BOOKSTAND

1本5000円なのにバカ売れ!?「レンコン」農家のサクセスストーリー
1本5000円なのにバカ売れ!?「レンコン」農家のサクセスストーリー
1本5000円という超高級品ながら、生産が追い付かないほどの大人気。銀座、神楽坂、赤坂から、ニューヨーク、パリ、ドイツにいたるまで、国内外の超高級料理店の数々でも食材として使われ、2018年にはなんと約1億円もの売り上げを計上。そんな驚くべき、茨城県産の"レンコン"があるのをご存知でしょうか?  この"1本5000円のレンコン"を構想し、見事ビジネスとして成功を収めたのが、民俗学の研究者であると同時に、レンコン生産農業に従事する野口憲一さん。野口さんによる本書『1本5000円のレンコンがバカ売れする理由』では、レンコン農家に生まれた野口さんが、大学・大学院で学んだ民俗学や社会学の考え方を駆使しながら、現在の"バカ売れ"状態を成し遂げるにいたるまでの、レンコンを巡る紆余曲折の道のりが記されています。  1本5000円という高価格でありながら、なぜこれほどまでに大人気となったのか――。本書では、レンコン農家の抱える問題を前に、物の売れる理由を考え、それを愚直に追求していった野口さんの地道な努力が綴られています。  いまではどこのスーパーでも一年中見かけるレンコンですが、かつてレンコンは高級野菜の代名詞でした。しかし1970年にはじまった減反政策によって米の作付けが制限されると、それまで米を生産していた多くの稲作農家が、わずか20年間に一挙にレンコン生産農業へと舵を切ったため、レンコン生産面積が飛躍的に拡大。次第にレンコンは高級野菜から大衆化の道を辿っていったのだといいます。  しかし大衆化は、レンコン農家に苦難をもたらしました。供給量が需要を圧倒的に超えることにより商品価値は低下し、価格が暴落。収入を維持するため、耐病性に優れ、収穫量の多い品種を開発したことも、ますます大衆化に拍車をかけ、もはや他の生産地に台風が来て収穫ができなくなることを願うしかないという、仕事に対する矜持をも失ってしまう悪循環に陥ってしまったのです。 「農家が仕事に対するやり甲斐と矜持を取り戻し、利益も確保できるようにするにはどうしたらいいのか。民俗学者として、レンコン生産農家として、僕はそのような問題意識に苛まれていました」(本書より)  こうした状況を前に野口さんは、レンコンに"原価と製造コスト以外の何らかの価値"を付与し、レンコンをブランド化するべく格闘を開始。民俗学の知識を生かしながら、"伝統の創造"にひとつの可能性を見出します。恵方巻きや七草粥といった"伝統"が、ときに商業的な理由によって新たに創られてきたように、意図的に伝統を創ろうと考えたのです。  そこで曾祖父の代である大正年間には既にレンコンを生産していたことに着目し、"大正15年創業"という老舗感を押し出すことに。そのひとつとして、5000円という値段に見合い、なおかつ"大正15年創業"のイメージを具現化した"和モダン"をテーマとする、高級感溢れる豪華なオリジナル箱を作製します。  しかし、そんな自信作も、はじめはまったく売れなかったといいます。それでも野口さんは諦めませんでした。ここから本書では、コストばかりが嵩んで家族にも反対される苦境のなかでも、独自の営業を続け、人脈を徐々に築き、1本5000円のレンコンが次第に世に出回っていく様子が描かれていきますが、そのマーケティングやブランディングはもちろん、特筆すべきは、野口さんがバカ売れの最たる要因を"両親や先祖から引き継いだ信念や感性、そして身体性"に見出していること。それにより本書は、単なるマーケティングやブランディング論に留まらない、レンコン農家としての矜持も強く心に響いてくる一冊となっています。
BOOKSTAND 7/25
数多くの凶悪事件を取材してきた著者がつづる、連続殺人犯10人の肉声
数多くの凶悪事件を取材してきた著者がつづる、連続殺人犯10人の肉声
ふだん仕事をしたり日常生活を送ったりしている中で、皆さんも一度や二度は自分の常識や道徳がまったく通じない相手と出会ったことがあるかと思います。同じ人間なのに、まるで宇宙人と話しているかのような心の通じなさには驚き、恐れや怒りを感じ、ときには虚無感すら感じることも......。  今回ご紹介する『連続殺人犯』は、数多くの殺人事件を取材してきた著者・小野一光さんが、拘置所の面会室で、現場で、震撼させられた連続殺人犯10人の声を綴ったという一冊。本書を読むと、ここに登場する人物たちに対しても同じような感覚を味わうことになるかもしれません。  なぜなら、誰しも一瞬の激情にかられて人を殺してしまう可能性はあるけれど、何度も、何人も殺害するという行為は生命を軽視していないとできないことであり、普通の人にとっては理解の範疇を超えるものだからです。小野さんは本書で、連続殺人は「ある種の条件が揃った人だけ」ができることだといい、彼らのことを「悪に選り分けられた者たち」という言葉で表しています。  本書で取り上げているのは、北村孝紘、松永太、畠山鈴香、角田美代子、筧千佐子といった連続殺人犯たち。今も人々の記憶に残る世間を震撼させた人物ばかりですが、全員ではないにしろ著者が実際に彼らに会い、会話をしているというのが、本書が他のルポと比べて稀有な点です。  たとえば、文庫版になるにあたってあらたに加筆されたのが近畿連続青酸死事件の筧千佐子の章ですが、彼女は見た目はごく普通のおばちゃん。小野さんは彼女の中にどんな殺意が眠っているのかが気にかかり面会を重ねますが、彼女との対話の多くが"暖簾に腕押し"で終わります。都合のよい質問には機嫌よく答え、ときには真実や本心の混じった言葉も漏らす。けれど、自分の不利な材料であると気づけば、記憶の減退を口にしたり平気で嘘をついたりして逃れる。その繰り返しの末に、22回目の面会で小野さんは拒絶される結果に。これは読んでいるほうにとっても何とも言えないもどかしさや不快感を感じさせられます。  ほかにも、人間の感情がないかのような者や、明るく晴れやかな表情で自身の無実を訴える者、捕まった後に自身の命を絶ってしまった者なども出てきます。もし、彼らがよんどころない事情や被害者に対する罪の意識などを少しでも語っているのなら、読者としては少しのカタルシスや安堵感を得ることができたかもしれません。しかし、どう考えても理解や共感を示せないケースが多すぎて途方に暮れてしまいます。  では同じような無力感を感じつつも、著者はなぜ連続殺人犯への取材をやめないのか。それは「次はどんな理解不能なことに出会うのだろうかという、人間の多様性への興味」があるからだといいます。皆さんの中にも同様に、自分の常識を超えた人間におののきつつもその一断面を見たい、知りたいという人がいるなら、きっと本書を興味深く感じられるのではないでしょうか。  最後に、陰惨な事件やモンスターのような殺人犯が登場する本書ですが、読後はけっして暗たんとするばかりではありません。それは、著者が遺族など被害者側にも可能なかぎり取材をしており、彼らへの配慮あるまなざしが感じられる点。そして一部ではありますが、出てくる人物の中にも犯行後に悔恨の情を持ちながら粛々と日々を過ごしている者がいること。これは本書における一縷の希望といってもよいかもしれません。
BOOKSTAND 7/22
「芥川賞」全作品を会社を辞めて読破! 初回受賞作は? "あるある"は?
