまでは多額の歳費や期末手当が支払われている。  そもそも彼らが国会議員になれたのは、「自民党公認」というお墨付きがあったためだが、その“製造者責任”を放棄して“野に放つ”のはいかがなものか。 【こちらもおすすめ】 松川るい氏の“エッフェル炎上” 女性局長辞任でも鎮火せず “飛び火先”も対応に苦慮 https://post.dot.asahi.com/articles/-/199872?page=1 家宅捜索を受けた翌朝、自宅を出る広瀬めぐみ参院議員=2024年7月31日午前9時16分、東京都文京区    もっとも議員の身分については憲法が強力に保障しているため、当然「本人の出処進退は自分が決める」ということになる。しかしそれは「政争に巻き込まれたまともな政治家」に当てはめるべきことで、“明らかに犯罪行為をした政治家”に適用すべきかどうか。  公設秘書の給与は国庫から支給されており、それを詐取するということは、国民の血税を詐取することに等しい。さらに今回の広瀬氏の事案に直接当てはまらないかもしれないが、秘書給与のピンハネは「秘書の生存権にかかわる問題」だ。  容疑が事実であれば、広瀬氏はすぐに議員辞職すべきだ。これ以上、国税が無駄に使われるべきではないし、憲政史上に汚点を残してほしくない。 (政治ジャーナリスト・安積明子)  
かわいすぎる48歳「内田有紀」 29年前の「とんがりビキニ」から“恐ろしいほど変わらない”魅力
かわいすぎる48歳「内田有紀」 29年前の「とんがりビキニ」から“恐ろしいほど変わらない”魅力 全盛期とビジュアルが変わらない内田有紀    5月29日、プロ野球の始球式に29年ぶりに登場し、ネット上で「笑顔がかわいすぎる!」と絶賛された俳優の内田有紀(48)。内田は明治神宮野球場で行われたヤクルト対ロッテの交流戦に、ヤクルトの水色を基調とした「2024CREWユニホーム」を着て登場。始球式では、きれいなフォームで投球したのち、満面の笑みで観客にあいさつをした。当日、内田は「年齢を重ねても始球式にお声がけいただいたので、感謝の気持ちを込めてマウンドに上がりました」と謙虚にコメントしたが、ネット上では「48歳なんてウソでしょ? かわいすぎる!」「全盛期の頃より若々しくない? 内田有紀の魅力を再認識させられたわ」といった賛辞が相次ぎ、“大バズり”状態となった。スポーツ紙記者はこう振り返る。 「美容への必死さが垣間見えるような“美魔女”的な美しさではなく、内田さんの飾りっけのないヘルシーなキュートさが人々に衝撃を与えたようです。しかも、彼女は選手や審判、球団マスコットの『つば九郎』への気配りも完璧で、関係者たちもメロメロになっていましたよ」  この始球式の様子があまりにもバズったため、29年前に登場した始球式での奇抜なコスチュームが注目されるという“珍事”も起こった。 ショートカットが似合う代表的な女優だった(1998年)   「すごい衣装着させられてるな」  1995年4月7日に行われた巨人対ヤクルト戦(東京ドーム)の始球式。当時、内田はビキニタイプのコスチュームに丈の短い透明のジャケット、ニーハイソックスという特徴的なスタイリングで登場。円すい状のビキニトップスは両胸の先端がとがっており、レディー・ガガの衣装を彷彿とさせるようなものだった。  まさに“全盛期”だからこそ突き抜けていた内田の姿を見て、SNSでは「すごい衣装着させられてるな」「内田有紀ってこういう感じで売ってたの!?」と驚きの声も上がっていた。 「1992年、17歳のときに『その時、ハートは盗まれた』で俳優デビューした内田さんは、翌年のユニチカ水着キャンペーンモデルや『フジテレビビジュアルクイーン』に選ばれ、グラビアの仕事が増加しました。さらに94年には広瀬香美さんや筒美京平さんらが手掛けた楽曲『TENCAを取ろう! ―内田の野望―』で歌手デビューを果たします。彼女が東京ドームで始球式を行った時期は、ちょうど小室哲哉さんがプロデュースした3枚目のシングル曲『Only You』発売前のプロモーション中でした」(前出の記者)  数々のCMに出演し、トップアイドルとして活躍した内田だが、2000年に「演技の勉強をやり直したい」との思いから劇作家の故つかこうへい氏主宰の劇団に入団。  しかし、02年に芸能界を一時引退し、同年にフジテレビ系ドラマ「北の国から 2002遺言」で共演した俳優の吉岡秀隆(53)と結婚。そして、05年に30歳で離婚すると、「自分の居場所を見つけたい」と芸能界に復帰した。 スタイルの良さも健在(写真:Rodrigo Reyes Marin/アフロ)   私生活では「マネジャー兼パートナー」の存在も  離婚後、プライベートでは人気俳優と交際。その後、俳優は引退して内田のマネジャーに転身したと報道された。このことは22年放送のバラエティー番組「A-Studio+」(TBS系)で名前を伏せたうえで公表され、現在も公私ともに支え合うパートナーとして関係が続いているようだ。  芸能評論家の三杉武氏は、内田についてこう話す。 「内田さんといえば、若い頃はショートヘアに整った目鼻立ち、明るく健康的なイメージでフレッシュな魅力を放ち、90年代にはアイドル的な人気を集めました。年を重ねても美貌はそのままに柔らかい雰囲気が増した印象で、昨年には『クラリーノ美脚大賞』のオーバーフォーティー部門を受賞したりとプロポーションの良さも健在です。また、演技力にも定評があり、復帰後にも数多くのドラマや映画、舞台で存在感を放っています」  内田が長年活躍を続ける理由のひとつに、三杉氏は彼女の「真面目さ」を挙げる。 「かつて『北区つかこうへい劇団』に入団したことは広く知られていますが、その後もドラマ『最後から二番目の恋』に出演した際、自らの意思で演技コーチに付いてもらい、台本の解釈の仕方や役作りの方向性などを相談しながら役に向き合ったりしたといいます。俳優として現状維持に甘んじることなく、常に進化を求め続ける姿勢、またその陰にある努力が息の長い活躍を支えているのでしょう」  放送中のNHKドラマ「燕は戻ってこない」では、代理母出産という選択肢を受け入れる妻、という難しい役を好演している内田。俳優としてはもちろん、アラフィフ女性のあこがれとしてもますます注目されそうだ。 (小林保子)
トレードそろそろ起こる? 「狙い目になり得る4選手」 阪神には起用されず”もったいない男”
トレードそろそろ起こる? 「狙い目になり得る4選手」 阪神には起用されず”もったいない男” 今季がプロ入り3年目の阪神・豊田寛(写真提供・阪神タイガース)  開幕から約2カ月が経過した今年のプロ野球。セ・パ両リーグとも徐々に上位と下位の差が開きつつあるが、残り試合を考えるとまだまだ逆転が起こる可能性はあるだろう。優勝争い、クライマックスシリーズ(CS)進出争いにおいては、シーズン中に加入した選手が重要な役割を果たすケースもある。近年は外国人選手が苦戦することが多く、そうなると有効な戦力補強の手段としてはトレードとなり、水面下では既に動き出している球団もあるはずだ。そんな今シーズン途中の補強として狙い目の選手としては誰がいるのだろうか。(文中の成績はすべて5月30日終了時点)  余剰戦力としてはやはり上位チームの方が多くなるが、パ・リーグ首位を走るソフトバンクでまず名前を挙げたいのがリチャードだ。2021年には34試合で7本塁打を放つなど大砲候補としての片鱗を見せたが、その後はなかなか打撃が安定せずに一軍定着を果たせずにいる。今年は山川穂高の加入もあって立場はさらに苦しくなり、4月30日にようやく一軍昇格を果たしたものの、ここまで目立った成績を残すことはできていない。  高校から育成ドラフトで入団したこともあって若手というイメージが強いが、今年で25歳という年齢を考えると残されたチャンスは決して多くはないはずだ。ソフトバンクとしても右の強打者タイプは貴重なだけに簡単に手放すことはなさそうだが、井上朋也、正木智也、広瀬隆太と大砲候補を続けてドラフトで指名していることから、良い条件の交換要員がいれば動く可能性もあるのではないだろうか。リチャード本人にとっても環境が変わることで、チャンスも増えて才能が開花することも期待できる。得点力不足に悩む球団にとっては、狙い目の選手であることは間違いない。  現在ソフトバンクに次ぐパ・リーグ2位と好調な日本ハムもトレードが多い球団だけに、条件次第で動く可能性も考えられる。そんな日本ハムで他球団が狙い目の選手と言えるのが左腕の上原健太だ。昨年はキャリアハイとなる101回1/3を投げて4勝7敗ながら防御率2.75と結果を残した。  しかし今年はここまで3試合に先発するも、いずれも試合を作れずに0勝2敗、防御率11.32という成績に終わっている。5月23日のオリックス戦では2回を持たずに6失点で降板し、即二軍降格となった。日本ハムとしても左の先発として貴重な存在だったが、今年はフリーエージェント(FA)で上原の明治大の先輩でもある山崎福也が加入しており、加藤貴之と2人計算できる左腕が揃っている。上原自身の今年の投球は確かに不安定だが、二軍での成績を見るとまだまだ余力は感じられるだけに、左投手が不足している球団にとっては面白い存在と言えそうだ。  セ・リーグで首位争いを演じている広島では中村奨成の名前を挙げたい。プロ入り4年目の2021年には一軍で15安打、2本塁打を放って才能開花を予感させたが、それ以降は再び低迷。昨年は故障もあって一軍でわずか3安打、打率.150という寂しい成績に終わっている。今年から外野手登録となり、背番号も22から96に変更となるなど勝負のシーズンと言えるが、ここまで一軍では3試合の出場で4打数0安打と結果を残せずに二軍暮らしが続いている。その間にチームは末包昇大が外野の一角に定着し、他にも宇草孔基、田村俊介、久保修などライバルが多いことを考えると、一軍定着は簡単ではないだろう。ただ二軍ではここまで3割を超える打率を残していることを考えると、まだまだ飛躍の可能性はあるはずだ。甲子園のスターだけに、移籍がきっかけでブレイクとなれば話題性も大きいだろう。  日本シリーズ連覇を目指す阪神でもったいない存在となっているのが3年目の豊田寛だ。日立製作所から2021年のドラフト6位で入団。大学卒の社会人選手ということで早くから一軍の戦力として期待する声も多かったが、怪我もあって過去2年間で一軍では7打数0安打に終わっている。しかし二軍では2年目から着実に成績を上げ、今年もここまで3割を超える打率をマークするなど結果を残しているのだ。  チームの外野事情を見て見ると、センターの近本光司とライトの森下翔太が固定されており、ノイジーが不安定なレフトも前川右京、井上広大、小野寺暖といった選手が控えており、なかなか豊田には声がかかりづらい状況となっている。まだ入団して3年目ではあるものの、今年で27歳ということを考えると、残されたチャンスは決して多くはない。本人のことを考えても、出場機会をより得られそうな球団へ移籍することを検討しても良さそうだ。  昨年もシーズン途中で移籍した斎藤綱記(日本ハム→中日)や郡司裕也(中日→日本ハム)がトレードをきっかけにブレイクし、オフに移籍した高橋礼、泉圭輔(ともにソフトバンク→巨人)も欠かせない戦力となっている。今後も彼らのように、トレードをプラスに変えて飛躍する選手が多く出てくることを期待したい。(文・西尾典文) 西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間400試合以上を現場で取材し、執筆活動を行っている。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。  
