BOOKSTAND

ビジネスパーソンにサウナがおすすめの理由は? サウナ歴20年以上の著者が解説
ビジネスパーソンにサウナがおすすめの理由は? サウナ歴20年以上の著者が解説
テレビドラマ『サ動』が放送されたり、サウナとコラボしたイベントが開催されたりなど、ここ数年、空前のサウナブームが起きています。その魅力がどこにあるのかを紐解くとともに、ビジネスパーソンに効果的なサウナの活用法を教えてくれるのが本書『人生を変えるサウナ術』です。 本書の帯にはYahoo!株式会社代表取締役社長CEOの川邊健太郎氏による「仕事で実績だしたければ、サウナに入れ!」との言葉が添えられていますが、ビジネスとサウナ、いったいどのような関係性があるのでしょうか?  そもそも、サウナの最大の魅力とは「ととのう」こと。「ととのう」とはひと言で言うと、「心と身体がリフレッシュされた、調和のとれた理想的な状態」(本書より)です。私たちの日常生活では仕事や人間関係でストレスが溜まっても、なかなか「ととのう」環境が手に入らないことも多いもの。こうした現代社会の中でサウナは、「ビジネスパーソンの心の拠り所、ストレスの多い世の中から精神と肉体を一時避難させ立て直すための、瞑想空間となる力を持っている」と本書には書かれています。  では、「ビジネスに効く、サウナの効用」としてはどのようなものがあるかですが、まずは肉体面での効用(フィジカル的効用)、精神面での効用(メンタル的効用)が挙げられています。ただこれは、皆さんもすぐに思いつくところではないでしょうか。面白いのは「ソーシャル的効用」として「心と身体の距離がゼロになる」「サードプレイスとしてのサウナ」「サウナでつながるコミュニティの輪」が挙げられているところ。たしかに「裸で入る密室の空間」という特徴を持つサウナでは、親密なコミュニケーションが生まれやすく、そこから互いに親しくなったりビジネスへと発展したりといったこともありうるのかもしれません。  ちなみに著者の本田直之さんと松尾大さんは、かれこれ20年近くにおよぶサウナ歴の持ち主。年間200ほどのサウナに入るという本田さんは、現在は数々のサウナイベントをプロデュースしており、年間400ほどのサウナに入るという松尾さんは"ととのえ親方"との愛称で呼ばれ、サウナ室のディレクションを手がけたりしているそう。人生の半分以上をサウナに入りながら、その動向を見守り続けてきたふたりが語るからこそ、本書の説得力が増すというのはおおいにあるかと思います。  このほか、サウナの入り方や海外のサウナ事情、おすすめのサウナスポットなどについてもくわしく触れられており、サウナ入門書としてビジネスパーソン以外も楽しめる本書。気持ち新たに臨みたい一年の始めに読むにはふさわしい一冊といえるかもしれません。
BOOKSTAND 1/7
名画を見る際はどこに注目すればよい? 構図や線、色などから徹底解説!
名画を見る際はどこに注目すればよい? 構図や線、色などから徹底解説!
「絵は自分の好きなように自由に見ていい」。これはよく言われる言葉ではありますが、「なぜこの絵に惹きつけられるのだろう?」「この絵の良さはどこにあるのだろう?」といった疑問を、感覚だけでなくロジックでも説明できれば、名画をより深く楽しむことができると思いませんか?  そんな"ビジュアル・リテラシー"ともいえる「名画の構造の読み解き方」を教えてくれるのが、本書『絵を見る技術』です。 「絵の見方を知っている」とは「線・形・色などの造形の見るべきポイントを押さえ、その配置や構造を見ていること」だというのは、美術史研究家で本書の著者でもある秋田麻早子さん。では、そもそも絵を見る技術を習っていない素人と、美術教育を受けた人では何が決定的に違うのでしょうか。  著者いわく、それは「目の動かし方」なのだそう。絵の見方を知っている人は、画面を上下左右、端までまんべんなく目を動かし、背景との「関係性」まで意識して見ているのだとか。本書にはそうしたスキルを習得するための秘訣がたくさん出てきます。   たとえば、絵の主役ともいえる「フォーカルポイント」(焦点)の見つけ方。レオナルド・ダ・ヴィンチの『最後の晩餐』という有名な絵がありますが、これはフォーカルポイントを明確に提示している代表格なのだそう。主役となるのはもちろん、中央に座り広い面積を占めているキリスト。後ろが窓になっていて、明暗のコントラストも他より高くなっています。さらに、背景の線がフォーカルポイントに集中している、画面内の他の人物たちが腕や手、視線をキリストに向けていたりすることなどが、さらに拍車をかけています。  このフォーカルポイントの見つけ方を知っていると、まずは絵のどこを見たらいいのかわかるようになり便利ですね。  そして、視線や色、バランスなどに加えてもう一つ重要になってくるのが「構図」です。絵における特定の配置は、慣用句のように決まった意味を持つこともあるため、基本をおさえておくと構図が絵の意味を教えてくれるようになるのだそう。たとえば、配置においてのガイドラインともいえる「マスター・パターン」がわかると、一見何気なく見える絵の中にもすーっと秩序が浮かび上がってくるようになります。  どのように見つけるかというと、まずは絵に十字線と対角線を引いてみる。レオナルド・ダ・ヴィンチの名画『モナ・リザ』を例にとると、左眼が中心線に乗っていて肩が真ん中あたりに来ます。そして、二本の対角線が作り出す三角形の上部に顔、下部に手が収まっていて安定感を感じます。バストアップの肖像画ではこのように目が中心線か対角線の上に置いてあることが多いそうで、「画面の十字線と対角線を、名画は無視できない存在として扱っている」という一つの秩序がわかるというわけです。  これらは本書に登場する「絵を見る技術」のごく一部。ほかにもさまざまな「名画を読み解くカギ」が紹介され、読むだけで絵に対するひととおりの観察眼を養うことができます。あとはより詳しく知りたい部分を自身で調べたり、実際に名画の数々を見て経験を増やしたりすることで、「自分だけの絵の見方」がさらに身についていくことでしょう。本書は、皆さんが名画を見る際のコンパスとなる一冊といえるかもしれません。
BOOKSTAND 12/26
AIが苦手な読解力を身につけるためには? 体験版テストを収録した実践本