「芥川賞」全作品を会社を辞めて読破! 初回受賞作は? "あるある"は?
7月17日、第161回芥川賞・直木賞の選考会が都内で開かれ、今村夏子さん(39)の『むらさきのスカートの女』が芥川賞を受賞しました。年に2回、半年ごとに発表される芥川賞は直木賞とともに多くのメディアで取り上げられ、書店にも受賞作品がずらりと並びます。それだけに作品名や作家を知っている人も多いはずですが、さすがに過去180作品すべてを読んだという人はほとんどいないでしょう。  本書『芥川賞ぜんぶ読む』(宝島社)では、著者の菊池良が全作品を読破したうえで、あらすじや時代背景などが簡潔にまとめており、芥川賞の何たるかを知ることができます。  そもそも芥川賞とは、1935年に芥川龍之介の名を記念して文藝春秋社の社長・菊池寛が中短編の純文学の新人賞として創設。受賞者には、元都知事の石原慎太郎をはじめ、ミステリー作家として名高い松本清張やノーベル文学賞受賞作家の大江健三郎などそうそうたる名が連ねます。ひょっとしたら、あなたが好きな作家も受賞者かもしれません。  話題性でいえば2003年、綿矢りさが19歳で受賞したことで、丸山健二が持っていた23歳での最年少受賞記録が塗り替えられ、大きな話題になりました。さらに、西村賢太や羽田圭介などそのタレント性からテレビに出演する作家も多いことは多くが知るところでしょう。  そんな歴史と伝統が息づく芥川賞の記念すべき初回受賞作は、石川達三の『蒼氓(そうぼう)』。舞台は1930年代の日本、国策としてブラジル移民が奨励されていた時代。ブラジル移住希望者が、神戸の「国立海外移民収容所」に滞在し、船が出るまでの8日間が描かれます。当時、貧しい農民にとっては、ブランジルに行けば豊かになれると信じていたのです。『蒼氓』は3部構成で、第2部「南海航路」、第3部「声無き民」から成ります。  著者は「21世紀の読者には、作者名もタイトルもちょっとピンとこないかもしれない。しかし、当時これが評価されたということを、芥川賞は記録している。芥川賞の価値はそこにある。」と芥川賞を振り返る意義を力説します。  本書では作品紹介とともに芥川賞にまつわるコラムも掲載。著者が受賞作の傾向を解説しています。例外も存在しますが、そこには共通点が存在するといいます。(1)「時代は現代もしくは近現代である」(2)「現実世界が舞台になっている」(3)「主人公は作者と同じ国籍、民族的アイデンティティを有している」の3つです。  本書によると、アニメや漫画などで描かれることが多い主人公が別の世界に行ったり召喚されるような、いわゆる「異世界モノ」はナシ。また、その時代の享楽的な若者の姿を描いた「若者の享楽」系が、20~30年の間隔で登場するとなどテーマ傾向も分析しています。  約1年かけて受賞者169人分、180作品を読むために、会社を辞めた著者の渾身の力作は、読書家ならずとも一読の価値があるといえそうです。
BOOKSTAND 7/17
実はこんなに! 知られざる日本のバリアフリー温泉旅行
実はこんなに! 知られざる日本のバリアフリー温泉旅行
皆さんは「バリアフリー」と聞いて、何を思い浮かべますか? 平らな廊下や入口のスロープといった設備、あるいは病院や介護施設などを想像する人も多いかもしれません。また、中には「白くて無機質で冷たい感じ」といった印象を抱いている人もいることでしょう。  「温泉や旅館におけるバリアフリーは、そのイメージをくつがえすような洗練されたものです」と語るのは、本書『さあ、バリアフリー温泉旅行に出かけよう!』の著者・山崎まゆみさんです。  2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向け、国交省では新築のホテルは、2019年9月から客室総数の1%のバリアフリー客室の整備を義務化するなど、ホテル・旅館のバリアフリー化は現在着々と進んでいます。そんな中、まだまだどんな基準で宿を選べばよいかや、現地での行動に不安を覚える本人や家族は多いことでしょう。そうした人々に向けて、全国のバリアフリー温泉を取材してきた温泉エッセイストの著者がそのノウハウを紹介しているのが本書です。  まずは、山崎さんが「これからバリアフリー温泉旅行に行ってみたい、高齢の家族を連れて行きたい」と思う人たちに伝えたい大事な心構えを本書からご紹介しましょう。それは、 (1)原動力は「行ってみたい」という気持ち (2)行って楽しむためには、詳細な施設情報が必要 (3)旅館スタッフとの信頼関係で特別な旅となる という3点。以上を念頭においたうえで、宿選びのポイントや必需品チェック、温泉入浴&入浴介助のやり方、おすすめの温泉&サービス、観光地のバリアフリー事情といった具体的な情報が紹介されていきます。  たとえば「バリアフリー温泉旅館のおもてなしのプロ」の一例として紹介されているのは、山梨県の河口湖温泉郷「富士レークホテル」。河口湖を一望できる貸し切り風呂にはリフト付きのお風呂があり、シャワーキャリーで浴場に入り、リフトに乗り換えれば簡単な動作でリフトに乗ったまま入浴できるのだとか。また、食事も「一口大」「刻み食」「ペースト食」などのバリエーションが用意されており、旅館で通常出される料理すべてに対応してくれるそう。  また、宿だけではなく、観光地にもバリアフリーの動きは広がっています。たとえば三重県の伊勢神宮では参拝専用の車いすを無料で貸し出ししたり、車いすに乗ったまま参拝したい人を手伝ってくれる「伊勢おもてなしヘルパー」というボランティア60名がいたり。バリアフリーの宿とこうした観光スポットを合わせるようにすれば、さらに充実した旅行を楽しめそうです。  高齢者や身体が不自由な人と旅行に行くというのは、大変な部分もたくさん出てくるのは想像に難くありません。けれど本書を読めば、漠然と温泉や旅をあきらめていた人々にも「これなら行けるかもしれない」という手がかりをきっともたらしてくれることでしょう。  それはひとえに、バリアフリー宿の取材を数多く重ね、そして、妹を亡くす前に温泉に連れて行ってあげられずに後悔したという経験を持つ著者だからこそできること。旅館や観光地の固有名詞が数多く出てきて非常に参考になるとともに、受け入れる側の旅館の主人や女将の言葉も大切にされており、書き手である著者の温かな視点が感じられます。この本自体が、「迷惑をかけてしまうかもしれないから」と遠慮を感じている人たちの温泉旅行に対するバリアをゆるめてくれる一冊となるのではないでしょうか。
BOOKSTAND 7/12
ホスト界の帝王・ローランドの生き様が浮かび上がる!