巨人のエース候補、中日の若手野手らが躍動 アジアWLでブレイク予感させた選手は
巨人のエース候補、中日の若手野手らが躍動 アジアWLでブレイク予感させた選手は  日本のプロ野球界は11月以降、完全なオフシーズンとなっているが、世界に目を移すと各国でウインターリーグが行われており、近年はNPB所属の選手も参加しているケースが多い。中でも最も多くの選手が派遣されているのが台湾で行われたアジア・ウインターリーグ・ベースボール(AWB)だ。12月17日に全日程が終了したが、そこで来シーズンのブレイクを予感させた選手をピックアップして紹介したいと思う。  まず投手で驚きのピッチングを見せたのがオリックスの育成ドラフト2位ルーキーの才木海翔だ。高校(北海道栄)時代から北海道では評判の右腕で、大阪経済大でも3年秋にはリーグ1位の防御率を記録している。4年時に成績を残せず育成選手でのプロ入りとなったが、その素材の良さは高く評価されていた。  二軍での成績は10試合に登板して0勝0敗、防御率6.97と苦しんだが、アジア・ウインターリーグではNPBレッドの抑えを任せられると10試合で10回を無失点、15奪三振で5セーブと圧巻の投球を見せたのだ。大学時代から躍動感のあるフォームが特長だったが、踏み出した左足の着地が安定したことで制球力も向上したように見える。  150キロを超えるストレートと鋭く落ちるフォークで三振を奪えるのも魅力だ。まずは来春のキャンプでアピールして支配下登録を勝ち取るところからのスタートとなるが、近藤大亮(金銭トレードで巨人へ移籍)、黒木優太(交換トレードで日本ハムへ移籍)、漆原大晟(現役ドラフトで阪神へ移籍)など実績のあるリリーフ投手が移籍しているだけに、一気に一軍定着するチャンスは十分にありそうだ。  先発投手で楽しみなピッチングを見せたのがともにドラフト1位でプロ入りした堀田賢慎(巨人)と小園健太(DeNA)の2人だ。堀田はプロ3年目の昨年、一軍で初勝利を含む2勝をマークしたものの、今年はわずか3試合の登板で0勝に終わり、二軍でも結果を残すことができなかった。  しかしアジア・ウインターリーグでは4試合に登板して2勝0敗、防御率1.40と結果を残した。何よりも大きいのがストレートの勢いが戻ってきた点だ。コンスタントに150キロを超え、最速は157キロをマーク。19回1/3を投げて奪った三振が11個と三振の数はそれほど多くないが、与えた四球は4個と制球力も安定していた。ポテンシャルの高さは誰もが認めるところだけに、来年はローテーション争いに加わることを期待したい。  一方の小園はプロ2年間で一軍登板はなく、今シーズンの二軍成績も2勝5敗、防御率4.21とまだまだ結果を残すことはできていない。しかしアジア・ウインターリーグでは4試合に登板して2勝0敗、防御率1.42と結果を残して見せた。高校時代から高い制球力には定評があったが、19回を投げて与四球3とこの大会でも持ち味を十分に発揮している。ストレートの勢いも出てきたように見え、試合をしっかり作れたことは大きな自信となったはずだ。今永昇太がメジャー移籍で抜け、バウアーの去就も微妙なだけに、チームにとってもキーマンの1人となるだろう。  NPB所属の野手でトップの打率をマークしたのが2年目の正木智也(ソフトバンク)だ。ルーキーイヤーの昨年は一軍で3本塁打を放ったものの、今年は15試合の出場でヒットわずか1本と悔しい成績に終わった。アジア・ウインターリーグでは17試合の出場で14安打、2本塁打で打率.351をマーク。それ以上に目立ったのが三振わずか2と、13もの四球を選んだ点で、出塁率も.465と見事な数字を残している。チームは山川穂高の加入が秒読みと言われており、レギュラー獲得は簡単な状況ではないが、大学の後輩で同じ右の強打者タイプである広瀬隆太(慶応大・ドラフト3位)も入団しただけに、先輩としての意地を見せたいところだ。  野手で正木に次ぐ成績を残したのがともにルーキーの北村恵吾(ヤクルト)と村松開人(中日)の2人だ。北村は18試合で18安打、2本塁打で打率.340、村松は18試合で22安打、長打6本、打率.338といずれも見事な成績を残した。  特に村松は今年一軍でも57安打を放っており、来季は一気にレギュラー獲得の期待も大きい。ドラフトでは上位で内野手を2人獲得しており、チーム内の競争はさらに厳しくなるが、持ち味のミート力の高さとスピードでキャンプからアピールしてもらいたい。  2016年に行われたアジア・ウインターリーグでは吉田正尚(当時オリックス)が打率.556、6本塁打と圧巻の成績を残しており、そこから一気にリーグを代表する選手へと成長している。今年参加した選手の中からも、これをきっかけに一気にスターダムへと駆け上がる選手が出てくることを期待したい。(文・西尾典文) 西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行っている。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。  
大阪桐蔭の4番など“大化け”予感させた2人の高校生打者 明治神宮大会で光ったドラフト候補たち
大阪桐蔭の4番など“大化け”予感させた2人の高校生打者 明治神宮大会で光ったドラフト候補たち 大阪桐蔭のラマル・ギービン・ラタナヤケ  高校の部は星稜、大学の部は慶応大の優勝で幕を閉じた明治神宮野球大会。10月26日に行われたドラフト会議で指名された大学4年生も多く出場したが、ドラフト戦線という意味では来年の候補となる選手の最初の大きなお披露目の場でもある。そんな中から格の違いを見せた選手はいたのだろうか。  まず高校の部では昨年大会に出場した前田悠伍(大阪桐蔭→ソフトバンク1位)のように、現時点で上位指名間違いなしという選手は不在で、どちらかと言えば大学や社会人経由でプロ入りを狙えるというタイプが多かった印象を受ける。ただ、そんな中でも将来的な大化けが期待できそうな選手としてはラマル・ギービン・ラタナヤケ(大阪桐蔭・三塁手)とモイセエフ・ニキータ(豊川・中堅手)の2人を挙げたい。  ラマルはスリランカ出身の両親を持ち、愛知港ボーイズ時代から注目を集めていた右のスラッガーだ。大阪桐蔭でも1年秋からベンチ入りし、昨年の明治神宮大会でも2試合に出場しているが、そこでは3打数ノーヒットに終わっている。この秋の新チームからは不動の4番に定着。近畿大会では4試合で打率5割とその役割を果たしている。今大会でもチームは初戦敗退(対関東一)となったものの、ラマルはホームランを含む3本の長打を放つ大活躍を見せた。  特に圧巻だったのが第4打席のホームランだ。外角高めのボール球をとらえた打球は低い軌道でライトの頭上を襲い、そのまま落ちることなく一直線でスタンドに飛び込んだのだ。打った瞬間は誰しもがスタンドを超えるとは思わなかっただろう。第1打席では緩い変化球に全くタイミングが合わずに空振り三振に倒れるなど、まだまだ対応力は課題で、サードのスローイングも不安定だが、そのパワーはやはり大きな魅力であり、ストライドの長いランニングで脚力があるのもプラス要因だ。上手く成長すれば今年ブレイクを果たした万波中正(日本ハム)のようなスラッガーになる可能性もあるだろう。  一方のモイセエフはロシア出身の両親を持つ左の強打者。旧チームから中軸を任されており、秋の東海大会でも4試合で10安打、長打3本、打率.625と圧倒的な成績を残している。今大会も厳しいマークの中で歩かされる場面も目立ったが、2試合で5打数3安打、ホームランを含む長打2本と見事な全国デビューを飾った。特に星稜戦では第1打席でライトスタンドへ高々と打ち上げるソロホームランを放つと、第2打席では“火の出るような”と形容したくなる鋭い当たりをセンター前に弾き返して観衆の度肝を抜いた。センターの守備ではエラーを記録し、まだ攻守に粗削りな感じは否めないが、フルスイングの迫力は抜群で肩の強さも備えている。チャンスに強いスター性も魅力だ。  大学の部も来年の目玉と言われている宗山塁(明治大・遊撃手)、金丸夢斗(関西大・投手)の2人が出場を逃したが、有力候補は少なくなかった。まず投手で目立ったのが徳山一翔(環太平洋大)と寺西成騎(日本体育大)の2人だ。徳山は昨年のこの大会でも国際武道大を相手に7回をノーヒット、9奪三振の快投を披露。今大会も初戦の東農大北海道オホーツク戦で7回を被安打4、1失点、11奪三振と圧巻の投球を見せた。サウスポーから繰り出すストレートはコンスタントに150キロ前後をマークし、数字以上の勢いが感じられる。変化球の精度は課題だが、これだけ力のあるボールを投げる左腕は貴重で、人気を集めることになりそうだ。  一方の寺西は神宮大会出場をかけた横浜市長杯に比べると少し調子を落としているように見え、準決勝では慶応大の広瀬隆太(ソフトバンク3位)に逆転スリーランを浴びて負け投手となったが、それでも5回までは見事な投球で試合を作った。悪い癖のないフォームで縦に腕が振れ、140キロ台後半のストレートと140キロ前後のスプリットで三振を奪う。長く怪我で苦しんだだけに少し慎重な起用法になっているが、来年はフル回転での活躍に期待だ。  大学生野手では青山学院大の西川史礁(青山学院大・左翼手)がさすがの打撃を見せた。レギュラーになったのは今年からだが、春のリーグ戦では3本塁打、10打点の活躍でMVPを受賞。日米大学野球選手権では大学日本代表の4番も務めている。秋のリーグ戦は打率2割台前半と不振だったが、今大会では日本文理大戦で打った瞬間に分かるツーランをレフトスタンド中段に叩き込み、その長打力を見せつけた。豪快なフルスイングは迫力十分。さらに粘り強い下半身で対応力も備えている。貴重な右の強打者タイプだけに、来年も高い注目を集めることになるだろう。  主要な公式戦はこれで終わり、長いオフシーズンに入るが、高校生も大学生も一冬を超えて驚きの成長を見せる選手は非常に多い。来年春、今回取り上げた選手たちがここからさらに成長した姿を見せてくれることを期待したい。(文・西尾典文) 西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行っている。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。
【2023ドラフト採点簿】パ・リーグで「最高の指名」できたのは? “悔やまれる点”があるチームも