AIが苦手な読解力を身につけるためには? 体験版テストを収録した実践本
今年、「ビジネス書大賞2019」の大賞を受賞した『AI vs. 教科書が読めない子どもたち』。日本の中高生は教科書の文章を正確に理解できないという問題に光を当て、28万部を超えるベストセラーとなりましたが、『AIに負けない子どもを育てる』はその続編となる一冊。では、子どもたちの読解力向上のためには何をすべきなのか、その対策や取り組みなどの実践法を公開したものとなっています。  著者は、国立情報学研究所教授で数学者の新井紀子さん。彼女は2011年から「ロボットは東大に入れるか」(通称:東ロボ)という人工知能のプロジェクトを率いているのですが、AIにとって苦手な読解力の分野が多くの中高生にとっても難しいという点に着目し、「意味を理解して読むことができない」という現象が想定外に広がっているという事実に大きな危機感を抱きます。そこで彼女の研究グループが2016年に考案したのが「RST」というリーディングスキルテスト。本書では、このRSTを体験版として紙上公開し、読解力を身につける方法を明らかにしていきます。  RSTは「答えが書いてあるのに解くのが難しい不思議なテスト」だそうですが、どんなテストなのか、実際にやってみないとわかりませんよね? たとえば、次の問題。 ・幕府は、1639年、ポルトガル人を追放し、大名には沿岸の警備を命じた。 ・1639年、ポルトガル人は追放され、幕府は大名から沿岸の警備を命じられた。  以上の2文は同じ意味でしょうか? 答えは「異なる」ですが、中学生の正答率は57%に留まったといいます。もしかしたら、大人の皆さんの中にも間違ってしまった人もけっこういるかもしれません。  「子どもの読解力を身につける」とひと口に言っても、こうしたスキルは一日ですぐに体得できるものではなく、「もはや親の自覚を促すことだけでは、この状況の改善を見込めないところまで来ている」というのが新井さんの持論。「すべての子どもに、ゼロ歳から十分に母語のシャワーを浴びる機会、インターネットから切り離されてリアルな外部の世界と接触する十分な機会、そして歩いたり、走ったり、同年代の子どもと喧嘩をしたり仲直りをしたりする機会が保証されるべき」だとし、こうした機会を持つことが「意味がわかって読める」子どもを育てる鍵になると書いています。  将来、AIに取って代わられないような仕事に就くためには、子どもに基礎的・汎用的読解力を身につけさせることがいかに大事であるか、皆さんも本書を読めばきっと腑に落ちるのではないでしょうか。 そして、読解力は大人にとっても必要不可欠なもの。仕事上のメール、マンションや保険の契約、商品説明書やマニュアルなど、日常生活のあらゆる場面でそのスキルが求められます。子どもだけでなく、大人も一緒に本書のRSTに挑戦し、自分にどのぐらいの読解力が備わっているか把握することをおすすめします!
BOOKSTAND 12/19
ゆべし&すあまの兄妹とともに、おにぎりのルートをたどる大冒険へ!
ゆべし&すあまの兄妹とともに、おにぎりのルートをたどる大冒険へ!
私たちにとってなじみの深い食べ物である「おにぎり」。でも、もし子どもから「おにぎりはどこからきた?」と聞かれたならば、皆さんはどこまで答えられるでしょうか?  大人と子どもが一緒に読み進めながら考え、知識を深めていく"ビジネス絵本" というコンセプトで作られたのが、今回ご紹介する『おにぎりはどこからきた?』です。著者は作家だけでなく演出家やデザイナーとしても活動中のマルチクリエイター・小沼敏郎さん。親子間のコミュニケーションを増やすきっかけを作りたいとの想いから、この絵本の制作にいたったといいます。  本書の主人公となるのは「ゆべし」と「すあま」の兄妹。ある夜、すあまが「ねぇ、ママがにぎってくれるおにぎりのさぁ、おこめ、しゃけ、のり、しお、みんなどこからきたのかな?」とゆべしに尋ねたところ、おにぎりの妖精「ニギニギ」が突然ボンッと登場し、ふたりを大冒険の旅へといざないます。ふたりは「X たんけんたい」の「ゆべックス」と「すあックス」に変身し、おにぎりのルートをたどる探検へと出かけることに......!  こうして私たちもゆべし、すあまとともに、お米やおにぎりの具がどのようにして生産されているのか、そこにはどういった人々が携わっているのかなどをカラフルなイラストとともにダイジェストで見ていくこととなります。ふたりと同じように好奇心旺盛な子どもたちは、きっと興味津々に見入ってしまうことでしょう。  ユニークなのは、それぞれのシーンに詳しい説明がないところ。たとえば「こめどころ」というページには、それぞれの絵に「コンバイン」「いねかり」「せいまい」「トラックではこぶ」という文字があるだけ。読み手が子どもに解説したり、子どもと会話を交わしたりすることで、楽しみ方がさまざまに広がっていきそうです。  世の中のどんなモノも、コトも、いきなり目の前に現れるわけじゃない。それはおにぎりひとつをとってもそうで、世界は複雑に関係し合いながら繋がっている。本書からは、そうしたことが子どもにもわかりやすく伝わるのではないでしょうか。実際に私も6歳の息子と読んでみたところ、おにぎり好きの息子は単純に絵やストーリーに惹かれたようですが、私はというと「次はもっと細部までイラストに注目してみよう」とか「自分でも調べて子どもにもっと詳しく教えてあげよう」なんて気づきがありました。  なお、本書は「Where X from?」(Xはどこからきた?)というシンプルで深い質問を、読み進めながら親子で一緒に考え知識を深めていく「Xシリーズ」の第1弾となるそう。同様の絵本を今後も順次発売していくとのことですので、どうぞお楽しみに!
BOOKSTAND 12/17
タイ在住歴20年の著者が東南アジアに広がる現代怪談の数々を一冊に集約
タイ在住歴20年の著者が東南アジアに広がる現代怪談の数々を一冊に集約
日本でも昔から恐怖心とともに人々の好奇心をかき立ててきた「怪談」ですが、それは何も日本だけに限らず、外国においても同様のようです。
BOOKSTAND 12/11
古い労働観から抜け出せないミドル世代、必読! 真の働き方改革のヒントとは?
古い労働観から抜け出せないミドル世代、必読! 真の働き方改革のヒントとは?