ホスト界の帝王・ローランドの生き様が浮かび上がる!
数多くのテレビ番組で密着取材を受け、ツイッターでの名言には常に注目が集まり、全国各地での展示会も大盛況。「現代ホスト界の帝王」としてその名を轟かせるローランド。彼の初となる著書が本書『俺か、俺以外か』です。  本書はローランドの生き様を浮かび上がらせる名言が満載。ストイックなプロ意識や唯一無二の生き方を、哲学、美、愛、仕事、人生といった多面的な切り口から紹介しています。  たとえばタイトルにもなっている「世の中には二種類の男しかいない。俺か、俺以外か」という名言。これは「哲学」の章に最初に登場します。「『○○系』やら『○○タイプ』なんてカテゴライズされて生きていくなんて、絶対に嫌だった」「歴史的ななにかを成し遂げるためには、ある程度エゴイスティックになる必要があるし、自分は特別であると信じる必要があると」「きつくても、つらくても、どんな犠牲を払ってでも、唯一無二の『俺』でいたい」としょっぱなからローランド節全開!  続いて、「年齢は、どれだけ生きたかは教えてくれても、どう生きたかは教えてくれないだろ?」という名言。これは「若いくせに......」と言ってきた先輩に対してローランドが返したひとことだとか。「年齢なんて、関係ないのだ。できる奴はできるし、できない奴はいつまで経ってもできない」「人間、どれだけ生きたかではない。どう生きたかだ」と本書には彼の考えが書かれています。これもまた、彼の哲学や人生観をうかがえる一節かもしれません。  そして、厳格なだけではなくユーモアやウィットに富んでいるのも彼の持ち味。たとえば、一大イベントの企画会議中に居眠りをしていることを注意されたら......皆さんならなんと答えますか? ローランド様の返しはこちら。「寝てません。まぶたの裏見てただけです」。謝るだけなら誰でもできるけれど、ここで最高に洗練されたボケをかますのがローランド流。これにはその場が爆笑の嵐になったそうで、「絶体絶命のピンチを救える力がユーモアにはある」と彼は記しています。皆さんもこんなシチュエーションに陥ったときはこのセリフ、使ってみてはいかがでしょうか(どんな空気になるかはわかりませんが......)!  ほかにも「ローランドが下を向くのは、出勤時に靴を履くときだけさ」「歴史なんて勉強するもんじゃないね、作るものだから」「ヴェルサイユ宮殿行ったら、観光じゃなくて内見だと思われないか心配だなぁ」「俺はローランドだからね。コンビニには手を染めないよ」などなどもう金言のオンパレード。今や幅広い層から支持を集めるローランドですが、そこには年齢や職業問わず共通して胸に響く言葉があるからだということが本書を読むとわかります。  というわけで、ファンブックとして読めるいっぽう、ビジネス・自己啓発書としても役に立つかもしれない本書。皆さんも読んで明日への活力にしてみては?
BOOKSTAND 7/10
失恋と過労で日本を飛び出したアラサー女性が世界一周ひとり旅の果てに見つけたものとは?
失恋と過労で日本を飛び出したアラサー女性が世界一周ひとり旅の果てに見つけたものとは?
都会での暮らし、充実した仕事、相思相愛の彼氏......不満は何もないと思える生活をしていたら、ある日、過労から吐血。自身の価値観を見直すべく旅に出ることに決め、恋人と「世界一周の途中で合流しようね☆」と約束して愛と夢と希望で胸をふくらませていたところ、彼氏の浮気により失恋。  最初の10ページ程度のしょっぱなから、心身ともに瀕死の状態に陥ってしまったのが、当時アラサーだった坂田ミギーさん。失恋の傷が癒えぬまま、飛行機に乗り込み日本を出発するのですが、そこからの彼女の打開と気づきの旅路を描いた旅行記が本書『旅がなければ死んでいた』です。この旅を機に立ち上げたブログ「世界を旅するラブレター」がブログランキングで常に上位であるほど人気だったことから、今回、一冊のエッセイとして書籍化されることになったといいます。  本書の、というかミギーさんのすごいところは、いくら「今までにないような景色を見たい」といっても、ふつうであればけっして行かないような場所やしないようなことにも臆せずにトライしちゃう点。モンゴルでは現地民に乗馬を習って尻を裂き(尻の皮がずる剥けに)、トナカイ遊牧民に会いたいがゆえに山を越え、谷を越え。ギリシャのヌーディスト島では、自身も全裸でテント暮らし。チベットの聖地・カイラス山では難所を登って圧巻の光景に出会い、ケニアのナイロビではスラム街に暮らす地元のアーティスト集団と密造酒を飲みまくり。その後もナミビア、ブラジル、ペルー、南アフリカ、メキシコ、アメリカ......とミギーさんの旅は続きます。  とはいえ、本書は単なる秘境のガイド本というわけではなく(そうだとしてもたいへん貴重なものですが)、旅で出会った人や風景、できごとを通して起きた彼女の心境の変化や気づきというのも大きな読みどころです。  たとえば、モンゴルの遊牧民の住居「ウルツ」の中に意外なほどにモノがないのを見て、「わたしはなにか行動するたびにゴミを出している」「いっぱい作って、いっぱい売って、いっぱい買って、いっぱい捨てる。そのサイクルを繰り返してこそ、世界は成長するのだと声高に叫ばれる。成長の先は幸せか? 永久に成長し続けるなんて幻想じゃないか?」「だからこそ、この大渦に巻き込まれずに暮らしている人に会ってみたかった。これまで理解できなかった、理解しようとしてこなかった価値観に出合えば、自分の生きづらさを溶かすヒントがあるのではないかと思っていたからだ」と旅の目的を実感します。  また、アメリカのポートランドでは「ネイキッド・バイク・ライド」という自転車で街をパレードするイベントに全裸で参加。好き勝手な格好で自由に遊びまくる数千人の参加者たちを見て「借り物の眼差しで自分を測るのはもうやめよう。わたしを活かせるのは、わたししかいないのだから」と気づきます。  そんな中、日本を発ってからずっと、ミギーさんはある決め事を守っていました。旅行中、たびたび男性からオファーがあった彼女ですが、出発直前の失恋が尾を引いていたこともあり、純潔を守り、清く正しく生きていこうと心に誓っていたのです。「自分がすべての選択肢をもって選べる旅だからこそ、ちゃんと必要なものを選んで進みたかった。この先も、人生も」と本書には彼女の気持ちが書かれています。  しかし、世界一周の最後の街、アメリカのロサンゼルスである日本人男性と出会ったミギーさん。まさかここに来て、こんな展開が待っていたとは......! ある意味、失恋から始まった今回の旅路ですが、その果てに彼女は何を見つけることができたのでしょうか。そこで起きた奇跡とその結末についてはバラしてしまうと面白くないので、ぜひ本書を読んで自身で確かめてみてください!