【2023ドラフト採点簿】パ・リーグで「最高の指名」できたのは? “悔やまれる点”があるチームも 3球団競合の末に西武が交渉権を獲得した国学院大・武内夏暉  4年ぶりに有観客での開催となった2023年のドラフト会議。支配下72人、育成で50人の合計122人が指名される結果となった。チームの将来に適した指名ができた球団はどこだったのか、採点してみたいと思う。今回はパ・リーグ編だ。 *  *  * ■日本ハム:85点  1位で西舘勇陽(中央大)、前田悠伍(大阪桐蔭)と2度抽選を外したが、スケールでは彼らを上回る細野晴希(東洋大)を獲得できたことで大きなマイナスは感じない。2位では大学ナンバーワン捕手の進藤勇也(上武大)を指名。捕手は大きな補強ポイントであり、進藤は近年の大学生捕手の中でも頭一つ抜けた存在だけにこの指名も大きかった。3位の宮崎一樹(山梨学院大)も総合力の高い外野手で、万波中正より若い支配下の外野手がいないことを考えると的確な指名に見える。4位、5位の高校生外野手2人も将来性は抜群で、野手に関しては狙い通りの指名だったのではないだろうか。気になったのは支配下指名の投手が細野だけだったということ。今年は投手に好素材が多く、指名がなかった選手の中にも面白い投手は残っていただけに、もう1人くらい指名があっても良かったように感じた。 ■西武:85点  1位で3球団が競合した武内夏暉(国学院大)を引き当てたことは最大のプラスポイントだ。安定感は今年の大学生候補の中でも1、2であり、1年目からある程度の勝ち星も期待できる。また2位で指名した上田大河(大阪商業大)も大学球界を代表する実力者であり、この2人を上位で指名できた点で十分合格点をつけられるのではないだろうか。ただ少し気になったのが3位以降の指名だ。高校生と独立リーグの好素材、社会人の実戦派と投手に関しては確かに悪くない指名だが、支配下指名の野手は村田怜音(皇学館大)だけ。村田は確かにスケールの大きい打者だが、典型的な未完の大器タイプであり、野手の世代交代が必要なチーム事情を考えるともう1人くらいは野手を指名しても良かったのではないだろうか。昨年は支配下で4人野手を指名しているという影響はもちろんあると思われるが、それ以前に指名した野手の苦戦も目立つ。内野手を中心にもう少し野手の指名を検討してもらいたかったというのが正直な感想だ。 ■オリックス:85点  1位では単独で高校生ショートの横山聖哉(上田西)を指名。ショートにはまだ若い紅林弘太郎がいるが、将来的にはこの2人で三遊間を組めばしばらくは安泰と思えるだけにスケールがある。その後も4位までは高校生を揃えたが、現在の戦力が充実しており、また近年高校卒の選手がどんどん戦力となっていることを考えると理解できる。またその顔ぶれも河内康介(聖カタリナ)と東松快征(享栄)は今年の高校球界でも上位の左右の本格派、堀柊那(報徳学園)も肩の強さはプロでもトップクラスと、好素材であることも評価できるポイントだ。そして下位では比較的早く使えそうな社会人投手を3人揃え、エース・山本由伸のメジャー流出への備えもできているように感じられた。大砲候補の真鍋慧(広陵)を指名していればさらに面白いとも感じたが、順位的な制約を考えると仕方のない部分があったことは理解できる。他球団であればリスクも大きく感じるが、現在のオリックスの状況を考えると、非常に上手い指名だったと言えそうだ。 ■ソフトバンク:80点  最初の入札で武内夏暉(国学院大)を外し、再入札では3球団の競合の末に前田悠伍(大阪桐蔭)を引き当てた。今年の春以降に少しコンディションを崩して実戦から遠ざかっていたのは気になったが、U18W杯でも快投を演じ、投球の完成度は大学生と比べても引けを取らない。チーム事情を考えても左の先発候補は課題なだけに、大きなプラスとなりそうだ。2位以下でも岩井俊介(名城大)、広瀬隆太(慶応大)、村田賢一(明治大)と大学生の実力者を続けて指名。5位の沢柳亮太郎(ロキテクノ富山)と6位の大山凌(東日本国際大)もブルペン陣を底上げする存在になれる可能性があり、藤田悠太郎(福岡大大濠)も甲斐拓也とタイプの似た守備型の捕手として面白い。近年はスケールは大きいものの、完成度が低い選手を重視する傾向が強く、なかなか戦力になっていない選手が多かったが、その反省が反映された指名に見える。育成で指名した選手もある程度名前の知られた実力者も多く、トータルで見ても納得度の高い指名だった。 ■ロッテ:75点  吉井理人監督の「よく外しました」というコメントの通り、3度抽選を外した末に上田希由翔(明治大)を1位指名。完全な長距離砲というタイプではないが、打撃技術が高く、パワーも備えており、本拠地のZOZOマリンスタジアムであればある程度のホームランも期待できる。打線の格となる選手が必要なだけに、全く悪くない選択と言える。2位の大谷輝龍(日本海リーグ・富山)はリリーフの即戦力候補。変化球に課題は残るが、ストレートのスピードならNPBでもトップクラスであり、中堅、ベテランが多いブルペン陣を考えると理解できる指名だ。3位以下では高校生の投手2人と野手1人を指名。3人とも今年の候補の中では上位の実力と将来性を持った選手であり、若手の底上げという狙いも見られた。2位の大谷がもう少し下の順位で指名できた可能性はありそうだが、3度抽選を外しながらも全体的には上手くまとめたという印象だ。 ■楽天:75点  常広羽也斗(青山学院大)、前田悠伍(大阪桐蔭)を外したが、大学球界でも屈指の左腕である古謝樹(桐蔭横浜大)を指名。まだ少し調子に波があるが、好調時のボールは素晴らしいものがあり、将来性の高さも魅力だ。昨年獲得した荘司康誠とともに近い将来は左右の両輪となることを期待したい。2位の坂井陽翔(滝川二)、3位の日当直喜(東海大菅生)はともに高校球界を代表する大型右腕。スケールの大きさはもちろんだが、変化球やコントロールなども悪くなく、ある程度の完成度も備えているのは大きな魅力だ。投手陣の世代交代が課題であり、昨年獲得した投手は荘司以外はリリーフタイプが多かったことを考えると、上位でこの3人を指名できたのは非常に大きかった。少し気になったのは4位以降だ。6位の中島大輔(青山学院大)以外は完全に素材重視に振り切っているように見え、正直もっと低い順位や育成で指名できたのではないかという印象は否めない。また強打者タイプの野手を指名できなかった点も残念だった。育成ドラフトに12球団で唯一参加しておらず、そのあたりの影響もありそうだが、去年も投手中心の指名だったたけに、特に野手の指名に関しては別の選択肢もあったように感じられた。 (文・西尾典文) 西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行っている。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。  
今年のドラフト「サプライズ1位指名」はあるのか “候補”を挙げるなら高校生が中心か
今年のドラフト「サプライズ1位指名」はあるのか “候補”を挙げるなら高校生が中心か 東海大熊本星翔・百崎蒼生  10月26日に迫ったプロ野球のドラフト会議。1週間前の19日の時点で1位指名を公言したのが広島の常広羽也斗(青山学院大)だけで、各球団情報は飛び交っているものの、慎重な動きになっている印象を受ける。そんな中で意外な選手が1位指名を受けるいわゆる“サプライズ1位”はあるのだろうか。あるとすれば誰なのだろうか。ここまでの報道などから探ってみたいと思う。  現時点で1位候補として名前が報道されている選手は常広以外も大学生投手が多く、細野晴希(東洋大)、武内夏暉(国学院大)、西舘勇陽(中央大)、下村海翔(青山学院大)、草加勝(亜細亜大)、西舘昂汰(専修大)の東都大学リーグ所属の選手が中心と見られている。他のリーグではいずれも大学日本代表に選出された古謝樹(桐蔭横浜大)、上田大河(大阪商業大)、岩井俊介(名城大)も有力候補と言え、秋のシーズンでは少し調子を落としたものの滝田一希(星槎道都大)、松本凌人(名城大)も元々の評価が高い選手たちだ。大学生の野手では大学ナンバーワン捕手の呼び声高い進藤勇也(上武大)、東京六大学で現役最多安打の上田希由翔(明治大)、現役最多本塁打の広瀬隆太(慶応大)も展開次第では1位に浮上してくることはあるだろう。  高校生で最も評価が高いと思われるのは甲子園、U18W杯でも活躍を見せた前田悠伍(大阪桐蔭)で、最初の入札での指名も十分に考えられる。投手では木村優人(霞ヶ浦)、東松快征(享栄)、坂井陽翔(滝川二)、野手では横山聖哉(上田西)、明瀬諒介(鹿児島城西)、さらに二刀流の武田陸玖(山形中央)は展開次第で可能性がありそうだ。  社会人で1位指名の可能性が高いのが度会隆輝(ENEOS)で、DeNAの三浦大輔監督、中日の立浪和義監督が高く評価しているという報道も出ている。度会以外の社会人は上位指名候補が少ない印象は否めないが、投手であれば昨年秋の日本選手権で1安打完封と圧巻の投球を見せた松本健吾(トヨタ自動車)が最も評価が高いのではないだろうか。 【こちらも話題】 現役ドラフトから1年で“戦力外”が多数 本来の趣旨からズレも、“改善点”は https://dot.asahi.com/articles/-/203670  ここまで挙げた以外の選手が1位で呼ばれた場合はサプライズという印象が強いが、展開として考えられるのは、大学生投手を外して少し評価の低い同じ大学生投手にいくのではなく、思い切って高校生やポジションを重視して野手に切り替えるというケースだ。まず高校生の投手で名前を挙げたいのが日当直喜(東海大菅生)と河内康介(聖カタリナ)の2人だ。  日当は190cmの長身と堂々とした体格で、身体的なスケールがあるのがまず大きなプラス要因だ。大型の割に器用なところがあり、フォークなど変化球も上手く操ることができる。フォームなどのタイプは違うが、山下舜平大(オリックス)のような成長を期待している球団もあるはずだ。一方の河内は体格こそまだまだ高校生らしいものの、欠点らしい欠点のないフォームが大きな特長。チームの不祥事で長く公式戦から遠ざかりながら、夏は見事な成長ぶりを見せた。例えて言うなら山本由伸(オリックス)のような成長曲線を期待するタイプと言えそうだ。  野手で重視されるとすればキャッチャーとショートの可能性が高い。キャッチャーでは進藤が頭一つ抜けた存在と言えるが、阪神の岡田彰布監督からは「捕手を育てるなら高校生」という発言が出ており、高校生捕手を思い切って1位で確保するような展開がないとも限らない。そうなると浮上してくるのは堀柊那(報徳学園)と鈴木叶(常葉大菊川)の2人だ。堀はプロでもトップクラスに入る地肩の強さが最大の魅力。捕手ながら脚力も抜群で、フットワークも良い。甲斐拓也(ソフトバンク)のような捕手になれる可能性を秘めた選手である。一方の鈴木も下級生の頃から評判の大型捕手で、攻守ともに形の良さが目立つ。2021年も松川虎生(ロッテ)が1位指名を受けて、1年目から一軍で活躍しているだけに、その再来を狙う球団が出てきてもおかしくはないだろう。  ショートでは横山が最も評価が高いと思われるが、それ以外で名前が挙がるのが百崎蒼生(東海大熊本星翔)、辻本倫太郎(仙台大)、津田啓史(三菱重工East)の3人だ。  単純な選手としての評価であれば3位以降という立ち位置のように見えるが、右打ちのショートでパンチ力もあるというのは希少性が高いため、2位での指名が難しいと考えて繰り上げることを検討する球団が出てくることもありそうだ。  名前を挙げた7人の選手が1位の12人に入ってくる可能性はもちろん高くないと思われるが、サプライズ1位とはそういう選手のことであり、過去にも吉住晴斗(2017年ソフトバンク1位)など、事前には上位候補とは全く言われていなかった選手が浮上してくるケースも確かに存在している。今年も果たしてそんな展開があるのか。各球団の決断に注目したい。(文・西尾典文) 西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行っている。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。   【こちらも話題】 現役ドラフト“第2の細川&大竹”になれるのは? 「環境変われば」ブレイクできそうな4選手 https://dot.asahi.com/articles/-/203159
「ラグビー日本代表輩出数」高校別ランキング W杯2023代表の出身高校1位は桐蔭学園、歴代1位は?