現在、我が国の重要政策の一つとして国を挙げての取組みがなされている「働き方改革」。月の時間外労働に上限が設けられるなど、今後はより生産性の高い働き方にシフトチェンジしていくことは明白です。  そんな中、経営コンサルタントであり本書の著者でもある新井健一氏が、これからの時代に必要だと提唱するのが「働かない技術」。これは業務削減・効率化のための考え方であり、「企業人」として生き抜いていくための心構えでもあるといいます。  この「働かない技術」が特に必要とされるのは、働き方改革のキーマンとなる30代後半~40代のミドル世代だそう。たとえば、おつきあい残業をなくせなかったり、長いだけの会議をダラダラと続けたり、目的よりも「長時間がんばること」に重きを置いていたり。こうしたムダな仕事をしているガラパゴス人材は、今後生き残っていくことは難しいと著者は言います。古い労働観を切り替えて、働き方改革の本質を見極めることが重要になってくるというわけです。  では、これまで染みついた労働観から脱却するためにはどうすればよいのでしょうか? たとえば、その改善努力の一つとして紹介されているのが「職場のムリ、ムダはどこにある? 業務効率改善機会」という図。この図では「多すぎる承認・決議」「多すぎる電話対応」「不明確な責任と権限の流れ」といった職場のムリ、ムダが挙げられているのですが、こうした問題には業務改善のフレームワーク「ECRS」に当てはめて考えてみることが薦められます。「ECRS」とは「Eliminate(排除):既存業務の何かを取り除くことはできないか?」「Combine(結合と分離):類似の業務を一つにまとめるか、異なる業務を分けられないか?」などといった手法のことだそう。  ほかにも財務の視点で職場を変えるための「バランス・スコア・カード」というツールや部下の管理・育成のために必要なスキルなど、具体的な方策も提案されています。  また、信条的な部分では、これからの時代に必要な労働観として、著者は「徳」を挙げています。「『徳』とは、今後ますます多様なメンバーが集う職場において、安易にマジョリティーに迎合することなく、かといって自分の考え方に固執することなく、全体にとっての『公正さ』を考えられたり、あの人にだったらついて行きたいと思わせる品性を養うこと」とのこと。効率性や生産性を重視する欧米的な考えとともに、日本人ならではの「徳」という価値観を持つことも大切であると考えさせられます。  これまでのキャリアの再点検をする意味でも、働き盛りのミドル世代は読んでみて損はないであろう本書。これからの時代に必須となる「働かない技術」をどう身に付ければよいか、そのヒントを皆さんも見つけてみてください。
BOOKSTAND 12/6
坂本弁護士一家殺害事件から30年 "Z世代"がカルトから身を守るために知っておきたいこと
坂本弁護士一家殺害事件から30年 "Z世代"がカルトから身を守るために知っておきたいこと
1995(平成7)年に発生し、当時の日本社会を戦慄させた地下鉄サリン事件。死者13人、6000人以上の被害者を出し、今もなお後遺症に苦しむ人が存在します。その一方で、平成生まれの若い世代の中には、事件の詳細を知らない方も多いのではないでしょうか?  そんな若い世代に向けて、ジャーナリスト・江川紹子さんが、岩波ジュニア新書より刊行した近著が『「カルト」はすぐ隣に オウムに引き寄せられた若者たち』。本書では、オウム真理教による一連の事件を振り返るとともに、ごく普通の若者たちが、カルトに傾倒していった経緯を丹念に辿っています。  事件当時は、優秀な医師や科学者、有名大学の理系出身者など"エリート層"の若者が数多く入信していたことも世間の注目を集めました。教団側でも、広告塔に利用できそうな医師など高学歴な人材をターゲットに勧誘していましたが、20代で入信した実行犯の多くは、もともと反社会的な思想を持った人々ではなく、むしろ真面目で誠実な若者たちだったと言います。  例えば、地下鉄サリン事件や、その6年前の1989(平成元)年に起きた坂本弁護士一家殺害事件実行犯の1人である中川智正元死刑囚は以下のように述べ、法廷で号泣しました。 「私たちは、サリンを作ったりとか、サリンをばらまいたりとか、人の首を絞めて殺したりとか、そういうことのために出家したんじゃないんです」(本書より)  本書では、端本悟元死刑囚の「あの時、自分の感性を信じるべきだった」(本書より)という証言や、元信者の「自分のアタマで考えることを放棄してしまった」(本書より)という手記の言葉を踏まえ、信者自身も教団への疑念や違和感を持っていたにも関わらず、そこで踏み止まることができずに凶悪犯罪にまで突き進んでしまった状況を、以下のように述べています。 「人間の心は、特異な環境に置かれれば、残酷な行為もしてしまう弱さを持っているのでしょう。誠実で真面目な人柄や、頭のよさや知識の量、社会経験の豊富さで、その弱さを補えるとは限りません。自分にもそういう心の弱さがあると自覚して、このような特異な環境に陥らないように努めるしかないのかもしれません」(本書より)  また、近年はオウム真理教後継団体以外でも、自己啓発セミナーやスピリチュアル団体などカルト性が高い団体が存在することに言及。大学のサークル活動や、災害地域への募金活動・署名活動などのボランティア団体を装って近づいてくる事例もあると警鐘を鳴らしています。カルトに取り込まれてしまうことは、決して対岸の火事ではなく、誰しも可能性があることなのかもしれません。  いわゆる"Z世代"と呼ばれる若い世代はもとより、それより上の世代が読んでも充分に読み応えがある本書は、地下鉄サリン事件から24年が経過し、当時の記憶も薄れつつある今こそ手に取りたい1冊と言えるでしょう。
BOOKSTAND 12/3
葬儀業界の最先端を行く人々をインタビュー お葬式事情の"今"とは?
葬儀業界の最先端を行く人々をインタビュー お葬式事情の"今"とは?