BOOKSTAND 7/8
かつて夢と希望の地だった「団地」はいまや高齢者と外国人労働者ばかりに…!?
かつて夢と希望の地だった「団地」はいまや高齢者と外国人労働者ばかりに…!?
「団地」という響きから皆さんは何を想像するでしょうか。日本に団地が誕生したのは、終戦から10年が経過した1955年に日本住宅公団が設立された翌年のこと。大阪府堺市の公団団地「金岡団地」が第一号だったそうです。入居者の多くは大阪市内へ通勤するサラリーマン家庭でしたが、銭湯通いが当たり前だった時代に風呂付き住宅であったり、食卓と寝室が分かれた洋風であったりなど、庶民にとっては「夢と希望の地」だったといいます。  それが今や、団地の居住者の大半を占めるのは高齢者と外国人労働者。「都会と至近距離にありながら、限界集落の雰囲気を感じさせる」と記すのは、本書『団地と移民』の著者である安田浩一さんです。  自身も子どものころに団地暮らしだった経験を持つ安田さんは1964年生まれ。『週刊宝石』『サンデー毎日』の記者を経て2001年、フリーに。外国人労働者がかかえるさまざまな問題を長きにわたって追いかける中で、多国籍化する団地の存在には当然のごとく注目してきたといいます。排外主義的なナショナリズムに世代間の軋轢、都市のスラム化、そして外国人居住者との共存共栄......。本書は安田さんがさまざまな団地や団地に暮らす(暮らした)人々を実際に取材し、その現状を浮き彫りにした渾身のルポタージュとなっています。  たとえば最後の第6章で取り上げられているのは、愛知県豊田市にある保見団地。ここは1975年に入居が始まった大型団地ですが、入管法改正によって日系ブラジル人の無期限就労が可能となった1990年から日系ブラジル人住民が一気に急増したという歴史があります。今では全住民8000人の約半数がブラジル人などの日系南米人で占められており、「小さなブラジル」といった様相を呈しているとか。その中で、この団地の住民である藤田パウロさんが20年間毎朝欠かさずおこなっているのが「ごみ置き場の掃除」です。完全なボランティアなのになぜおこなうのか? 「ごみステーションが汚れていると、日本人はすぐにブラジル人のせいにするでしょ? ブラジル人が汚していなくてもブラジル人のせいにされる。だからどんなときでもきれいにしておかないと」とパウロさんは語ります。これまでも子どもが「ガイジン」と学校でいじめを受けたり、些細なトラブルから保見団地抗争と呼ばれる大事件に発展したりと、90年以降の保見団地の歴史は日本人とブラジル人の対立の歴史でもあったといいます。これにくわえて、近年は日本人住民の高齢化が進み、現在は国籍や民族の壁というよりも世代間のギャップが存在し、日本人同士であっても相互理解が困難だという状況があるようです。  外国人排斥に、押し寄せる高齢化の波......そこにあるのは、団地の、ひいては現代の日本社会全体の縮図といってもよいかもしれません。ではこの先、将来を悲観するしかないのでしょうか? けっしてそんなことはなく、保見団地においても国籍の壁を超え、手を取り合って防犯パトロールや地域の祭りなどに協力し合う動きも出ています。考えようによっては、もしかしたら、「団地」こそが増え続ける移民の受け皿となり、若い外国人労働者たちと孤立する高齢者たちとのかけはし的存在として機能していく可能性も考えられます。現在、全国の団地で共生に向けたさまざまな取組みが行われている中で、団地の将来はどのようになっていくのか。本書を読んで想像してみるのも面白いかもしれません。
BOOKSTAND 7/4
鈴木涼美×峰なゆか、世の男たちに物申す!? J-WAVE番組『BKBK』公開収録トークイベント
鈴木涼美×峰なゆか、世の男たちに物申す!? J-WAVE番組『BKBK』公開収録トークイベント
下北沢の「本屋B&B」で6月27日、トークイベント「クズ男がそんなことで許されると思うなよ~J-WAVE『BKBK』公開収録トークイベント」が開催されました。イベント名にある通り、J-WAVE、火曜深夜26時30分からの番組『BKBK』の公開収録も兼ねたトークイベントです。  同イベントは、6月5日に発売となった『女がそんなことで喜ぶと思うなよ~愚男愚女愛憎世間今昔絵巻』(集英社)の刊行記念として行われました。同書は、セクシー女優としても活躍した文筆家の鈴木涼美さんによる「現代男女世相論」。恋愛、結婚、不倫、ハラスメント、フェミニズムなどの切り口から、女性視点よるさまざまな「男女」が語られています。  イベント当日は、J-WAVE番組『BKBK』のナビゲーターを務める(下写真左から)原カントくんと大倉眞一郎さん、そして同書著者の鈴木涼美さん、同書イラストを手がけた峰なゆかさんが登壇。本書についてはもちろん、「男女」に関するさまざまなエピソードが惜しげも無く飛び交いました。
BOOKSTAND 7/1
「つーさん」ふたたび! 第1弾を超える笑いと感動のネコ漫画
「つーさん」ふたたび! 第1弾を超える笑いと感動のネコ漫画
抜群の描写力で15万部を超えるベストセラーとなった『俺、つしま』。その第2弾となる『俺、つしま 2』が出版されました。ニヤリとさせられる猫との日常や、「あるある」とうなずかされる作風はより一層パワーアップしており、読者の期待を裏切らない猫愛あふれる一冊になっています。  主人公の「つしま(つーさん)」は、外でゴミをあさっていたところを「おじいちゃん(実は女性だが、つしまにはおじいさんに見える)」に保護されたキジトラ。つしまを中心に、「チャー」や「オサム」「ツキノワ」といった仲間たちが随所に登場し、日々の物語を紡いでいく......のは前巻と変わらず。ですが、本作ではあらたにつしまの外猫時代を描いたテルオ編が描かれているのが大きなポイントとなっています。  ある日、「しず子(現在はクラウディア)」という名前の猫と偶然再会したつしま。ここから、まだおじいさんに飼われる前、流れ者(流れ猫?)だったころの話が思い出されます。ふとしたきっかけで、しず子、そしてテルオという2匹と友達になったつしまは、一緒に魚屋で盗みを働くなどして暮らしていましたが、あるとき妊娠したしず子が去っていき、テルオも人間に捕まり離れ離れになってしまいます。ほどなくしてつしまは心優しい「おじいさん」と出会うわけですが、ではテルオはどうなってしまったのでしょうか。  本書のもう一つのポイントとなるのが、ツイッターを見ていた編集者が本を出版したいとのことで自宅にやってくるというパート。書籍化されるまでが紹介されますが、実はこれがラストにつながる重要な伏線となっています。本を買ったある男の子のおうちで、母親が「おもしろかった? 『俺、つしま』」と尋ねます。「うん、でもまだ最初のほうしか読んでない」と答える男の子。理由は「ボビーにとられちゃった」からだそう。ボビーというのはこの家の飼い猫のようですが、『俺、つしま』を抱きしめるほど気に入った様子。このボビーが誰なのか、なぜこの本を大事に抱えているのか......きっと最後に大きな感動が皆さんを待っていることでしょう。  ニヤリと笑って、爆笑して、ホロリと泣いて。心がじんわりあたたかくなる『俺、つしま 2』は前作同様、何度も読み返したくなる名作といってよいかもしれません。特典として巻末についてくる2種類のポストカードも可愛くて、ツイッターで作品を目にしたことのあるファンにとっても買う価値アリな一冊になっているかと思いますよ!