「ラグビー日本代表輩出数」高校別ランキング W杯2023代表の出身高校1位は桐蔭学園、歴代1位は? 日本代表の松島幸太朗は桐蔭学園出身  ラグビーワールドカップ2023 フランス大会において、日本代表はアルゼンチン戦に勝つことができず、残念ながら決勝トーナメントに進出できなかった。私たちは日本代表の勇姿を決して忘れない。彼らの奮闘を称えたい。日本代表の多くは高校時代、花園(全国高等学校ラグビーフットボール大会)でしのぎを削ってきた。今回2023年大会の日本代表、そして、歴代のワールドカップ日本代表(1987年第1回大会~2023年第10回大会)の出身高校(日本)を調べ、ランキングを作ってみた。 ラグビーワールドカップ日本代表の出身高校ランキング(2023年)    まず2023年大会日本代表33人の出身高校を見てみよう。 ■1位 桐蔭学園(神奈川)、4人=堀越康介、齋藤直人、小倉順平、松島幸太朗  小倉、齋藤はよく似ている。2人とも主将を務め早稲田大に進んだ。小倉は桐蔭学園に花園初優勝をもたらしており、同学年チームメートに松島がいた。齋藤は準優勝だった。堀越は帝京大に進む。松島は高校卒業後、南アフリカへラグビー留学している。 ■2位 東海大学付属仰星(当時、大阪)、2人=山中亮平、長田智希 山中、長田ともに花園で優勝経験がある。山中は早稲田大時代に副将を務め日本代表にも選ばれた。しかし、2011年、薬物検査陽性反応問題で、国際ラグビー評議会から選手資格停止処分を受ける。その後。所属のトップリーグ(当時)のチームを退団したが、13年に処分期間を終えて再入団している。19年大会に続いて日本代表に選ばれた。 ■2位 東福岡(福岡)、2人=垣永真之介、福井翔大  垣永は花園に3回出場して2007年度、09年度の2回優勝を経験している。早稲田大に進み主将を務めた。福井は2年のときに優勝、3年になって主将としてベスト4に進んだ。東福岡のメンバーは卒業後、ほとんどが大学に進むなか、福井はトップリーグのチームに加入した。こう振り返っている。「大学がどうこうと言うつもりはないですし、(大学卒業してすぐに活躍する)長田智希(埼玉ワイルドナイツ/CTB)みたいな例もあるのでそれも正解だと思いますが、僕自身はこの道のりがなければここまで来られていないと思います。後悔はしていない。自分の道が間違っていないことを証明したい」(スポーツ情報サイト「web Sportiva」2023年7月10日)   花園の優勝校は2010年度以降、東福岡5回、東海大学付属大阪仰星(旧・東海大学附属仰星)4回、桐蔭学園3回、常翔学園(大阪)1回、大阪桐蔭(大阪)1回(10年度は東福岡、桐蔭学園が両校優勝) となっており、なるほど、全国制覇した高校のメンバーと日本代表は因果関係が大いにありそうだ。  以下の高校からは1人ずつ代表が生まれている。札幌山の手(北海道)、茗溪学園(茨城)、正智深谷(埼玉)、流通経済大学付属柏(千葉)、目黒学院(東京)、新潟工業(新潟)、日本航空石川(石川)、春日丘(現・中部大学春日丘)、京都成章、伏見工業(現・京都工学院。以上、京都)、大阪朝鮮中高級学校、島本(以上、大阪)、修猷館(福岡)、荒尾(岱志 熊本)、日本文理大学付属(大分)、鹿児島実業(鹿児島)。   札幌山の手はリーチ・マイケルを生んだ。11、15、19年大会に続いて4回連続出場となる。茗溪学園で福田健太は主将を務めた。   流通経済大学付属柏出身のワーナー・ディアンズは2002年生まれの21歳でチーム最年少となる。出身校がこう紹介している。「2018年に身長:200cm、体重:91kgの選手(LO・FL・NO.8)として入学・入部、流経大柏スタッフの指導のもと、2020年に新型コロナの環境下ではありましたが、身長:201cm、体重:113kgの選手(No8・LO・FL)の大型選手へ成長しました」(「流経大柏ラグビー部父母の会」ウェブサイト)   日本代表には私立のラグビー強豪校出身者が多いが、公立出身者もいる。  新潟工業は稲垣啓介、島本は堀江翔太を生んでいる。修猷館からは下川甲嗣が選ばれた。流大(ながれ・ゆたか)が卒業した荒尾は南関と統合し岱志(たいし)に、松田力也の出身、伏見工業は洛陽工業と統合して京都工学院に生まれ変わった。 ワールドカップ日本代表選手が多く輩出している高校は?  歴代のワールドカップ日本代表(1987年第1回~2023年第10回)の出身高校上位校の特徴と、おもな出身選手を見てみよう。<高校(カッコ内は現校名)日本代表延べ人数、全国高等学校ラグビーフットボール大会出場回数・優勝回数。氏名の後ろのカッコ内はワールドカップ出場年> ラグビーワールドカップ日本代表の出身高校ランキング(1987~2023年)1~10位   ■1位 大阪工業大学(常翔学園)、13人 、全国大会出場41回・優勝5回  2023年大会に出身者がいないのはさびしい。これまで多くの日本代表が輩出した。明治大には河瀬泰治(1987年)、藤田剛(87、91年)、元木由記雄(91、95、99、2003年)、赤塚隆(1995年)、松原裕司(2007年)が進んでいる。同志社大では宮本勝文(1987、91年)、弘津英司(95年)が活躍した。 ■2位 伏見工業(京都工学院)、12人、全国大会出場20回・優勝4回  1980年代、90年代は伏見工業→同志社大→神戸製鋼というラグビーのエリートコースが成立しており、平尾誠二(87、91、95年)、大八木淳史(87、91年)、細川隆弘(91年)、田中史朗(2011、15、19年)などが活躍した。テレビドラマ「スクール☆ウォーズ」のモデルとして有名だ。23年大会で松田1人は物足りない。 ■3位 東海大学付属仰星(東海大学付属大阪仰星)、11人、全国大会出場22回・優勝6回  2023年大会では山中が追加招集されたとき、母校はこう告知した。「ラグビーワールドカップ2023フランス大会の日本代表登録メンバーにつきまして、セミシ・マシレワ選手に代わり、山中亮平選手を登録することを発表いたしましたので、お知らせいたします。応援よろしくお願い致します」(同校ウェブサイト) 京都産業大に進んだ大畑大介(1999、2003年)は快足ウイングとして世界にその名をとどろかせた。 ■4位 啓光学園(常翔啓光学園)、8人、全国大会出場19回・優勝7回  花園では2001~04年度に4連覇を果たしている。卒業生は京都産業大、同志社大、法政大、早稲田大、大阪体育大などで活躍した。吉田明(1999年)、中道紀和(99年)、大西将太郎(2007年)などが日本代表に選出されている。2010年代、常翔学園グループの大阪工業大学高校と兄弟校になり、また学校の運営方針で14年にスポーツコースを廃止したことで、有望選手は他校に進み、花園は遠のいていった。部員が足りず単独でチームがつくれず、他校との合同チームで予選を経験したこともある。 ■4位 島本、8人、全国大会出場4回・優勝なし  激戦区大阪で府立高校ながら長年、強豪校として存在感を示してきた。京都産業大に進んだ広瀬佳司(1995、99、2003年)が有名だ。19年大会、日本代表メンバーが発表されたとき、当時の校長が「校長ブログ」で喜びを隠さなかった。「今年は日本大会です。もうみなさんも知っていると思いますが、その代表選手として、再び堀江翔太選手が選ばれました。これで3回目のW杯になります。本校28期生としてラグビー部をけん引してくれた選手で、高校時代から大きな目標を持ちながらラグビーを続けていました」(同校ウェブサイト 19年8月30日)  ■6位 秋田工業、7人、全国大会出場70回・優勝15回  全国大会出場・優勝の回数はいずれも最多記録だ。だが、1987年度が最後の全国制覇だった。平成時代に優勝はない。明治大に吉田義人(91、95年)、法政大には桜庭吉彦(87、95、99年)を送り込んだ。2人ともワールドカップでは先発出場が多いレギュラーだった。 ■6位 東福岡、7人、全国大会出場33回・優勝7回  花園で2001年度、02年度、06年度は準優勝、07年度に初優勝を飾ってから、09~11年度、14年度、16年度、そして直近の22年度に高校日本一となった。監督の藤田雄一郎は同校OBで1990年度に花園に出場しており、2012年度に監督に就任した。OBには、専修大で活躍した村田亙(1991、95、99年)、法政大に進んだ熊谷皇紀(2007年)がいる。藤田慶和(15年)は早稲田大在学中に日本代表に選ばれトライをあげた。 ■8位 桐蔭学園、6人、全国大会出場20回・優勝3回  2019年大会までワールドカップに送り出したのは2人。意外に少ない。花園で初めて優勝したのは10年度であり、ラグビーの古豪、伝統校と言われるにはもう少し時間がかかりそうだ。だが、10年代から早稲田大、帝京大など強豪校を経て、リーグワンでトップレベルのチームで活躍する選手が増えており、OBの活躍が期待できそうだ。桐蔭学園ラグビー部監督の藤原秀一は、かつて「見ている人が楽しい、やっていて楽しいゲームをしたい」と話していた。「ラグビーの醍醐味(だいごみ)はコンタクトのあるスポーツ。競っていた所で互いにやり合うのが魅力の1つ。そしてボールゲームの要素があり、互いにスペースをどう取り合うか。見ていて楽しいゲームを見せたい」(「日刊スポーツ」21年1月9日) ラグビーワールドカップ日本代表の出身高校ランキング(1987~2023年)16位~   ラグビーワールドカップ日本代表の出身高校ランキング(1987~2023年)53位~      公立進学校出身の日本代表もいる。  中村直人(1999年、京都府立洛北→同志社大)、広瀬俊朗(2015年、大阪府立北野→慶應義塾大)、山田章仁(15年、福岡県立小倉→慶應義塾大)、福岡堅樹(15、19年、福岡県立福岡→筑波大)、今泉清(1999年、大分県立大分舞鶴→早稲田大)。このうち、花園経験者は福岡、今泉のみ。  2023年大会では修猷館出身の下川が活躍した。  福岡はラグビーが盛んな土地柄で小中学生向けラグビースクールがいくつかある。彼らのなかで優れたラグビーセンスを持った者は地元の強豪、東福岡で活躍するが、修猷館、福岡、筑紫丘、筑紫、東筑など公立進学校に進む者も少なくない。22年度の福岡県予選決勝に筑紫、ベスト4に修猷館、ベスト8には小倉、東筑、ベスト16には筑紫丘、福岡などが進んだ。  日本代表には、高校時代、花園で華々しい活躍をした者もいれば、無名校にあって体力や基礎技術を身につけセンスを磨いた者もいる。エピソードはたくさんある。ワールドカップの一つの見方として日本代表を出身高校から見るのもおもしろい。 【出身大学編はこちら】 ラグビーW杯2023代表選手の出身大学1位は帝京大 大学別「ラグビー日本代表輩出数」ランキング https://dot.asahi.com/articles/-/203124 (文中敬称略)(教育ジャーナリスト・小林哲夫)
巨人、ヤクルト、中日がドラフトで欲しいのは? 佐々木麟太郎は指名すべきか、2位以下の戦略は