お葬式というと、斎場や寺などで故人の親戚や友人、知人を集めて執り行うのが一般的。ですが、中にはこうした決まり切った形式から離れ、独特なスタイルで弔いの儀式をする人もいるようです。  たとえば、母親が生前に使っていたベッドで「仏壇」を手作りした人、ゆうパックで遺骨を引き取るお寺の住職、葬儀会館に「ドライブスルー」を導入した社長など......。本書に登場するのはそんなインディーズ精神にあふれた、葬儀業界の最先端を行く人や会社。著者の朝山実さんの取材、インタビューを通し、変わりゆくお葬式事情とその周辺の"今"が見えてくるノンフィクションとなっています。  本書からいくつかの事例を紹介すると、母のベッドで仏壇を作ったというのは、アート・ユニット"明和電機"で知られる土佐信道さん。お母様は2017年の大晦日に亡くなったそうですが、それまで寝ていたベッドは廃棄するというのを聞き、「あ。このベッドで仏壇つくれるかも」とピーンとひらめいたことから、葬儀の合間にアトリエで制作したといいます。前々から木工が好きな土佐さんにとっては、ベッドの木目を活かしてアーバンな家具調仏壇に作り変えるというのは造作なかったよう。仏壇内の天井部分にはIKEAで調達した小さなライトも取り付けたといいます。  ゆうパックで遺骨を引き取るという「送骨サービス」をおこなっているのは、埼玉県熊谷市にある曹洞宗・見性院です。希望者はインターネットなどから申し込み、お寺から送付されたダンボールの郵送キットに遺骨を収めてゆうパックで返送すると、永代供養をしてもらえるという仕組み。寺院の敷地内にある「永代供養墓」へ納骨された後は、管理料金などの類は一切ナシだそうです。これで3万円ポッキリというのは破格では......。このサービスは、収めるお墓がないと思案に暮れる人たちの文字通り"駆け込み寺"になっているようです。  そして著者の朝山さん自身もある種、葬儀業界の最先端に携わっているといえます。5年前に父親の葬儀の際に出会った霊柩車の運転手が葬儀会社を起業したのですが、朝山さんは父親の残した一軒家を葬儀会館として貸し出しているのです。昔ながらの屋敷のような純和風建築は一見すると葬儀会館には見えないそうですが、利用した人たちからは「落ち着く」と好評だといいます。  ほかにもさまざまな弔いの現場・現状が描かれている本書。最先端というのは何であれ、異端児でありパイオニアであるもので、中には本書に登場するような人たちに対しても、驚いたり眉をひそめたりといった反応を示す人もいるようです。けれど、形式通りの葬儀よりもむしろ強い思い入れをもって「弔い」というものに臨んでいるように感じられて、読んでいてとても興味を惹かれます。  そして、葬儀事情の今を垣間見ることで、これから先どうなっていくのかについても自然と思いが広がるはず。本書は自身の終活について考えるきっかけにもなる一冊と言えるかもしれません。
BOOKSTAND 11/28
発想支援クラウドサービス「AIブレストパーク」で創造力を強化せよ
発想支援クラウドサービス「AIブレストパーク」で創造力を強化せよ
「いい企画を出せ」と言うのは簡単だけれど、実際に良いアイデアを次々と生み出すというのは至難の業。仕事の場において、「振り絞っても振り絞っても何も出てこない......」という"思いつかない地獄"に陥ったことがある人は少なくないはず。  そんな皆さんにおすすめしたいのが、人間の創造力を強化するために開発された発想支援クラウドサービス「AIブレストスパーク」。誰もが簡単にプロの発想法を再現できるというもので、これには放送作家の鈴木おさむさんも「企画力60点の人が、確実に90点以上になるAIマシン」と絶賛するほど。そして、この「AIブレストパーク」のフル活用法を解説した一冊が、本書『AIで楽しく発想強化する本 AIブレストスパーク フル活用のための55のコツ』となります。  とはいえ、「発想支援クラウドサービス」と聞いても、具体的にどのようなものなのかピンと来ない人も多いことでしょう。これは総合ITサービス企業であるTIS株式会社が広告会社・博報堂と共同開発したシステムで、これまで博報堂のクリエイターたちが長年の経験から磨き上げてきたブレスト技術や発想ノウハウをきめ細かく機能化したAIマシンなんです。  ここで本書から使い方を見てみましょう。まずネットで「AIブレストスパーク」にログイン。たとえば「ビール」についてのアイデアが欲しい場合は、検索バーに「ビール」と入力すると、「ブレスト画面」が出てきます。画面左半分を占める「ひらめきマップ」では、ビールを中心とした関連語を大量に表示。「メニュー」「グラスの選び方」「クラフトビール」といったように、ビールを取り巻く市場や生活者に関する情報、ヒントを俯瞰できます。最初に脳内を気になるコトバや関連したコトバで充満させる......これはひらめきの大きな土台となりそうです。  また、画面右半分の「ブレストアイデア」では意外なコトバ同士を接着。「ワード生成」では「活性化ビール」「会いに行けるビール」「携帯ビール」「定額ビール」など、「フレーズ生成」では「ビールは、アーティストです」「彼氏はビールだ」「ビールにぶっちゃけトーク?」など、新しいワードとフレーズを組み合わせて100個ずつ表示してくれるなどの機能となっています。  そして、自分の頭だけで考えるのに限界を感じたら......「他人アタマで考える」なんて機能も! これは「作詞家アタマ」や「ビジネスアタマ」「主婦アタマ」といった"他人の頭"の中にある情報やボキャブラリーからひらめきマップを描いてくれるのだとか。たとえば「作詞家アタマ」を選んでみると、J-POPやアニソン、演歌などの膨大な歌詞から関連語を表示してくれるため、マップに出てくるコトバやフレーズも「ビール―飲む―底―ごめん」「ビール―飲む―美味しさ―あわの向こう」といった具合に。これは今後さらに進化していく予定の機能だそうで、学者や芸人、こども、オタク......など、どんなジャンルの"他人アタマ"が増えていくか乞うご期待といったところです。  「これからは、AIのブーストつきで考える時代」というのは本書の帯にある言葉。AIマシンの助けを借りてみたら、これまでの自分の常識や限界をサクッと飛び越えられる......なんてこともありえるかも!? 「AIブレストスパーク」の利用には月々の料金がかかりますが、無料体験版も用意されているので、興味を持った方はまずこちらで試してみてはいかがでしょうか。その際には、ぜひ本書をガイドブックとしてそばに置いてくださいね。