BOOKSTAND 6/27
「自己肯定感」は誰でもいつからでも高めることができる?
「自己肯定感」は誰でもいつからでも高めることができる?
昔に比べるとがぜん注目度が高まっている「自己肯定感」という言葉。日本の子どもは他国に比べると自己を肯定的にとらえている人の割合が低いという調査結果を踏まえて、内閣府も自己肯定感を高める方針を打ち出したほどです。  子どものみならず大人の皆さんの中にも「どうすれば自己肯定感を高められるのだろう?」と悩んでいる方も多いかもしれません。けれど、ここで「自分はもともとネガティブで打たれ弱い性格だから仕方がない」とあきらめてしまうのはちょっと待って。本書の著者・中島輝さんによると、「自己肯定感は誰でもいつからでも高めることができる技術」だといいます。その技術を実践的に、そしてわかりやすく解説してくれているのが本書『自己肯定感の教科書』なのです。  そもそも自己肯定感とは何でしょうか。本書には「自分が自分であることに満足し、価値ある存在として受け入れられること」と書かれています。これは誰しも状況によって高まったり低まったりするものであり、筆者自身も自己肯定感が超低空飛行を続けている状態が長らく続いていたのだとか。そんななか、心理学や心理療法を独学で勉強し、自ら実践することを繰り返しながら、35歳のときに引きこもり状態を克服したとのこと。本書には自己肯定感が下がり始めるサインにすばやく確実に気づく方法や、落ち込み始めた気分を復活させるための対策など、心理学や脳科学のエビデンスや著者の実体験に基づいたトレーニングが惜しげもなく公開されています。  本書の読み方についてですが、まずは「自己肯定感ってどんなものか知りたい」と感じているなら、1章から読み進めてください。皆さんのメンタルの状態をチェックしつつ、自己肯定感についての解説をしっかりと受けることができます。続く2章では、自己肯定感がなぜ高くなったり低くなったりと変化するのか、その理由と原因になっている"6つの感"について説明されています。  もし今まさにつらい、うまくいかないと悩んでいる状態なら、第3章からページをめくるのがおすすめです。そこには今すぐ取り組むことのできる自己肯定感を高める手法が書かれています。  では具体的に第3章の「自己肯定感が一瞬でパッと高まる方法」を見てみると......。「ウィークデーに自己肯定感を高めるワーク」として、「ヤッター!」のポーズ、鏡の中の自分にポジティブな言葉をかける、セルフハグといった18の方法が、「ウィークエンドに自己肯定感を高めるワーク」として「5分だけ掃除をする」「30秒のマインドフルネス瞑想法」など5つの方法が紹介されています。また、心も体も元気になるという「自己肯定感体操」も最後に出てきます。たしかにどれもすぐに取り入れられて即効性を感じられそうなものばかりです。  ほかにも最終章の第4章では、問題を切り分けてスッキリさせるための「課題の分離シート」や自身のビジョンを明確にさせるための「イメトレ文章完成法」といったワーク的なものも。  とにかくこのように実践的な手法やトレーニングが満載の本書。繰り返しおこなうことで自己肯定感を高める技術を手に入れ、仕事、人間関係、恋愛・結婚、子育て......と人生のどんな場面でも「大丈夫」と思える自分を作っていくことができるようになるかもしれません。
BOOKSTAND 6/24
ドラマ『きのう何食べた?』シロさんとケンジの美味しそうなご飯レシピが満載
ドラマ『きのう何食べた?』シロさんとケンジの美味しそうなご飯レシピが満載
2019年4月からテレビ東京系で放送中の人気深夜ドラマ『きのう何食べた?』。几帳面で倹約家の弁護士・筧史朗(シロさん)と明るい性格で人当たりのよい美容師・矢吹賢二(ケンジ)という恋人同士の二人が2LDKのアパートで暮らす日常が、毎回丁寧に描かれています。    1か月の食費はふたりで2万5000円以内。特売の食材なども使いこなしながら日々の料理を作るのはシロさんの担当です。彼の料理があり、ふたりで食卓を囲むからこそ、会話もはずみ、愛情も深まります。  本書はドラマに登場した料理レシピの数々を、よしながふみさん原作の漫画のエピソードとともに紹介した一冊。ここには、高価な食材や手間をかけるようなレシピは登場しません。どこの家庭にもある調味料や食材で、時間をかけず手軽に作れる"家庭の味"ばかりです。  たとえば、ケンジの友人・ヨシ君達が家に来て食事をすることになった日の献立はというと、「鮭と卵とキュウリのおすし」「筑前煮」「ナスとパプリカの炒め煮」「ブロッコリーの梅わさマヨネーズ」「カブの海老しいたけあんかけ」。ヨシ君の料理の腕前がかなりのものと聞いたシロさんは悩んだものの、見栄を張らず"いつもの夕飯"を出すことにします。めんつゆや鶏ガラスープの素など市販の調味料もうまく使いつつも、彩り鮮やかでぬくもりを感じさせるメニューは、今日の夕飯にでもさっそく作ってみたくなるようなものばかりです。  また、テレビドラマでも飯テロとして視聴者の食欲をそそったのが「サッポロ一番みそラーメン」。年末に実家に帰ったシロさんと離れてケンジが一人で作るのですが、バターをがつっと使ったり味噌を足してスープを濃いめにしたりするのがケンジ流。そうか、自分好みにアレンジできるのも袋ラーメンの楽しみだったと気づかされる回でもあります。  他にもメインから副菜、デザートまでさまざまなレシピが掲載された本書ですが、購入者の中には「レシピが思ったより少なくて残念」との声も......。逆に言えば、レシピのほかに登場人物の紹介やシロさん役の西島秀俊さん、ケンジ役の内野聖陽さんへのインタビュー、原作者のよしながふみさんが語るドラマ『きのう何食べた?』といった特集も充実。レシピも収録したドラマ紹介本的な一冊ととらえておくと、間違いがないかもしれません。  ドラマや原作漫画のあたたかな空気をそのまま感じ取ることができる『公式ガイド&レシピ きのう何食べた? ~シロさんの簡単レシピ~』。ファンブックとして、レシピ本として、きっと皆さんの心をほっこりさせてくれるものと思いますよ!