巨人、ヤクルト、中日がドラフトで欲しいのは? 佐々木麟太郎は指名すべきか、2位以下の戦略は 花巻東・佐々木麟太郎  今年のドラフト会議まであと1か月を切った。ここからスカウト会議の機会も増え、候補選手を絞り込んでいくことになるが、各球団が狙うべき選手をチーム事情などから探ってみたいと思う。今回はセ・リーグBクラスの3球団だ(9月28日終了時点)。 *  *  * 【巨人】  2年連続のBクラスが濃厚となっている巨人。原辰徳監督の契約が来シーズンまでで、3年連続Bクラスは許されないということを考えると比較的早くから戦力になりそうな投手中心になりそうだが、根本的にチームを変えるということであれば、スケールの大きい野手を狙う方が得策ではないだろうか。昨年も浅野翔吾、萩尾匡也の2人を上位で指名しているものの、完全なスラッガータイプではないだけに、佐々木麟太郎(花巻東)を指名するくらいの思い切りを見せてもらいたい。  ただ佐々木は進学の可能性もあり、プロ志望でも抽選で外すことももちろん考えられる。そうなった時には無理に野手にこだわるのではなく、残った投手で最も力のある選手を狙うというのが現実的な戦略となりそうだ。そこで候補となりそうなのが下村海翔(青山学院大)、西舘昂汰(専修大)の2人だ。下村は上背こそないものの、制球力と変化球は今年の候補の中でも指折りで、スピードも好調時は150キロを超える。  一方の西舘は少しアバウトなところはあるものの、スケールの大きさは抜群で、スタミナも申し分ない。ともに最終学年で評価を上げてきたというのもプラス材料だ。佐々木を1位で指名できた場合の2位でもこの2人が残っていればもちろん候補だが、既に指名されていた場合は上田大河(大阪商業大)、草加勝(亜細亜大)、古謝樹(桐蔭横浜大)などが狙い目だ。  1位が投手となった場合は2位で野手を狙いたい。昨年は上位で外野手を指名しており、岡本和真が数年後にメジャー移籍の可能性も出てきたことを考えるとやはり強打の内野手が必要となる。残っていれば明瀬諒介(鹿児島城西)、広瀬隆太(慶応大)が筆頭候補。ともに貴重な右のスラッガータイプで、東京ドームならホームラン量産も期待できるだろう。もしこの2人が残っていなければ2位も投手を重ね、3位以降で森田大翔(履正社)などを狙うのも面白いだろう。 【こちらも話題】 オリックス、ソフトバンク、楽天がドラフトで欲しいのは? 山本由伸、今宮健太の“後釜”は必須か https://dot.asahi.com/articles/-/202615 【ヤクルト】  セ・リーグ連覇から一転してBクラスに沈んだヤクルト。連覇中から先発投手陣は苦しい状況が続いており、フル回転してきたリリーフ陣も成績を落としている投手が目立つ。昨年も1位で吉村貢司郎を指名しているが、2位以降は野手が中心で、支配下で獲得した3人の野手が比較的順調な1年目のスタートを切ったことを考えても、今年は投手に振り切った指名を敢行しても良いのではないだろうか。  まずは実力者の多い大学生から選ぶことになりそうだが、常広羽也斗(青山学院大)、細野晴希(東洋大)、武内夏暉(国学院大)の3人がやはり筆頭候補となるだろう。3人とも東都大学野球で本拠地の神宮球場にも慣れ親しんでいるのもプラス要因だ。チーム事情を考えると左の先発が手薄だけに細野と武内の方が若干優先度が高いと言えそうだ。3人とも競合の可能性もあるため次候補も当然必要になる。ここは左右にこだわらず、力のある投手を狙いたいが、故障者が多いチーム事情を考えるとタフな投手を狙いたい。そういう意味では西舘勇陽(中央大)、西舘昂汰(専修大)はぴったりと言えるだろう。 大阪商業大・上田大河(写真提供・プロアマ野球研究所 PABB)  2位以下で狙える投手では草加勝(亜細亜大)、上田大河、高太一(ともに大阪商業大)、などが候補となる。また高校生では東松快征(享栄)も体作りが進んでおり、若手のサウスポーが少ないだけに2位で残っていればぜひ検討したい投手だ。リリーフも手当てが必要だが、下位で狙えて比較的早く戦力になりそうな選手としては中崎響介(明治安田生命)が面白い。常時150キロ前後のスピードに加えてコントロールも安定しており、中継ぎであれば上手くはまる可能性も高そうだ。  野手では若手の右打者で強打者タイプが少ないだけに1人は獲得しておきたい。内野手なら森田大翔(履正社)、外野手では星野ひので(前橋工)の2人は飛ばす力は申し分ないだけに、下位で残っていれば獲得を検討したい選手である。 【中日】  立浪和義監督就任2年目の今シーズンも苦しい戦いが続いた中日。近年の課題である長打力不足に関しては現役ドラフトで加入した細川成也がブレイクし、期待の若手である石川昂弥も二桁ホームランを放つなど希望は見えてきた印象だ。一方で投手は今年だけの成績を見れば悪くないが、先発もリリーフもベテランと外国人選手への依存度が高く、二軍で成績を残している投手も少ない。過去2年も野手の指名が多かっただけに、チーム事情を考えるとまずは投手というのが既定路線だろう。  ただ低迷するチームを変えるためにはスターが必要というのもまた事実だ。そう考えるとポジションを度外視して佐々木麟太郎(花巻東)を思い切って1位で指名し、チームの停滞ムードを吹き飛ばすというのも面白いだろう。巨人と同様に佐々木を外した場合は野手にこだわらず、投手に切り替えるというのが得策のように見える。  大野雄大がベテランとなり、小笠原慎之介もメジャー希望を表明していることから、狙い目はサウスポーとなるが、最初の入札から投手にいくなら細野晴希(東洋大)、武内夏暉(東洋大)が筆頭候補。佐々木や彼ら2人を外した場合は古謝樹(桐蔭横浜大)、高太一(大阪商業大)などが狙い目となる。左にこだわらないというのであれば、地元で評価を上げている岩井俊介(名城大)も面白い。まだ良い時と悪い時の差はあるが、ボールの力は大学球界でもトップクラスで、リリーフなら早くから戦力となる可能性も高いだろう。  高校卒の投手も高橋宏斗以外は未知数だけに、最低でも1人は指名しておきたい。3位以降でおすすめなのが河内康介(聖カタリナ)と東恩納蒼(沖縄尚学)の2人だ。ともに体は大きくないがフォームの安定感があり、将来性は高い。しっかり鍛えれば先発候補になれる投手だろう。 (文・西尾典文) 西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行っている。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。 【こちらも話題】 ロッテ、西武、日本ハムがドラフトで欲しいのは? “投手豊作”の中で野手の指名も重要に https://dot.asahi.com/articles/-/202600
オリックス、ソフトバンク、楽天がドラフトで欲しいのは? 山本由伸、今宮健太の“後釜”は必須か
オリックス、ソフトバンク、楽天がドラフトで欲しいのは? 山本由伸、今宮健太の“後釜”は必須か 鹿児島城西・明瀬諒介(写真提供・プロアマ野球研究所 PABB)  今年のドラフト会議まであと1か月を切った。ここからスカウト会議の機会も増え、候補選手を絞り込んでいくことになるが、各球団が狙うべき選手をチーム事情などから探ってみたいと思う。今回はパ・リーグAクラスの3球団だ(9月28日終了時点)。 *  *  * 【オリックス】  圧倒的な強さでパ・リーグ三連覇を達成したオリックス。レギュラーの野手でベテランと言えるのは杉本裕太郎だけで、今後が楽しみな若手も多い。一方の投手も強力だが、絶対的エースの山本由伸がオフにメジャー移籍の可能性が高いと言われており、10勝をマークした山崎福也もフリーエージェント(FA)で流出の可能性がある。山下舜平大や東晃平など新戦力も出てきているが、今年の候補の顔ぶれを考えてもまずは投手を狙うのが良さそうだ。特に左投手は支配下の選手が5人しかいないだけに1人は狙いたい。  高校生なら前田悠伍(大阪桐蔭)、大学生なら細野晴希(東洋大)、武内夏暉(国学院大)など目玉にまず入札し、抽選で外した場合も東松快征(享栄)、古謝樹(桐蔭横浜大)、高太一(大阪商業大)などを次候補で狙うというのが良いのではないだろうか。下位でも狙えそうな左腕としておすすめしたいのが平元銀次郎(日本通運)だ。法政大では故障もあって4年間でリーグ戦わずか4試合に登板にとどまったが、社会人で大きく成長。今年の都市対抗では2試合にリリーフしていずれも好投を見せた。腕が遅れて出てくるフォームで、スピードもコンスタントに140キロ台後半をマーク。リリーフであれば早くから戦力となりそうだ。  野手は若手の捕手と大砲候補が補強ポイント。捕手は年齢構成を考えても高校生が狙い目で、堀柊那(報徳学園)、鈴木叶(常葉大菊川)が候補となる。ともにポテンシャルの高さは十分で、鍛えがいのあるタイプだ。下位で狙えそうな強打者タイプとしては仲田侑仁(沖縄尚学)、佐倉侠史朗(九州国際大付)、村田怜音(皇学館大)などが候補となる。昨年右の内藤鵬を指名しているだけに、バランスを考えると左打者の佐倉はチーム事情にマッチした選手と言えるだろう。 【こちらも話題】 ロッテ、西武、日本ハムがドラフトで欲しいのは? “投手豊作”の中で野手の指名も重要に https://dot.asahi.com/articles/-/202600 【ソフトバンク】  オフに大型補強を敢行しながら、オリックスに大差をつけられて3年連続でリーグ優勝を逃したソフトバンク。中軸の柳田悠岐、近藤健介、中村晃は揃って30歳を超え、24歳以下の若手で実績を残しているのは三森大貴しかいない。投手陣も先発はベテラン揃いで、一軍戦力で若手と言えるのはスチュワート・ジュニアと大津亮介だけ。3年前まではチームが黄金期を迎えていたこともあって上位でも素材重視の指名を徹底してきたが、若手がなかなか主力に定着できない現状を考えると、まずは完成度の高い選手を狙いたい。 国学院大・武内夏暉(写真提供・プロアマ野球研究所 PABB)  特に左の先発が不足しているだけに、筆頭候補として推したいのが武内夏暉(国学院大)だ。同じ東都大学の左腕である細野晴希(東洋大)と比べると凄みではやや劣るものの、コントロールは明らかに上で、手元で鋭く落ちるツーシームも必殺のボールである。また年々ストレートも強さを増しており、将来性の高さも感じられる。地元福岡出身というのも追い風になりそうだ。武内が抽選となって外した場合は、左投手を優先するなら古謝樹(桐蔭横浜大)、左右にかかわらずに狙うなら上田大河(大阪商業大)といった試合を作ることができる投手を狙いたい。  野手の補強ポイントとしては今宮健太の後釜であるショートと、右の強打者タイプになる。昨年もイヒネ・イツアを1位で獲得しているが、ショートとして育つかは未知数であり、右打者はリチャード、増田珠、野村大樹などがなかなか一軍に定着できないだけに、さらなる補強が必要だろう。ショートで狙いたいのが辻本倫太郎(仙台大)だ。小柄だが動きの良さは抜群で、スタンドに運ぶパンチ力も備えている。次代のチームリーダー候補としても期待できるだろう。右の強打者タイプでは2位で残っていれば明瀬諒介(鹿児島城西)、下位で狙うなら仲田侑仁(沖縄尚学)が候補。ともに飛ばす力は申し分なく、将来の中軸候補としてぜひ狙いたい。 【楽天】  シーズン終盤に追い上げてAクラス争いに加わった楽天。ただ投手も野手も主力の高齢化は明らかで、世代交代は大きな課題となっている。