BOOKSTAND 11/25
あの「絶メシ」がドラマ化! 主演は「カメ止め」濱津隆之 全国の"絶品メシ"が続々登場
あの「絶メシ」がドラマ化! 主演は「カメ止め」濱津隆之 全国の"絶品メシ"が続々登場
以前、BOOKSTANDでも書籍化の紹介をした、群馬県高崎市の地域再生プロジェクト「絶メシリスト」が、テレビ東京にて地上波ドラマ化されることが決定しました。ドラマタイトルは『絶メシロード』。2020年1月24日(金)より、毎週金曜日深夜0時52分から、テレビ東京ほか(ドラマ25枠)で放送されます。
BOOKSTAND 11/19
昭和29年、高尾山で女性たちが失踪した――。人気ミステリ「百鬼夜行シリーズ」最新長編
昭和29年、高尾山で女性たちが失踪した――。人気ミステリ「百鬼夜行シリーズ」最新長編
1994年に『姑獲鳥の夏』が刊行されて以来、多くの読者を魅了し続けている百鬼夜行シリーズ。第二次世界大戦後間もない日本を舞台に、古本屋にして神社の宮司、そして「憑物落とし」でもある「京極堂」こと中禅寺秋彦が、妖怪に関係して起きるさまざまな怪奇事件を解決していくという推理小説です。  その百鬼夜行シリーズの番外編ともいえるのが、本作『天狗』を含む「今昔百鬼拾遺」シリーズ。京極堂の妹で科学雑誌『稀譚月報』の記者・中禅寺敦子、そして百鬼夜行シリーズの『絡新婦の理』に登場した女学生・呉美由紀のふたりを主人公に据え、ある種のバディ物として物語が展開していきます。『鬼』『河童』に続く第3弾となる『天狗』では、敦子、美由紀のふたりに、これまた既刊の作品『百器徒然袋――雨』に登場した筋金入りのお嬢様・篠村美弥子が加わり、3人で不可解な事件の謎を解くこととなります。  ここで本書のあらすじをご紹介しましょう。昭和29年8月、美弥子の友人である是枝美智栄という女性が、天狗伝説の残る高尾山中で行方不明となってしまいます。そして約2か月後、群馬県迦葉山で葛城コウという女性の遺体が発見されるのですが、自殺したという彼女が身に着けていたのは、なぜか美智栄の衣服だった......。一体、美智栄はどこへ消えてしまったのか? 美弥子は偶然知り合った美由紀や敦子とともに、女性たちの失踪と死の真相を探ることに......。  本作で大きなテーマとなっているのが、同性愛。葛城コウには、コウと同時期に消息を消した天津敏子という恋人がいたのですが、天津家が前時代的な価値観の旧弊な家であることが今回の悲劇の原因となっています。「天狗」とは子どもを攫ったり、背中の翼で空中を飛んだりといった妖怪でもありますが、「あの人は天狗になっている」というように"おごり高ぶった人"という意味を含んでいることも。本作で傲慢な天狗となっているのは誰なのか、そのために苦しんでいるのが誰なのか。謎は最後に解き明かされることとなりますが、けっしてさわやかな結末ではないだけに、皆さんの心にもきっと何か残るものがあるのではないでしょうか。  本書はシリーズ物ではありますが、初めて京極夏彦作品を手に取るという人でもまったく問題なし。シリーズの中では短い部類に入るので、入門編としてはむしろ読みやすいかもしれません。戦後の混沌とした時代が持つレトロでどこかおどろおどろしげな雰囲気が好きな人は、その文章や世界観に引き込まれてページをめくる手が止まらなくなってしまうに違いありません。
BOOKSTAND 11/18
「はじめの一文で泣いた」 人気コピーライターが父親たちの思いを代弁して話題に
「はじめの一文で泣いた」 人気コピーライターが父親たちの思いを代弁して話題に
マイケル・ジャクソン遺品展で発表したひとつのコピー「星になっても、月を歩くだろう」が、多くの注目を集めたコピーライターの小藥元さん。カゴメ「GO!ME. 進め、いけ。」、PARCO「変わってねえし、変わったよ。」、キレートレモン「なりたい人は、わたしの中にいる。」などのコピーや、モスバーガー×ミスタードーナツ「MOSDO!」、コメダ珈琲店「ジェリコ」といったネーミングを一度は目にした方も多いのではないでしょうか? 近年は、Kis-My-Ft2「KISS&PEACE」作詞や、絵本『あなたがいるから、僕たちが生まれた。』(コンテンツ・ファクトリー)を刊行するなど、コピーライティングに留まらず、"言葉"を軸とした作品も手がけられています。  そんな小藥さんが最近始めた自主プロジェクトがSNSで話題になっています。「ぱぱことぱ」と銘打たれたウェブサイトに掲載されているのは、思い出の地で撮影したという親子の写真と、その取材内容を小藥さんが編み直した「父から君へ、ずっと消えない言葉。」の数々。「孫を抱きしめている時、君を抱きしめていた日を思いだす」(65歳/元証券マン)、「好きは、強さ。好きは幸せ。いちばん、贈りたかったもの。」(46歳/自営業)などの印象的なヘッドラインの下に、家族の忘れられない景色、子供たちに伝えたかった想いが優しく綴られています。  サイトオープン以降twitterでは、 「はじめの一文で泣いた。全娘とパパに贈りたい」、 「いま親として子どもへ、と自分が子どものとき親もこんな気持ちだったんだろうな、が同時に来た」、 「『ぱぱことぱ』がめっちゃぐっと来る。ぱぱたちも自分の生き方に悩みながら生きてきて、一緒に生きてきた君たちに贈る言葉。こういうのがエモいって言うんだなと思う」 などの反応が寄せられています。  今回、父親だけでなく多くの人の共感を呼んでいる同プロジェクトについて、bookstand編集部が小藥さんにインタビューを行いました。 * * * ーー「ぱぱことぱ」を始めたきっかけを教えてください。 嘘や装飾や無駄。文字や言葉で溢れ、消費され続ける現代で、消えない言葉はなんだろうか。そこから考えたわけではないのですが、恥ずかしがり屋で忙しくて言葉数少ない父親の想いというものを、急に代弁したくなったのです。その言葉は、絶対に子どもたちにとって、ずっと消えない宝物になるとさえ思えました。永遠性と嘘がないこと、その2つのカタマリがこの企画なのです。「父より」ではなく、「ぱぱことぱ」というネーミングにしました。"ば"ではなく、"ぱ"です。これはお父さんの照れ隠しでもあり、空や宙に浮いていたような気持ちや思い出を拾い集めたから。「言葉」という言葉で規定したくなかったような気もします。 ーー「永遠性と嘘がないこと」とは? 「消えない言葉」というのが、わたしのコピーライターとしての一つの理想です。広告という、たとえ刹那的で限定的な器だったとしても、言葉だけを取り出した時に、30年後も50年後も古くならないものを書きたいという想いがありました。