BOOKSTAND 6/19
映画化も決定! 韓国で女性たちの圧倒的共感を得た大ベストセラー小説
映画化も決定! 韓国で女性たちの圧倒的共感を得た大ベストセラー小説
2016年に韓国で刊行されると100万部を超えるベストセラーとなり、社会現象まで巻き起こした『82年生まれ、キム・ジヨン』。この小説を読んだ多くの女性が「これはわたしの物語だ」との声をあげたといいます。さらに台湾、ベトナム、アメリカ、カナダなど世界各国で翻訳され、日本でも13万部を突破する売れ行きとなっている本書。国を超え、世の女性たちがこの小説に圧倒的共感を感じる理由はどこにあるのでしょうか?  本書はちょっと不思議な設定の小説といえるかもしれません。主人公は、3年前に結婚し、昨年女の子を出産したという33歳の女性、キム・ジヨン。ある日突然、彼女は自分の母親や友人の人格が憑依したかのようになってしまいます。そして、物語は彼女が受診した精神科の担当医が書いたカウンセリングの記録という体裁になっており、私たち読者は読み進めながら、キム・ジヨン自身の半生に憑依することになるわけです。  その中では韓国の女性が、ひいては日本に住む私たち女性が、多かれ少なかれ感じたことがある現代社会の生きづらさや悩み、苦労がありありと描かれています。  たとえば、勉強や就職活動をがんばっても大企業に採用されるのは軒並み男子学生であったり、結婚後は妻側の実家に帰ることはないのに夫側の実家へ顔を出し手伝いすることは当たり前のように求められたり。きわめつけは、産後に子育てとの両立がかなわず、思うように仕事を見つけられないキム・ジヨンが娘を連れて公園でひと休みしていたときに、サラリーマン男性たちが発した言葉。「俺も旦那の稼ぎでコーヒー飲んでぶらぶらしたいよなあ......。ママ虫(育児をろくにせず遊びまわる、害虫のような母親という意味のネットスラング)もいいご身分だよな」。  どうでしょうか。世の女性たちが「これはわたしの物語だ」と強い共感を示すのもうなずけるのではないでしょうか。  いっぽうで、韓国の男性たちはこの小説に対して強い拒否反応を示す人も。Kポップガールズユニット、レッド・ベルベットのアイリーンが本書を読んだと発言したところ、一部男性ファンが「アイリーンがフェミニスト宣言をした」として一斉に反発。アイリーンの写真やグッズを破損する様子を動画投稿サイトに投稿するという事態も起きたほどだとか。ここまで激しくはなくとも、本書を読んでなんとも言えない居心地の悪さのようなものを感じる男性は日本の中にもいそうです。  著者のチョ・ナムジュ氏は、本書が「自分をとりまく社会の構造や慣習を振り返り、声を上げるきっかけになってくれれば」と日本の読者に対してメッセージを寄せています。挫折、疲労、恐怖感で終わるのではなく、これからを生きる世代のためにも、私たち一人ひとりが考え続けていくことが大事になってくるかと思います。  現在、キム・ジヨン役にチョン・ユミ、夫チョン・デヒョン役にコン・ユというキャストで映画化も進んでいるという『82年生まれ、キム・ジヨン』。まだまだ本書が投じた一石の波紋は鎮まることはなさそうです。
BOOKSTAND 6/17
この話題を考える
学校現場の大問題

学校現場の大問題

クレーム対応や夜間見回りなど、雑務で疲弊する先生たち。休職や早期退職も増え、現場は常に綱渡り状態です。一方、PTAは過渡期にあり、従来型の活動を行う”保守派”と改革を推進する”改革派”がぶつかることもあるようです。現場での新たな取り組みを取材しました。AERAとAERA dot.の合同企画。AERAでは9月24日発売号(9月30日号)で特集します。

学校の大問題
働く価値観格差

働く価値観格差

職場にはびこる世代間ギャップ。上司世代からすると、なんでもハラスメントになる時代、若手は職場の飲み会なんていやだろうし……と、若者と距離を取りがちですが、実は若手たちは「もっと上司や先輩とコミュニケーションを取りたい」と思っている(!) AERA9月23日号では、コミュニケーション不足が招く誤解の実態と、世代間ギャップを解消するための職場の工夫を取材。「置かれた場所で咲きなさい」という言葉に対する世代間の感じ方の違いも取り上げています。

職場の価値観格差
ロシアから見える世界

ロシアから見える世界

プーチン大統領の出現は世界の様相を一変させた。 ウクライナ侵攻、子どもの拉致と洗脳、核攻撃による脅し…世界の常識を覆し、蛮行を働くロシアの背景には何があるのか。 ロシア国民、ロシア社会はなぜそれを許しているのか。その驚きの内情を解き明かす。

ロシアから見える世界
お風呂界のエンタメ、現代銭湯建築の傑作... 都内おすすめ銭湯が丸わかり
お風呂界のエンタメ、現代銭湯建築の傑作... 都内おすすめ銭湯が丸わかり
銭湯といえば、私たちに身近な存在として古くから親しまれてきた公衆浴場。各家庭にお風呂が普及した今もあちこちにあり、最近ではノスタルジックな味わいがある場所として、魅力を感じる若い世代も多いようです。  本書『銭湯図解』の著者・塩谷歩波さんもそのひとり。1990年生まれの彼女は2015年に早稲田大学大学院(建築学専攻)終了後、都内の設計事務所に勤務します。そのかたわらで、2016年末より銭湯の建物内部を俯瞰図で描く「銭湯図解」シリーズをSNS上で始めたところこれが話題に。現在は「銭湯の魅力を伝えたい」という思いとともに、イラストレーターとして、また東京・高円寺の銭湯・小杉湯で番頭として働く日々を過ごしているそう。  そんな彼女の初めての著書では、都内を中心とした24軒の銭湯の図解をカラーの描きおろしで掲載。「アイソメトリック」という、角度をつけて建物内部を俯瞰図で描く建築図法を用いて、銭湯の浴室や脱衣所内が描き起こされています。  ほのぼのとした味わいあるタッチの絵とともに、著者による手書きの文字が添えられエッセイ形式になっているのも本書の特徴。第1章では「銭湯を知る」として、「銭湯の原風景」だという東京・北千住の「大黒湯」(男湯)、有名商店街のそばにあり「ご飯がおいしくなる銭湯」だという東京・戸越銀座の「戸越銀座温泉」(月の湯)など初心者にふさわしい7軒がピックアップされています。  続いて第2章「銭湯を楽しむ」は上級者コース。