投手では荘司康誠、早川隆久に次ぐ先発候補。さらには抑えの松井裕樹が今年で契約が切れるだけに、取得済みのFAでの移籍となればリリーフの手当ても必要になる。野手では主砲の浅村栄斗の後継者候補となる素材を獲得したい。  地元東北の大物という意味では佐々木麟太郎(花巻東)が候補となるが、進路が不透明なため他の候補も検討の必要がある。特に右の大砲が欲しいとなると浮上してくるのが明瀬諒介(鹿児島城西)と広瀬隆太(慶応大)の2人だ。一昨年のドラフトでは吉野創士、前田銀次と2人の高校生の右打者を獲得しているが、二軍でもまだまだ苦しんでいるだけに、彼らのうち1人はぜひとも狙いたいところである。  昨年は徹底的に投手を指名したが、先発タイプは荘司だけで、今年は候補も多いため2位では先発候補の投手を狙いたい。ウェーバー順などを考えて狙えそうな投手では草加勝(亜細亜大)が面白い。大学生にしてはまだ細身だがこの春は9試合に先発して7完投(1試合は8回完投負け投手)、4完封と圧倒的な成績を残した。走者がいなくても時折クイックで投げるなど、フォームやテンポを変えることができ、制球力も高い。荘司に次ぐ右の先発候補として狙いたい投手だ。  野手では今シーズン村林一輝がレギュラーにおさまったが、若手のショートが入江大樹しかいないだけに、高校生ショートを狙いたい。スケールの大きさでは横山聖哉(上田西)がナンバーワンで、球界を代表するショートになれる可能性もあると言われているだけに、もし3位で残っていればぜひ指名したい選手だ。(文・西尾典文) 西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行っている。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。   【こちらも話題】 ロッテ、西武、日本ハムがドラフトで欲しいのは? “投手豊作”の中で野手の指名も重要に https://dot.asahi.com/articles/-/202600
ロッテ、西武、日本ハムがドラフトで欲しいのは? “投手豊作”の中で野手の指名も重要に
ロッテ、西武、日本ハムがドラフトで欲しいのは? “投手豊作”の中で野手の指名も重要に 東洋大・細野晴希(写真提供・プロアマ野球研究所 PABB)  今年のドラフト会議まであと1か月を切った。ここからスカウト会議の機会も増え、候補選手を絞り込んでいくことになるが、各球団が狙うべき選手をチーム事情などから探ってみたいと思う。今回はパ・リーグBクラスの3球団だ(9月28日終了時点)。 *  *  * 【ロッテ】  シーズン終盤に失速してAクラス入りが微妙な状況のロッテ。大きな課題となっているのはやはり長打力不足だ。将来の中軸候補として期待された安田尚憲、藤原恭大がなかなか思うような成績を残せず、昨年ブレイクした山口航輝もさらなるステップアップは果たせていない。これは今に始まったことではなく、日本人選手で30本塁打以上を放ったのは1986年の落合博満(50本)が最後である。安田、山口に危機感を与える意味でも大砲候補をまず狙いたい。最有力候補はもちろん佐々木麟太郎(花巻東)だ。  ただ佐々木が進学を希望する可能性もあり、また抽選で外すことを考えると次の候補も考えておきたい。佐々木と同じ高校生なら真鍋慧(広陵)、明瀬諒介(鹿児島城西)の2人が候補になる。ともに身体的なスケールも飛ばす力も高校生では佐々木に次ぐ存在だ。また大学生なら東京六大学で通算19本塁打を誇る広瀬隆太(慶応大)を狙うという選択肢もあるだろう。 慶応大・広瀬隆太(写真提供・プロアマ野球研究所 PABB)    スラッガータイプの選手以外では左の本格派、リリーフ投手、中村奨吾の後継者となるセカンド候補などが補強ポイントとなる。どこを優先するかは難しいところだが、今年は投手が豊作なため、積極的に狙うべき存在は多い。左の本格派で2位以降で狙えそうな選手としては東松快征(享栄)、古謝樹(桐蔭横浜大)、高太一(大阪商業大)などが候補となる。24歳以下の支配下左腕が秋山正雲しかいないことを考えると高校生の東松が残っていればぜひ狙いたい。リリーフタイプでは木村仁(九州共立大)が面白い。チームでは先発だが、立ち上がりからエンジン全開で投げられ、短いイニングなら球威で圧倒できるだろう。  また完全なスラッガータイプではないが、度会隆輝(ENEOS)を真っ先に獲得してセカンドとして育てるというのも選択肢の一つとして面白そうだ。 【こちらも話題】 苦しむ甲子園V投手も 大学・社会人に進んだ「高校生ドラフト候補」順調に成長しているのは https://dot.asahi.com/articles/-/202027 【西武】  昨年の3位からBクラスに転落した西武。近年は上位で積極的に投手を獲得してきたこともあって先発はある程度コマが揃ってきたが、野手は主力の高齢化が進み、森友哉の移籍、山川穂高の不祥事による離脱もあって立て直しが急務という状況だ。昨年も蛭間拓哉、古川雄大と上位で2人の野手を獲得しているが、今年もまずは中軸を担える野手を狙いたい。筆頭候補はロッテと同じく佐々木麟太郎(花巻東)だが、次候補としては広瀬隆太(慶応大)と度会隆輝(ENEOS)を挙げたい。  昨年上位で指名した野手はともに外野手であることを考えるとやはり内野の選手が望ましく、広瀬はサードかファースト、度会はセカンドとして考えると補強ポイントと合致している。広瀬は三振は多いものの、豪快に振り切って飛ばすスタイルは西武にもマッチしているように見え、また度会の明るいキャラクターはチームの雰囲気を変える意味でもプラスになりそうだ。  投手陣も今季の成績は良いが、高橋光成がメジャー移籍を希望しており、抑えの増田達至も成績を落としており、決して万全ではないだけに2位以降で有力な選手を獲得しておきたい。高校卒の若手は二軍で楽しみな選手が多いため、狙い目は大学生、社会人となる。そこで挙げたいのが滝田一希(星槎道都大)と冨士隼斗(平成国際大)の2人だ。  左投手は隅田知一郎と佐藤隼輔が成長したものの、絶対数が少なく、佐々木健も怪我で長期離脱となっている。滝田はまだ完成度は低いものの、良い時のボールの質は今年の左投手の中でもトップクラスで、チェンジアップという必殺の武器があるのも魅力だ。一方の冨士はリリーフ候補。短いイニングであれば常時150キロ以上をマークし、空振りを奪える勢いがある。これまでも地方大学から多くの選手を獲得して主力にしているだけに、そういう点からも西武向きの選手と言えるだろう。 【日本ハム】  新庄剛志監督2年目のシーズンも最下位に沈んでいる日本ハム。これまでも高校生の超大物選手がいる時は迷わずに指名しており、U18W杯を5人体制で視察したのも佐々木麟太郎(花巻東)の出場を見込んでという話もあるため佐々木がプロ志望なら指名の可能性も高そうだが、チーム事情だけを考えると苦しいのは投手の方ではないだろうか。  上沢直之がメジャー移籍を希望しており、加藤貴之も国内フリーエージェント(FA)権を取得。もしこの2人が退団となれば、実績のある先発投手は伊藤大海だけとなる。それを考えるとまず先発の柱になれる投手を狙いたい。特に左投手は若手の先発候補が根本悠楓くらいしかいないため、最低でも1人は確保したいが、筆頭候補は細野晴希(東洋大)と武内夏暉(国学院大)の2人だ。ボールの強さや将来性なら細野、安定感を求めるなら武内となる。この秋は武内の評価も上がっているだけに単独指名は難しそうだが、外した場合は思い切って高校生の東松快征(享栄)を狙うのも面白いだろう。  野手は万波中正などの成長で明るい材料も少なくないが、気になるのが捕手だ。今年は伏見寅威、マルティネス、清水優心、古川裕大らがマスクをかぶったが、なかなか固定できず、若手の絶対数も少ない。2位で大学ナンバーワン捕手の進藤勇也(上武大)を狙うというのも面白いが、上位では投手を確保したいというのと、チームには上武大出身の捕手である古川がいることを考えると3位以下で他の選手を狙うのが妥当だろう。高校生なら圧倒的な肩の強さが魅力の堀柊那(報徳学園)、大学生なら打力もある萩原義輝(流通経済大)などを狙いたいところだ。(文・西尾典文) 西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行っている。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。 【こちらも話題】 欲しいのは投手か野手か パ・リーグ6球団「ドラフト1位で狙うべき選手」は https://dot.asahi.com/articles/-/201233
欲しいのは投手か野手か パ・リーグ6球団「ドラフト1位で狙うべき選手」は
欲しいのは投手か野手か パ・リーグ6球団「ドラフト1位で狙うべき選手」は U-18のW杯でも活躍した大阪桐蔭・前田悠伍  10月26日に行われる2023年のプロ野球ドラフト会議。候補となる選手を絞り込む時期となっているが、やはり気になるのはドラフト1位で誰を狙うかという点だ。各球団の現状、補強ポイントなどから、どの選手を指名すべきか、おすすめ選手を探ってみたいと思う。今回はパ・リーグの6球団についてだ。 *  *  * 【オリックス】  パ・リーグ3連覇が目前のオリックス。強力な投手陣が大きな強みとなっているが、エースの山本由伸がこのオフにもメジャー移籍の可能性があり、流出への備えは必要だろう。また昨年も1位で曽谷龍平を獲得しているが、左投手は絶対数が少なく、山崎福也も国内フリーエージェント(FA)権を取得しているだけに、積極的にサウスポーを狙いたい。  今年は候補が少なくないが、その中で筆頭候補に挙げたいのが前田悠伍(大阪桐蔭)だ。投球術は高校生離れしたものがあり、大舞台での強さも大きな魅力。また大学生の投手であれば宮城大弥、曽谷と年齢が近いことを考えると年齢構成的にも高校生が望ましい。左投手にこだわらないのであれば、細身でフォームの完成度が高く、オリックスでより伸びそうな雰囲気がある常広羽也斗(青山学院大)を1位で狙うというのも面白いだろう。 【ロッテ】  昨年のBクラスから浮上したロッテ(9月12日終了時点で2位)。全体的に今後が楽しみな選手は少なくないが、投手陣では球威のあるサウスポー、野手では長距離砲が不足している印象を受ける。特に野手は将来の主砲として期待された安田尚憲は足踏みが続いており、昨年ブレイクした山口航輝もまだ安定感がないだけに、まずはスラッガータイプの選手を狙いたい。  今年の候補の中ではやはり佐々木麟太郎(花巻東)が最有力となるだろう。甲子園でこそホームランが出なかったものの、スイングスピードと飛距離は圧倒的なものがあり、柔らかさがあるのも魅力だ。守備、走塁は平凡だが、指名打者のあるパ・リーグというのも追い風になるだろう。佐々木が抽選となって外した場合も、同じ高校生スラッガーの真鍋慧(広陵)、明瀬諒介(鹿児島城西)を次候補として狙いたい。 【こちらも話題】 巨人は菅野の後釜、中日は“大砲候補”か セ・リーグ6球団「ドラフト1位で狙うべき選手」は https://dot.asahi.com/articles/-/201131 【ソフトバンク】  オフの大型補強にもかかわらず、優勝争いからは大きく離されているソフトバンク。