同時に「嘘をつかないこと」も矜持としてあります。嘘はすぐにバレ、プレゼンの場においてすら届くはずがないと思っているんです。だから自分がブランドなり本当にいいと思ったところ、信じられるところで書きたいのです。 ーープロジェクトを実現する過程で難しかったことは? 「言葉で溢れる世界で、一番足りなかった言葉。」これが最初にわたしが書いていたコンセプトです。その思いは変わりませんが、親子の笑い合う写真と語りきる文章に合わなかった。最後の最後に「父から君へ、ずっと消えない言葉。」というタグラインを規定しました。これができるまで相当時間がかかってしまいました。 ーープロジェクトを実行して発見はありましたか? 子供との何十年の歴史や思い出をすべて語り切ることなんて不可能です。けれどもある一点をもって、そのまなざしを見つめることで、愛を伝えられたら、と思っています。なので書いているときは、本当に父親になったつもりで、子どもさんに向けて書いている。けれどこの「ぱぱことぱ」が不思議なのは、会ったこともない知らない一般の方のしかもプライベートな話なのに、なぜか景色が思い浮かぶ、お父さんの気持ちがわかる、ということなんです。読者の方からの反応で、それは確信しました。 ーー今後の展望について教えてください。 写真展や展覧会のような形態や、ラジオやテレビ番組などもコンテンツとしては考えられるかなと思います。ただ今は、会いたいお父さんに会って取材をさせていただき、いっぱい泣かせていただきながら、思い出の場所で写真を撮っていきたいです。どんなお父さんにもドラマがある。これもまた取材を通してわかったことです。自分の気持ちが震えたところだけで、コピーを書いていく。とても幸せなことでもあるんです。だからこそライフワークにしていきたいです。 * * *  毎月24日に、新たな親子の記事が配信予定の同プロジェクト。これまで企業やアーティストのメッセージを代弁してきた小藥さんが、世の父親の声をいかにして届けていくのか。コピーライターの言葉を使った新たな挑戦に今後も注目です。 ■関連リンク ぱぱことぱ http://papakotopa.jp/
BOOKSTAND 11/12
この話題を考える
学校現場の大問題

学校現場の大問題

クレーム対応や夜間見回りなど、雑務で疲弊する先生たち。休職や早期退職も増え、現場は常に綱渡り状態です。一方、PTAは過渡期にあり、従来型の活動を行う”保守派”と改革を推進する”改革派”がぶつかることもあるようです。現場での新たな取り組みを取材しました。AERAとAERA dot.の合同企画。AERAでは9月24日発売号(9月30日号)で特集します。

学校の大問題
働く価値観格差

働く価値観格差

職場にはびこる世代間ギャップ。上司世代からすると、なんでもハラスメントになる時代、若手は職場の飲み会なんていやだろうし……と、若者と距離を取りがちですが、実は若手たちは「もっと上司や先輩とコミュニケーションを取りたい」と思っている(!) AERA9月23日号では、コミュニケーション不足が招く誤解の実態と、世代間ギャップを解消するための職場の工夫を取材。「置かれた場所で咲きなさい」という言葉に対する世代間の感じ方の違いも取り上げています。

職場の価値観格差
ロシアから見える世界

ロシアから見える世界

プーチン大統領の出現は世界の様相を一変させた。 ウクライナ侵攻、子どもの拉致と洗脳、核攻撃による脅し…世界の常識を覆し、蛮行を働くロシアの背景には何があるのか。 ロシア国民、ロシア社会はなぜそれを許しているのか。その驚きの内情を解き明かす。

ロシアから見える世界
安住紳一郎アナも泣いた!? パンダ愛好家の著者が綴る、その魅力と奥深き世界
安住紳一郎アナも泣いた!? パンダ愛好家の著者が綴る、その魅力と奥深き世界
愛らしいルックスと動きで、動物界でもひときわ高い人気を誇る「パンダ」。そんなパンダに物心ついた頃から魅了され続け、ついには書籍まで出すことになったのが、今回ご紹介する『パンダワールド』の著者、中川美帆さん。本書ではただ「可愛い」だけじゃない、知られざるパンダの魅力を伝えるとともに、彼女がほぼ自費かつ単独で訪ねたという世界30か所のパンダも紹介しています。......うーん、なんともマニアックでパンダフル!  「Part1 パンダ大全」では、パンダの生態や飼育状況から、パンダ舎の構造、パンダにまつわる乗り物などまで案内。たとえばパンダは「暑いのはキライ、寒いのが好き」「性別が見分けづらく、上野動物園ではオスとメスを間違えたこともある」「竹だけでなくリンゴやニンジンも食べる」といった情報が出てきますが、こうしたトリビアは知らない人も多いのではないでしょうか。また、企業のパンダキャラクターや地方で生まれたパンダの食べ物、パンダのラッピング電車やバスなどのちょっとマニアックなネタまで網羅されていて興味深いです。  「Part2 日本パンダ史」では、上野動物園、神戸市立王子動物園、アドベンチャーワールドのパンダの歴史を紐解きます。現在日本には、この3園に計10頭のパンダがいるそうですが(2019年6月時点)、1972年に中国から上野動物園にやってきたのを始まりに、それぞれの園でのパンダの歴史が年表や写真などとともにわかりやすく解説されています。  そして「Part3 世界のパンダに会いに行く!」では、著者がゴールデンウィークや冬休みを利用しての弾丸旅行で訪れたという世界30か所のパンダを掲載。海外のパンダがいる施設は行きづらい場所にあることが多く、日本のガイドブックにはほとんど載っていないということから、アクセスなどもできる限り詳しく記されています。また、マレーシアのネガラ動物園やアメリカのアトランタ動物園で働く職員にインタビューをおこなうなど、単なる情報紹介にとどまらない奥行きの深さも素晴らしいポイントです。  本書にはTBSアナウンサーの安住紳一郎さんがコメントを寄せているのですが、「足で稼いだ情報の数々に圧倒された。中川さんが1人で集めたのかと思うと、最終的には泣けてきた」と絶賛。同じくパンダ好きで知られる安住アナをも感激させてしまったようです。  とにかく1ページ1ページに詰まった著者のパンダ愛に圧倒される本書。皆さんもパンダの奥深き世界に触れ、「へぇーっ!」と驚き、癒されてください。
BOOKSTAND 11/8
クリエイティブな女性たち143人はどのように創作活動と生活に向かい合っていたのか?
クリエイティブな女性たち143人はどのように創作活動と生活に向かい合っていたのか?