「現代銭湯建築の傑作」と著者が評する東京・町田の「大蔵湯」(女湯)、プロジェクションマッピングを採用した「銭湯建築のニューウェーブ」ともいえる東京・練馬の「天然温泉 久松湯」(女湯)など7軒を収録しています。  そして第3章「銭湯を極める」はマニアックコース。著者が心が疲れて泣きたくなったときに必ず行くというのは東京・武蔵境の「境南浴場」。静かなピアノのBGMや優しいサウナの温度などが疲れた心をほぐしてくれるのだとか。ほかにもスカイツリーの色を再現した湯船やトムヤムクン湯などもあるという「お風呂界のエンタメ」こと東京・墨田の「薬師湯」(女湯)など5軒が掲載されています。  都内の銭湯中心の本書ですが、中には日本各地へ遠征して取材したものも。明治時代からの建物と若き経営者の意欲が混じり合った京都の「サウナの梅湯」(男湯+2階)、けっしてアクセスはよくないものの銭湯マニアがこぞって訪れるという三重県の伊賀にある「昭和レトロ銭湯 一乃湯」(女湯)などなど、その土地ならではの銭湯に旅情をかき立てられます。  多様で幅広い銭湯の魅力を水彩で表現した『銭湯図解』。どの絵からもそれぞれの銭湯の情景が浮かび上がってきて、ほっと温かな気持ちにさせられます。まるで湯上がりのようなほかほか気分になれる一冊、ぜひ皆さんも読んでみてください。
BOOKSTAND 6/13
ジェーン・スーさんとわが道を行く8人が語りつくす、人生折り返してからのあれこれ
ジェーン・スーさんとわが道を行く8人が語りつくす、人生折り返してからのあれこれ
『私たちがプロポーズされないのには、101の理由があってだな』や『貴様いつまで女子でいるつもりだ問題』などのエッセイの著者であり、TBSラジオ番組『ジェーン・スー生活は踊る』ではパーソナリティを務めるジェーン・スーさん。彼女が各分野で活躍する8人それぞれと語りつくした対談集が『私がオバさんになったよ』です。  対談相手は、光浦靖子さん、山内マリコさん、中野信子さん、田中俊之さん、海野つなみさん、宇多丸さん、酒井順子さん、能町みね子さん。この人選は、ジェーンさんが過去に対談したことのある人の中から「もういちど話したかった」という気持ちを持っている相手に声をかけたのだとか。(能町さんだけは例外で、じっくり話をしてみたかったけれど機会がなかった相手だそう)。  タイトルからもわかるとおり、本書はオバさん、すなわち"折り返し地点を過ぎた年代の人々"の人生におけるいろいろがテーマになっています。たとえば、最初に登場する光浦靖子さんとは体力的な部分での話も。光浦さんの「メンタル面では昔よりひりひりせずに楽しめるようになりました。今は体力的肉体的疲労」という言葉や、ジェーンさんの「20代は自我との闘いで疲れ果てる。体力は有り余っているのに、効率がすごく悪い。30代で少しバランスがとれてきて、40代でメンタル面がだいぶ整って、デフラグが全部終わって効率よく動けるようになるかと思いきや、今度は身体が動かない」といった言葉には、同年代なら業種は違えど共感しきりな人も多いのではないでしょうか。そんな中、マッチョな男社会や年下が多くなる職場などで40代以降の女性たちはどのようにするのが生きやすいのか......二人の対談は必読です。  他の相手との対談も実に貴重で、結婚していないこと、子どもがいないこと、男性女性それぞれが抱える現代社会の呪い、仕事のしかた、パートナーとの役割分担、親との関係性......などなど、誰しもが抱えるであろう悩みやモヤモヤが次々に出てきます。  「結婚したら仕事をやめて、子どもを産んで......」といった決まった価値観が崩壊しているともいえる今の時代、混沌としていて何が正解なのか、その答えを求めている人も多いかもしれません。そんな中で、本書から参考にすべきは「バリエーションを知る」「多様性を受け入れる」ということなのではないでしょうか。「40代女の生き方のバリエーションが増えていくことが必要」とは本書に出てきたジェーンさんの言葉ですが、さまざまな考え方、さまざまな生き方をする40代以降の皆さんを通して、人生はひとつじゃないということが本書からはしみじみと、そしてポジティブに伝わってくることと思います。  すでにオバさんになった人だけでなく、いつかオバさんになる人も、そしてオバさんとコインの表裏一体で生きるオジさんの皆さんにも。今を生きるすべての人に、ぜひオススメしたい一冊です。
BOOKSTAND 6/11
仕事ができる人ほどやっている!? ハイパフォーマンスを維持するためのセルフメンテを知ろう
仕事ができる人ほどやっている!? ハイパフォーマンスを維持するためのセルフメンテを知ろう
働き盛りの年代といえど、「駅の階段を上るのが億劫」「自分の顔色がくすんで見える」「髪がパサパサしてまとまらない」「人の話を聞き返すことが多くなってきた」など自身の体調にちょっとした心配を抱えている人は多いのでは? やはり人間は年を重ねるうちに若い時と疲れの回復具合が変わってくるのかもしれません。  しかし、実はパフォーマンスがいい仕事をしているビジネスエリートほど、自分にあったセルフメンテナンスを身につけ、中長期的な体調管理を心がけているのだとか。 そんな老け込みを感じ始めた皆さんのために、東洋医学の考えを基に、老いの進行を緩やかにするセルフケアを取り入れながら、自分に合った体調管理法を教えてくれるのが本書『最強の体調管理』です。  著者は京都の「鍼灸Meridian.烏丸」院長で鍼灸師でもある中根一さん。彼のもとには世界をまたにかけた国内外のビジネスエリートたちが多数通院しているそうですが、そうした人たちほど自身に合ったセルフケアを生活の中にうまく取り入れており、だからこそリタイヤしてもおかしくない年齢に差し掛かってもなお第一線で活躍できていると本書で述べています。  さて、そもそも「老け込み」という現象がなぜ起きるかですが、人は疲労物質が溜まりやすくなると「腎虚(じんきょ)」という状態に偏ってしまうそう。第1章では体調管理を始める前に、まずは「腎虚」の深刻度をはかる方法を教えてくれています。また、東洋医学によると体質によっても「身体の長所・短所」や「かかりやすい病気」など気をつけるべき症状は異なるそうで、自分が「肝」「脾」「肺」「腎」の4タイプのどれにあてはまるかチェックする方法も紹介されています。  