3年前までは黄金時代が続いていたことで将来性に大きく舵を切ったドラフトを展開していたが、そこから一軍の戦力になっている選手は非常に少なく、大量指名している育成選手も周東佑京、大関友久以降はまだ戦力になっていない。特に上位で指名した投手の苦戦が目立ち、先発投手陣はライバルのオリックスと比べてもかなり見劣りするのが現状である。そんなチーム事情を考えると、まずは1位でスケールもありながら完成度も備えた投手を狙いたいところだ。  今年は大学生に有力候補が多いが、ソフトバンクにおすすめしたいのが武内夏暉(国学院大)だ。大型サウスポーだが制球力が高く、試合を作る能力の高さは今年の候補の中でもトップクラス。年々スピードもアップしており、まだまだ伸びそうな雰囲気もある。地元が福岡というのもソフトバンクにとって追い風となりそうだ。 【楽天】  石井一久監督がGMを離れて監督に専念したものの、優勝争いに加わることができなかった楽天。投手も野手も主力の高齢化が目立ち、今後数年で一気に世代交代を進める必要がある。一昨年は野手、昨年は投手を大量に獲得する思い切った指名を見せたが、どちらにせよスケールの大きい選手を狙いたい。また過去2年に獲得した選手の現状を見ても野手の成長ぶりに不安が残るだけに、今年はまず野手を狙うのが得策ではないだろうか。  そうなるとやはり狙いたいのが佐々木麟太郎だ。安定して長打が期待できるのがベテランの浅村栄斗だけであり、次代の大砲候補は必要不可欠である。岩手出身の大物ということも、東北のファンを再び球場に向かわせるためにもプラスになりそうだ。佐々木を抽選で外した場合はロッテのところでも挙げた真鍋、明瀬はもちろんだが、大学生で最も飛ばす力のある広瀬隆太(慶応大)も候補となるだろう。 【西武】  昨年の3位から大きく成績を落としている西武。過去10年の指名を振り返ってみると投手を積極的に上位で獲得してきたこともあってだいぶ投手陣は整備されてきた印象だが、逆に野手陣はレギュラーの高齢化が進み、得点力の低下は著しいものがある。2020年1位の渡部健人に開花の兆しがあり、ルーキーの蛭間拓哉も順調なスタートを切ったのはプラス材料だが、今年も積極的に強打者タイプを狙いたい。  まず名前が挙がるのはやはり佐々木麟太郎だろう。これまでも中村剛也、山川穂高、渡部と巨漢タイプのスラッガーを獲得して育ててきた実績があり、豪快に振るスタイルも西武のカラーにマッチしているように見える。佐々木を外した場合は真鍋、明瀬などの高校生スラッガーももちろん候補だが、もう一つ考えられるのが捕手の進藤勇也(上武大)だ。ここ数年の大学生捕手の中でも総合力は明らかに頭一つ抜けた存在であり、早くから正捕手になれる可能性も秘めている。過去にも大物捕手を上位で指名してレギュラーにしてきた西武だけに、弱点の捕手を埋める存在として進藤を狙うのも面白いだろう。 【日本ハム】  昨年に続いて最下位に沈んでいる日本ハム。新庄剛志監督が積極的に若手を起用したことでチームの世代交代が進み、万波中正や清宮幸太郎が成長してきたことは大きなプラス材料だ。ただ一方で投手陣は上沢直之がメジャー移籍の可能性があり、加藤貴之も国内FA権を取得して去就が微妙なことを考えるとかなり不安が多い。補強ポイントから照らし合わせて考えるのであればまずは投手というのが妥当な考えのように見えるが、過去にも高校生の超大物がいれば必ず入札してきたことを考えると佐々木麟太郎という可能性も高そうだ。  仮に佐々木が獲得できれば左は清宮と佐々木、右は万波と野村佑希と高校卒の長距離砲がずらりと並ぶことになるのは大きな魅力である。一方で投手をまず狙うというのであれば、大学球界を代表する細野晴希(東洋大)、常広、武内などの大物大学生を積極的に狙いたいところだ。どちらにしても抽選を外した後のリカバリー策を入念に考えておく必要があるだろう。(文・西尾典文) 西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行っている。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。  
高校生では“二刀流の逸材”が浮上 今年のドラフト「サプライズ1位指名」可能性あるのは
高校生では“二刀流の逸材”が浮上 今年のドラフト「サプライズ1位指名」可能性あるのは 山形中央・武田陸玖(写真提供・プロアマ野球研究所 PABB)  年初から豊作と言われている今年のドラフト戦線。高校野球は各地区の春季大会、大学野球は春のリーグ戦と全日本大学野球選手権、社会人野球は都市対抗予選が終わり、1位候補はある程度揃ってきた印象を受ける。しかし、毎年最終学年に急浮上してくる選手は必ず存在しており、その存在によって大きくドラフト戦線が動くことも考えられる。そんな現時点での“サプライズ1位”となり得る候補を探ってみたいと思う。  まず現時点で特に上位指名が有力と見られているのは以下の17人だ。 ・高校生(7人)前田悠伍(大阪桐蔭・投手)東松快征(享栄・投手)坂井陽翔(滝川二・投手)平野大地(専大松戸・投手)木村優人(霞ケ浦・投手)佐々木麟太郎(花巻東・一塁手)真鍋慧(広陵・一塁手) ・大学生(9人)常広羽也斗(青山学院大・投手)下村海翔(青山学院大・投手)細野晴希(東洋大・投手)西舘勇陽(中央大・投手)武内夏暉(国学院大・投手)滝田一希(星槎道都大・投手)進藤勇也(上武大・捕手)上田希由翔(明治大・三塁手)広瀬隆太(慶応大・三塁手) ・社会人(1人)度会隆輝(ENEOS・外野手)  大学生の投手はここで挙げた以外にも有力選手が多く、冨士隼斗(平成国際大)、尾崎完太(法政大)、西舘昂汰(専修大)、古謝樹(桐蔭横浜大)、松本凌人、岩井俊介(ともに名城大)、上田大河、高太一(ともに大阪商業大)なども展開次第では十分に上位指名を狙える位置にいると考えられる。そしてこの中から1位へのジャンプアップを狙える候補としては古謝と高のサウスポー2人を推したい。  古謝は2年春から主戦となり、一時は故障で低迷した時期もあったものの、昨年秋に見事に復活。この春のリーグ戦では5勝0敗でMVPと最優秀投手にも輝いている。続く大学選手権でも初戦で延長10回タイブレークの末に仙台大に敗れたものの、9回までは0点に抑える見事な投球を見せた。力を入れた時の150キロ前後のストレートは空振りを奪える勢いがあり、縦の変化球の質も高い。コントロールがもうひとつ安定しないのが課題だったが、前述した仙台大戦では9回まで106球で投げ切り成長を見せた。チームの先輩である渡部健人(2020年西武1位)も最終学年に大きく評価を上げて1位指名を受けただけに、それに続きたいところだ。  一方の高もボールの勢いでは負けていない。昨年出場した2度の全国大会では明らかに本調子ではなく、今年も春のリーグ戦の途中で肘を痛めて離脱したものの、先日行われた大学選手権では見事に復活。ここ一番でギアを上げた時のボールは150キロに迫り、数字以上の威力が感じられる。また本格派サウスポーの割にコントロールも安定しており、意外な器用さがあるのも魅力だ。秋に好調を維持することができれば、貴重なサウスポーだけに1位候補になることも十分に考えられるだろう。  高校生はこの後の地方大会、夏の甲子園で大きく評価が変わる選手も多いが、現時点で1位まで浮上してくる可能性のある選手としては武田陸玖(山形中央・投手兼外野手)と明瀬諒介(鹿児島城西・一塁手兼投手)の2人を挙げたい。  武田は投げては140キロ台中盤のスピードを誇るサウスポー、打っても抜群のパンチ力を備えた打者との二刀流で注目を集めている。その名が大きく知れ渡ることになったのが4月に行われたU18侍ジャパンの候補合宿で、チームを指揮する馬淵史郎監督(明徳義塾)も最も目立った選手としてその名を挙げたほどだった。春の県大会では欠場したままチームは敗戦し不完全燃焼に終わっただけに、最後の夏には投打にわたる大活躍を期待したい。  一方の明瀬は長打力が魅力の右のスラッガー。タイミングをとる動きが少し大きく、変化球への対応には少し課題は残るものの、遠くへ飛ばす力は高校生ではトップクラスで、打球に角度があるのも魅力だ。また投手としても140キロ台中盤のスピードを誇り、肩の強さも備えている。現在は主にファーストを守っているが、他のポジションでも勝負できる可能性も高いだろう。  最後に大穴的な存在として挙げたいのが横山聖哉(上田西・遊撃手)だ。旧チームから不動のショートとして活躍し、昨年春の北信越大会ではホームランも放っている。今年春の北信越大会ではチームは初戦で敗れ、横山自身も1安打に終わったが、この1年間で体つきが見違えるほど大きくなり、攻守に大きくスケールアップした印象を受けた。  特にショートの守備はフットワーク、スローイングともにスピードと力強さがあり、プレーに落ち着きがあるのも長所だ。打撃は少し左方向の打球が多く、もう少し強く引っ張る打球も増やしたいが、ミートの感覚も悪くない。春の時点では上位候補というには少し物足りないことは確かだが、今年はどのカテゴリーにもショートに有力候補が多くないだけに、ここから夏に向けて成長を見せれば急浮上も期待できるだろう。  昨年もイヒネ・イツア(ソフトバンク1位)、仲地礼亜(中日1位)などが最終学年で大きく評価を上げて1位指名を受けただけに、今年も彼らのような選手が出てくることは十分に考えられる。これからスタートする高校野球の地方大会、社会人野球の都市対抗などで強烈にアピールする選手が出てくることも期待したい。(文・西尾典文) ●プロフィール西尾典文 1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行っている。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。
社会人には福留孝介以来の“超大物” 現時点の「ドラフト候補トップ10」【野手編】