古今東西の芸術家がいかにして日々の制作や仕事に向かっていたかを紹介した書籍『天才たちの日課』。ここには161人もの天才や偉人が取り上げられましたが、女性はそのうち27人しかいなかったそう。そこで女性に焦点を当てて書かれた第2弾が、本書『天才たちの日課 女性編』です。  今回登場するのは作家、画家、デザイナー、詩人といった女性アーティスト143人。前作には「クリエイティブな人々の必ずしもクリエイティブでない日々」という副題がついていたのに対し、本書は「自由な彼女たちの必ずしも自由でない日常」という副題がついています。これは、女性による創造的な活動が否定された時代に生きていたり、母親として子どもの世話と創作活動の間で苦しい選択を迫られたり、性的偏見と闘ってきたりといった"必ずしも自由でない日常"にいた女性たちが多いことにあるようです。男女で区別することはジェンダー的に危険な部分もありますが、男性に比べると女性のほうが、仕事ができる環境を作るためには犠牲を払う必要のある場合が多いのかもしれません。  著者のメイソン・カリーは「今回は本人と家族の関係にも多くの注意を払った。多くの場合、彼女たちの時間をいちばん多く要求するのは子どもだったからだ。したがって、彼女たちがクリエイティブな仕事と家庭内のごたごたや義務などをどのようにさばいているのか--(中略)その点を明らかにすることが、彼女たちの日常をありのままに描くために欠かすことができなかった」と記しています。  というわけで、こうしたテーマのもとに作られた本書。さまざまな国の、さまざまな女性アーティストが、日々どのような仕事をし、日常を過ごしていたのか、小さな肖像画を描くように非常にコンパクトに(長くても一人につき5ページ以内)まとめられています。  服飾デザイナーのココ・シャネル、歌手のニーナ・シモン、科学者のマリー・キュリー、バレリーナのアンア・パヴロワといった有名どころもいれば、一般にはそこまで広くは知られていない舞踏家や社会運動家、写真家といった人たちも。その中で、日本人も一人だけ取り上げられています。それは、前衛芸術家の草間彌生さん。彼女のパートは1ページにも満たないものですが、その簡潔さがまた彼女の仕事ぶりや生き方をドキュメント的に浮かび上がらせています。  ここから自身の仕事や人生のヒントを得るもよし、読み物的に「こんな生き方をしている人もいるのか」と楽しむもよし。皆さんがもし自由に対するフラストレーションや葛藤、試行錯誤などを抱えているとすれば、時代や国は違っても、きっと共鳴するものがあることと思います。
BOOKSTAND 11/5
動画配信の覇者となったNETFLIX その成功の裏側を描いたノンフィクション
動画配信の覇者となったNETFLIX その成功の裏側を描いたノンフィクション
動画配信の覇者として確固たる地位を築いている「NETFLIX(ネットフリックス)」。本書『NETFLIX コンテンツ帝国の野望』はそんなネットフリックスの1997年から2012年に至るまでの歴史を描いた一冊です。  最初はちっぽけな郵便DVDレンタルの会社だったところから、どのように成長し、有料会員1億4000万人という動画配信の頂点にまで上り詰めたのかが、著者ジーナ・キーティング氏の通信社記者時代の取材と本書用の独自取材によって余すところなく明かされています。  ネットフリックスのスタートアップに貢献したのは、現CEOのリード・ヘイスティングスと、ソフト会社役員であったマーク・ランドルフの二人。ヘイスティングスが地元のビデオレンタル店で延滞料金を請求されたのをきっかけに、その後のNETFLIXの本質となる「延滞料金なしで、いつまでも映画を手元に置いておける郵便DVDレンタル」というサブスクリプションモデルを思いついたといいます。  とにかく目を見張るのが、彼らの行動力やスピード性。1997年にネットフリックスを創業し、その1年後にはオンラインでの郵便DVDレンタルサービスをスタート。1999年には定額制プラン導入で顧客維持率を上げ、2003年には契約者が100万人を突破します。  こうして見ると順風満帆のようですが、その陰には、アメリカ最大手のビデオ・DVDのレンタルチェーン店Blockbuster(ブロックバスター)との非常に熾烈な争いも。本書には、ヘイスティングスがネットフリックスに掲げる使命として次の三つが出てきます。「一つ目は世界最高のエンターテインメント事業を築き上げること。二つ目は、消費者の手元に好みの映画が届くように手助けすること。三つめはライバル会社との競争に勝つこと」。最終的にブロックバスターは2010年に倒産となりますが、両者の激しい攻防は本書の見どころの一つでもあります。  その後も2007年には動画配信サービスを、2012年にはオリジナル作品の制作をスタートさせたネットフリックス。特にオリジナルコンテンツには巨額の制作費を投入し、2013年には初期のヒットドラマとなる『ハウス・オブ・カード』が生まれ、2018年には『ROMA/ローマ』がアカデミー賞を受賞したのは皆さんの記憶にも新しいところでしょう。  ネットフリックスは2015年に日本にも上陸。今ではすっかり私たちにも身近な存在となっていますが、アップルやアマゾンなどに比べると、その創業秘話についてはまだまだ知らない人も多いはず。ビジネス書としてもエンタメ書としても楽しめる一冊となっている本書。皆さんも読んで、ネットフリックスの真の姿に迫ってみてはいかがでしょうか?
BOOKSTAND 10/30
最短時間で最大効率の学びを得るための80のインプット術
最短時間で最大効率の学びを得るための80のインプット術
「アウトプットするためにはインプットが大事だ」とは、ビジネスの場などでよく聞く言葉。何かを発信したり生み出すためには、自分の中に常にさまざまな知識や情報を取り入れることが重要だという意味です。  とはいえ、私たちの時間というのは限られているもの。皆さんはめまぐるしく過ぎていく日々の中で、最大限に効果的なインプットができているでしょうか?  この「効果的なインプット法」について書かれているのが、今回ご紹介する『学び効率が最大化する インプット大全』。「日本一アウトプットする精神科医」だと言われる著者・樺沢紫苑氏が、読書法、学習法、記憶術、会話術、情報収集などにおける80のインプット術を記した一冊です。  本書の特徴といえるのが、著者が精神科医だということで、脳科学に裏付けられた解説が含まれている点。たとえばCHAPTER1ではインプットの基本法則について書かれているのですが、その一つに「脳の仕組みを使い、記憶力を高める」というものがあります。喜怒哀楽に伴って分泌される脳内物質としてアドレナリンやドーパミン、エンドルフィン、オキシトシンなどが知られていますが、これらには記憶を増強する作用もあるのだとか。そのため、「ストーリーを活用する(漫画化、小説化されたビジネス書を読む)」とか、「映画や美術鑑賞など『感動』と『学び』と連動させる」といったインプットをおこなうと、感情を刺激するアウトプット法につながり、たいへん効果的だといいます。  また、今の時代、インターネットでの情報収集やインターネットの使い方についてお悩みの人も多いかもしれません。CHAPTER5では、「最短で最大効率のインターネット活用術」にまるまる1章が使われています。