そして「体調管理」ということで、「食事」「休息法」、運動を中心とした「生活習慣」という観点から日常生活全般のさまざまなアドバイスをしてくれるのが本書の特長。たとえば第2章では、「糖質制限よりも満腹にならないことが大切」「菜食重視は老け込みを加速させる」「朝の緑茶はコーヒーの10倍パフォーマンスを上げる」「体調を整える水分摂取のタイミングと目安」などの食事術について書かれています。  また、身体の衰えを感じたら「運動」よりも「正しい休息」が必要だという著者。 第3章では「エリートは入浴時に空気の流れを意識する」「深呼吸が腎虚体質を解消し脳が冴える」「スロージョギングこそ最強の疲労回復」といった効果的な休息の取り方についても教えてくれます。世界で活躍しているエリートほど、疲れてから休息を取るのではなく、疲れを自覚する前に休息を取るように心がけているというから見逃せません。  続く第4章は、膝の痛みを防ぐための太腿ストレッチやデスクワーカーにおすすめの瞼のケア、辛い腰痛を撃退するための「前屈4の字固め」など、日頃の生活に取り入れられる手軽なストレッチやエクササイズを中心に紹介。これらはパフォーマンスを落とさないために習慣にしたいところです。  さしあたり困ったことがなければ、わざわざお金と時間を使って身体をケアしようとしないのが一般人の常識かもしれません。けれど、いわゆるビジネスエリートと呼ばれる人たちは具体的な症状が出てではなく、「病気になる前に、体質や生活習慣から適切な施術とアドバイスをもらう」よう実践している人が多いことが本書からはわかります。ここまで完璧を求めることはなかなか難しいですが、今までよりも少しでも健康への意識を高めるために、そして健康な生活習慣を手に入れるために。本書を読んで自身の体調管理を始めてみるのはいかがでしょうか?
BOOKSTAND 6/7
危険地帯ジャーナリストが取材で出会った「悪いやつら」 その思想とは
危険地帯ジャーナリストが取材で出会った「悪いやつら」 その思想とは
殺人犯、殺し屋、ギャング、麻薬の売人、薬物依存者、悪徳警官......世の中にはさまざまな国籍や職業の「悪いやつら」が存在しますが、彼らの頭の中はいったいどのようになっているのでしょうか。  その根幹にあると思われる行動や考え方を体系化したものが、『世界の危険思想』です。著者はTBS系の人気番組『クレイジージャーニー』で危険地帯ジャーナリストとして出演中の丸山ゴンザレス氏。ふだんの生活の中で私たちが生死にかかわるほどの強烈な悪意に遭遇することはそうそうありませんが、本書では著者が数々の取材を通して出会ったエピソードや事例を通して、世界の危険思想の一端にふれることができます。  まず最初に出てくるのが「人殺し」。殺人は人類最大のタブーのひとつともいえますが、どういった動機や理由でもって殺人を犯すのか、加害者側の考え方が紹介されています。 著者がジャマイカの首都・キングストンのスラム街でインタビューしたのは、現役の職業・殺し屋。その日の暮らしに困るほどの貧乏人であるため、「彼にとって殺すことに罪悪感はあるだろうが、それ以上に生きることに必死なんだと思う」と著者は推察します。そして、インタビューの途中でちょうどかかってきた殺人依頼の電話の会話を聞き、気軽に殺人を頼むコネと金を持つ依頼主のほうにも恐怖感を抱く著者。結果的に、依頼者と実行者という二つの存在が噛み合ったときに殺人が発生することがわかったといいます。  こうした殺人の仕組みとともに、もうひとつ重要なものが「動機」。人を殺す動機の大きなものは「金」だといいます。多額の保険金や財産など金への執着が優先してしまうと、殺人のほうは完全に人任せにしたりできてしまう。また、取り調べや調書をとるのが面倒なために警察が犯罪集団を殺すというようなケースも。世界を見渡せば、命の価値や正義よりも自分のメリットを優先するという思想がいくらでもあることがわかります。  このように、殺人だけでなくほかにも売春や麻薬、裏社会などさまざまな視点から世界の危険思想をひも解いていく本書。著者は人類の持つ感情の中で最悪に恐ろしい危険思想を「相手を『甘い』と思って『ナメる』こと」だと結論づけています。相手への敬意のなさが原因でもたらされるものがほとんどではあるものの、あくまで一人の脳内で起きていることのため対処する方法は非常に難しいといいます。  そのうえで、「みんながもっと曖昧に生きるのがいいのではないか」と投げかける筆者。昨今の日本には、どんな微罪でも決して許さない風潮や、一度でもしくじったら復帰できないような空気感がありますが、もう少しでよいので曖昧なままの状況を許す心が必要ではないかと続けます。すべてのことに白黒つけたがるというのは、必要悪を許容しないとか曖昧さを排除する方向につながり、世界でいちばん危ない考え方につながりかねないという考え方にはうなずける人も多いのではないでしょうか。世界の事例を見ながらどこか他人ごとのように考えてしまいがちですが、実は平和で安全な日本で暮らす私たちの頭の中にも危険思想の芽はあるのかもしれません。
BOOKSTAND 6/5
日本発のグラフィックノベル「戦隊」書籍化プロジェクト まるで「読む映画」!?
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日本発のヒーロー・コミック・レーベルを立ち上げるべく誕生した謎の組織「シカリオ」と、「鉄コン筋クリート」や「海獣の子供」のアニメーション制作会社「STUDIO4℃」が共同で制作したヒーロー・レーベル第一弾「戦隊」の書籍化を目指すクラウドファンディングのプロジェクトが実施中です。
BOOKSTAND 5/31
肩こりはもんでも治らない? 理学療法士が明かす驚きの解消法とは
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頭痛や眼精疲労をはじめ数々の不調を引き起こす、つらい肩こり。「スマホ首」という言葉が話題になりましたが、日々、スマートフォンが手放せない私たちにとって、首の痛みや肩こりはもはや"新・国民病"といっても過言ではないかもしれません。
BOOKSTAND 5/30
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