社会人には福留孝介以来の“超大物” 現時点の「ドラフト候補トップ10」【野手編】 横浜高校時代の度会隆輝  いよいよプロ野球も開幕したが、プロ入りを目指すドラフト候補たちの戦いも本格化してきている。早くも大豊作と言われる2023年のドラフト戦線だが、どんな選手が上位候補になりそうなのか、現時点でのランキングを紹介したいと思う。今回は野手編だ。 *  *  * ■10位:萩原義輝(流通経済大・捕手)  東海大相模では控え捕手だったが、大学で大きく成長。1年秋から正捕手に定着すると、これまで2度のベストナインを獲得するなどチームの3季連続優勝に大きく貢献。安定したキャッチングと素早いスローイングに加え、投手の良さを引き出すリードにも定評がある。またバッティングも下級生の頃から中軸を任されており、昨年は大学選手権でもホームランを放った。捕手としての総合力は大学球界でも屈指の存在であり、打てるキャッチャーというのも大きな魅力だ。 ■9位:西村進之介(専修大・外野手)  東都二部所属ながら、大学ナンバーワンと見られている俊足強打の外野手。スピードがありながらしっかり体を残して強く振ることができ、昨年秋のリーグ戦では4本塁打を放つなど長打力も申し分ない。選球眼が良く、出塁率の高さも持ち味だ。抜群の脚力を生かした守備範囲の広さも長所で、スローイングも年々強くなっているように見える。今年の大学4年生は外野陣が少し手薄なだけに、この春もしっかり成績を残せば、大学日本代表に選ばれる可能性も高いだろう。 ■8位:明瀬諒介(鹿児島城西・投手兼一塁手)  九州ではナンバーワンの呼び声高い右のスラッガー。1年秋から中軸を任されると、九州大会でもホームランを放って一躍注目を集める存在となった。昨年秋の新チームからはエースで4番と大黒柱となり、惜しくも2年連続の九州大会出場は逃したものの、県大会では3試合連続ホームランも放った。高校生離れしたパワーと打球にスラッガーらしい角度があるのが持ち味。投手としても145キロを超えるスピードを誇る強肩もあるだけに、ファースト以外の守備にも挑戦してもらいたい。 ■7位:堀柊那(報徳学園・捕手)  高校ナンバーワンの強肩捕手。1年秋から不動の正捕手となり、攻守でチームを牽引する活躍を見せている。最大の武器はそのスローイングで、2.00秒を切れば強肩と言われるセカンド送球でも1.7秒台をマークする。打撃は少し波があるものの、パンチ力は十分で、捕手らしからぬ抜群の脚力を備えているのも魅力だ。センバツ高校野球でも少し攻守に力みが目立ったものの、大阪桐蔭戦では見事な盗塁阻止を見せるなど活躍し、チームの決勝進出に大きく貢献した。 ■6位:広瀬隆太(慶応大・三塁手)  東京六大学を代表する右のスラッガー。昨年秋までに積み上げたリーグ戦のホームラン数は13本と長打力は圧倒的なものがあり、打った瞬間にスタンドインと確信するような打球も珍しくない。一方で課題となるのは確実性だ。打率はそこまで低くないものの、全くバットに当たる雰囲気がないまま三振という打席も目立つ。この春も法政大との3試合ではヒット1本、7三振と苦しんだ。長打力は誰もが認めるところだけに、ここから対応力を上げていくことができるかに注目だ。 ■5位:上田希由翔(明治大・三塁手)  広瀬と並ぶ今年の東京六大学を代表する強打者。タイミングの取り方が上手く、ゆったりとボールを呼び込んで広角に長打を放つ。強打者タイプでありながらバットコントロールも巧みで、三振が少なく、チャンスでの強さも光る。現在はサードを守っているが、ファースト、セカンド、外野とあらゆるポジションをこなす器用さがあり、脚力と肩の強さがあるのも魅力だ。春のリーグ戦開幕となった東京大戦でも2試合でホームラン1本を含む3本の長打を放ち存在感を示した。 ■4位:進藤勇也(上武大・捕手)  強肩強打の大学ナンバーワンキャッチャー。高校時代からそのスローイングは目立っていたが、大学でさらに凄みが増し、実戦でも見事な送球で盗塁を阻止している。下級生の頃から中軸を任されているバッティングも魅力で、昨年秋のリーグ戦では4本塁打を放った。昨年は3年生ながら大学日本代表でも正捕手を任されている。近年プロ入りした大学生捕手と比べても総合力では頭一つ抜けた存在であり、順調にいけば上位指名の可能性は高い。 ■3位:度会隆輝(ENEOS・外野手)  中学時代から天才的なバットコントロールが話題となった左の強打者。横浜高校ではコロナ禍もあって少し苦しんだ印象だったが、社会人で大きく成長し、名門ENEOSでも1年目からレギュラーとして活躍している。昨年の都市対抗では4本塁打を放ち、チームを優勝に導き、MVPにあたる橋戸賞も受賞。全身を使ったフォローの大きいスイングで、長打力と確実性を兼ね備えており、走塁への意識も大きく向上した。高校卒の社会人野手としては福留孝介(元中日など)以来の大物と言えるだろう。 ■2位:真鍋慧(広陵・一塁手) “広陵のボンズ”の異名をとる大型スラッガー。力のある選手が揃うチームの中で1年夏から中軸を任されると、明治神宮大会では2年連続でホームランを放つなど、全国の舞台でもその長打力をいかんなく発揮している。今年のセンバツでは厳しいマークに苦しんだ部分はあったものの、準々決勝の専大松戸戦では左中間に特大のツーベースを放つなど、広角に大きい当たりを打てるところを見せた。打者としてのスケールの大きさは近年の高校生でも屈指で、プロでも中軸を担える素材である。 ■1位:佐々木麟太郎(花巻東・一塁手)  今年の野手の目玉と言えばやはり佐々木麟太郎になるだろう。入学直後からホームランを量産し、4月2日時点では清宮幸太郎(早稲田実→日本ハム)の111本を抜く117本まで積み上げていることが明らかになった。高校通算本塁打はあくまでも参考程度の数字ではあるが、それでもスイングの迫力とヘッドスピードはやはり尋常ではない。パワーはもちろん柔らかさがあり、左中間に放り込めるのも持ち味だ。少し小さな故障が多いのは気がかりだけに、夏には万全の状態でその打棒をいかんなく発揮してくれることを期待したい。(文・西尾典文) ●プロフィール西尾典文 1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行っている。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。
櫻井翔がAERAの表紙とインタビューに登場 「気持ちをずっと燃やしていたい」/AERA4月3日発売
櫻井翔がAERAの表紙とインタビューに登場 「気持ちをずっと燃やしていたい」/AERA4月3日発売  4月3日発売のAERA4月10日増大号の表紙には、櫻井翔さんが登場します。俳優、キャスター、アイドルなどさまざまな顔を持つ櫻井さんが、仕事への向き合い方や今後目指すことなどを語ります。櫻井さんにとって嵐とは、嵐のメンバーとは、どんな存在なのかも丁寧な言葉で話しています。巻頭特集は「自分の『好き』を突き詰めよ」。ゲーム好きが高じてゲームクリエーターとしても活躍する芸人の野田クリスタルさんや、カエル好きが高じてこの春から大学院でカエル研究に励む東京五輪ボクシング金メダリストの入江聖奈さんらが登場します。新年度スタートに読みたい特集です。まだまだ感動が続くWBCは、カラーグラビアに詳細記録、独自記事で詳報。保存版の内容です。大好評連載「向井康二が学ぶ 白熱カメラレッスン」は、桑島智輝さんを先生に、自分の被写体と出会うことや、被写体との関係性について率直に語り合いました。同じく大好評連載「松下洸平 じゅうにんといろ」は、天海祐希さんをゲストに迎えた3回目。名言続出の対談です。ほかにも読み応えある多彩な記事が詰まった一冊です。  表紙に登場する櫻井翔さんは、長いキャリアを振り返りながら「気持ちをずっと燃やしていたい」と語ります。節目となった仕事として、東京オリ・パラに携わったことを挙げ、「20代、30代とまいてきた種が芽吹いて形になった感覚が強くあった」と話します。同様に、今も「走りながら次への種をまく時期」だとのこと。仕事を巡る深い話が続きます。さらに、「嵐」についての思いも。メンバーは「家族であり、仲間であり、戦友。一緒にいるとその安心感をもたらしてくれる存在は、あの4人しかいない」と断言します。加えて、「映画 ネメシス 黄金螺旋の謎」で共演する広瀬すずさんとの対談も収録。お互いの共通点や大切にしていることについて縦横無尽に語り合います。盛りだくさんの内容です。 巻頭特集「自分の『好き』を突き詰めよ」  仕事なら、お金、働きやすさ、やりがい、安定など大事なことは多々ありますが、「好きだから」は忘れてはいけないポイントです。この特集には、好きを究めた人たちが登場します。自作の「野田ゲー」が人気を呼ぶ芸人の野田クリスタルさんは、「大人になったのに好きなことをしないのはもったいない」と語ります。東京五輪の金メダリストの入江聖奈さんは、インタビューでも「カエル好き」を公言していましたが、大学院でカエル研究をするという道に進みます。元NHKアナウンサーの内藤裕子さんは、カレー道を究め仕事につなげています。本業と好きなことを両立する方法やタイムスケジュールなどのノウハウも詳報。新年度スタートの時期に、自分の生き方や働き方を見つめる参考にしたい特集です。 WBC 感動グラビア&記録  WBCの感動はまだまだ冷めやりません。世界が熱狂した大谷翔平選手の投打の活躍、チームを引っ張ったダルビッシュ有選手の姿、村上宗隆選手や吉田正尚選手、岡本和真選手の本塁打など、記憶にとどめたい数々のシーンを迫力満点のカラーグラビアに収めました。投打の個人成績の詳細記録も掲載しています。また、今回の大会を通して見えた、大会運営の課題などを独自の視点で分析した記事もあります。AERAの誌面で、今も続く感動に浸ってください。 向井康二が学ぶ 白熱カメラレッスン  桑島智輝さんを先生に迎えての2回目。じつは桑島さんと向井さんには、ある共通点が。それは桑島さんいわく、「だいたいの人が、あ、あの人だ、ってわかる」、とても印象の強い被写体が、作品に「かなり写ってる」こと。だからこそ、「被写体に、勝つことはできないんですけど、やっぱりイーブンぐらいには持っていきたい」と、写真家としての胸の内を率直に語ってくれた桑島さんに、向井さんも「わかります」と深く頷き、普段感じていることを明かします。被写体との関係性についての向井さんの思い、ぜひお読みください。もちろん、向井さんが「いちばん無邪気やもんな」と言う「食べてるとき」を写し取った桑島さん撮影の写真や、その場にあるものを臨機応変に生かした向井さんらしい写真も、必見です。 松下洸平 じゅうにんといろ  ドラマ「合理的にあり得ない」で共演する天海祐希さんをゲストに迎えた、4号にわたる対談の3回目です。松下さんが繰り出す様々な質問に、名言連発の納得の回答をする天海さん。例えば、「初詣におみくじは引きますか」(松下)という質問には、「引かないかな。だって、自分で自分は幸せだと思っていたら、幸せなんだよ」(天海)。心に刻みたい言葉が満載の対談です。撮影現場でのいい雰囲気が伝わってくるような笑顔満開の写真も必見です。 ほかにも、・石垣島に自衛隊駐屯地 “なし崩し”に住民の不安・EV販売に「クルマ屋」から脱却の動き・#学童落ちた 国なんてクソくらえ・韓国の出生率0.78の衝撃 「まだ下がる」・「女性×働く」短期連載 [不妊治療] 通院に追われ常に綱渡り状態・そもそも制服は必要か 加速する「ジェンダーレス制服」・宇野昌磨が世界選手権連覇 逆境での強さ・日本酒新時代の到来 若手杜氏が躍動で世界制覇へ・瀬戸康史「愛」を語る 一人一人が優しくなれれば・春風亭一之輔×柴田周平 腹から出たしゃべりで・新連載「トップの源流」 日本生命・筒井義信会長・大宮エリー東大ふたり同窓会 ゲスト 泉房穂・兵庫県明石市長・現代の肖像 インティマシー・コーディネーター西山ももこなどの記事を掲載しています。 ※発売日の4月3日(月)正午からは、公式ツイッター(@AERAnetjp)と公式インスタグラム(@aera_net)で、最新号の内容を紹介する「#アエライブ」を行います。ぜひこちらもチェックしてください。 AERA(アエラ)2023年4月10日増大号特別定価:510円(本体464円+税10%)発売日:2023年4月3日(月曜日)

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