「メールを使う」(「サブ」の仕事、メールとうまく付き合う)、「情報を見極める」(「本当に正しいのか」という視点を常に持つ)といった基本的なところから、「画像でメモする」(時短・効率化のために気になるウェブサイトは画面をキャプチャーして保存する)、「ニュースを読む」(ニュースの8割は自分にとって不要。しっかりと取捨選択する)といった少しばかりネット上級者的なものなども。そして、「スマホやSNSは『1日1時間以内』が理想」としている著者。SNSの利用時間が長いほど孤独感、抑うつは強まるという研究結果を紹介し、「きちんと時間を制限して使わないと、確実に脳のパフォーマンスを下げるのです」と解説します。このあたりも、精神科医ならではの視点と言えるのではないでしょうか。  他にも、「科学的に記憶に残る本の読み方」や「学びの理解が深まる話の聞き方」「すべてを自己成長に変えるものの見方」といった章も。全体的に数字や図を多用してわかりやすく具体的に書かれており、実生活に取り入れられるものが多い印象です。最短で最大限のインプットをしたい人は一読してみてはいかがでしょうか。  なお、本書の前には40万部を超えるベストセラーとなった『学びを結果に変える アウトプット大全』もありますので、併せて読んでインプットとアウトプットの達人を目指すのもおすすめです。
BOOKSTAND 10/25
レンタル彼氏、ホストクラブ......女性のための女性向け性サービスノンフィクション
レンタル彼氏、ホストクラブ......女性のための女性向け性サービスノンフィクション
世の中にはさまざまな男性用風俗があるのに、女性用の風俗って見当たらない。いや、あるにはあるけれど、開けっぴろげに語ったり、ましてや実際に利用したりだなんてとんでもない。世間的にそういった空気があるのはたしかです。  けれど、だからこそ、「女性向けの風俗ってどんなの?」と知りたい人も多いはず。『男を買ってみた。 -癒やしのメソッド-』はその疑問に応えてくれる一冊といえるかもしれません。  本書では、著者の鈴木セイ子さんが女性向け性サービスを利用した体験レポートを掲載。他にも、さまざまな年代の女性たちの性にまつわる悩みや、女性向け性サービスに従事する男性たちへのインタビュー、こうしたサービスが密かに拡大する社会的背景なども書かれており、非常に濃い内容となっています。  鈴木さんは今回、女性専用性感マッサージ、レンタル彼氏、ホストクラブ、出張ホストという4種類のサービスを紹介していますが、読んでみると、ひとことで"女性向け性サービス"といっても、それぞれに全く異なることがわかります。たとえば性感マッサージでは、ホテルの一室でセラピストの男性と肌を重ね、性的なケアで精神的にも肉体的にも満たされるひとときを(本番行為は禁止)。しかし、レンタル彼氏となると性的なサービスは基本なし。食事やショッピングなどのデートで疑似恋人感を楽しむというのが特徴です。鈴木さんは「プロポーズ」を事前に希望し、リアル「テラハ」体験を満喫していました。  このように、本書では言葉通り"ひと肌脱いで"、予約からの流れやサービス内容、金額的なこと、注意点などを詳しく教えてくれます。利用を考えている人にとっては、たいへん参考になるかと思います。ですが、もしかしたら皆さんの中には、それよりも「なぜ利用するのか?」という女性の内面的な部分のほうに興味を覚える人もいるかもしれません。  実は鈴木さんは、この道17年というキャリアを持つ女性専門の生活カウンセラー。ここ数年、セックスレスなど女性の"性"に関する相談が、とりわけ増加傾向にあると感じているといいます。性の悩みに目をつぶって生きられればよいですが、性欲は人間の三大欲求の一つであるだけに、それが満たされないことで、大きなストレスや孤独を抱えてしまう人も多いのが現実です。  とはいえ、本書はけっして女性向け性サービスを手放しで薦めているわけではありません。「買物をしてストレスを発散するとか、美味しいものを食べて満たされるとか、お酒を飲んでその瞬間忘れられるといったように、日常的に誰もがしていることとなんら変わりはなく、そう考えると、こういったことだけが特別なことでもないように思います」と鈴木さんは綴っています。もし、孤独やストレスに押しつぶされて人生がどうしようもなくつらくなってしまったとき、それを癒す手段の一つとしてこうした選択肢があるということを、ちょっと心の片隅に置いてみるだけでも違うのかもしれません。
BOOKSTAND 10/23
古今のファンタジー作品に登場する魔法使いたちの料理が作れるレシピ集
古今のファンタジー作品に登場する魔法使いたちの料理が作れるレシピ集
世の中にレシピ本はたくさんありますが、これほどファンタスティックでワクワクさせられる一冊はないかもしれません。だって、今回ご紹介する『魔法使いたちの料理帳』は、古今のファンタジー作品に出てくるごちそうを実際に家庭で作れるように紹介しているレシピ集なのですから!  題材となっているのは、ファンタジー作品の代表ともいえる「ハリー・ポッター」シリーズや『ナルニア国物語』、ディズニー映画でも広く知られる『アラジンと魔法のランプ』『美女と野獣』『白雪姫』『メアリー・ポピンズ』、マーベルのヒーロー映画『ドクター・ストレンジ』やアメリカのテレビドラマ『奥さまは魔女』、そしてゲーム作品の『ダンジョン&ドラゴンズ』や『ゼルダの伝説』など実に多種多彩。皆さんが小説や映画で「この料理、どんな味なんだろう?」と想像をふくらませたメニューがきっと一つは......いえ、もしかしたらいくつも出てくるかもしれません。  たとえば、ハリー・ポッターの小説にたびたび登場する「ステーキ&キドニー・パイ」。イギリスではおなじみの家庭料理で、ホグワーツ魔法魔術学校に在籍していたハリーも大好きな一品ですが、日本に住んでいる私たちにとってはピンと来ない人がほとんどではないでしょうか。  「キドニー」とは英語で「腎臓」のこと。レシピを見るに、牛の臓物を煮込んでパイで包んだものと言えそうです。なので、材料にはパイ生地や牛ステーキ肉などのほかに「牛の腎臓」の文字が......。「牛ひき肉でも可」と書いてありますが、せっかくなら本場の味さながらに本格的に作ってみるのはいかがでしょう。本であこがれた料理を自分で作って食べるだなんて至福のひととき。ハリポタファンとしてはチャレンジしてみる価値はきっとあると思います!  また『白雪姫』からは、魔女に化けた継母が白雪姫に食べさせた「毒リンゴ」のレシピも......! 作り方自体は簡単ですが、キャラメリゼした砂糖に青い食用色素と黒い食用色素を垂らすところなんかは、自分が毒を混ぜている魔女になった気分を味わえそうです。  本書はレシピ本として使えるのはもちろんのこと、純粋に読み物として楽しめるのも大きな魅力。レシピ一つひとつに作品との関係性などが説明されていて、読んでいるだけでも空想の世界が広がります。また、作り方にも「『涙よ止まれ』の呪文をかけ、タマネギの皮をむいてみじん切りにする」「まず、おまえに一番似合う、お気に入りのアクセサリーを身につけなさい(呪いのマント、悪魔のステッキなど)」なんて書かれていてとってもユニーク。ついつい細部まで読み耽ってしまいます。 世のファンタジー好きをトリコにしてやまない本書。大好きな作品と同じように、この本もページを開けば、皆さんの忙しくわずらわしい日常からほんのひととき、ファンタジーあふれる別世界へといざなってくれることでしょう。
BOOKSTAND 10/17
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