一冊の本

8月号学習院大学教授 赤坂憲雄 Akasaka Norio『遠野物語』から105年、いま会津に沸き立つ不思議世界
8月号学習院大学教授 赤坂憲雄 Akasaka Norio『遠野物語』から105年、いま会津に沸き立つ不思議世界
とても愛着の深い本に仕上がったと思う。本の刊行を前にして、こんなに心が浮き立つのは、久し振りのことだ。この本の誕生を待ちわびている人たちが、たくさんいる。会津の女衆が創った、手放しに幸せな本なのである。東日本大震災の前から、奥会津のあちこちを不思議な話を求めて歩きまわった会津学研究会のメンバーたちも、表紙の絵や百枚の挿絵を描いてくれた岩崎亜弥さんも、みな会津に生まれ育ち、いまも暮らす女性たちだ。
著者から 9/15
7月号書評家 大森望 Ohmori Nozomiフォーサイスばりの謀略サスペンス
7月号書評家 大森望 Ohmori Nozomiフォーサイスばりの謀略サスペンス
現代日本を舞台にリアルで派手な謀略サスペンスを書くのはむずかしい。ふつうに書けば、荒唐無稽なB級アクションになるか、ものすごく地味になるか、二つに一つ。曽根圭介の書き下ろし長編『工作名 カサンドラ』は、この困難な課題に正面から挑み、フレデリック・フォーサイスばりの技巧で鮮やかにクリアする。
最初の読者から 7/17
7月号朝日新聞科学医療部記者 行方史郎 Namekata Shiro変わりゆく「天性」への感覚
7月号朝日新聞科学医療部記者 行方史郎 Namekata Shiro変わりゆく「天性」への感覚
米ワシントンで勤務していたころ、ユーチューブで昔懐かしい邦画やテレビ番組を探すという休日夜のひそかな楽しみがあった。
著者から 7/17
7月号東京医科歯科大学大学院名誉教授 藤田紘一郎 Fujita Kouichiro「腸内細菌」と「よい水」が認知症を間違いなく遠ざける
7月号東京医科歯科大学大学院名誉教授 藤田紘一郎 Fujita Kouichiro「腸内細菌」と「よい水」が認知症を間違いなく遠ざける
私の父は、90歳を超えて初めて認知症を発症しました。三重県の片田舎にある結核病院の院長だった父は、最終的に町の老人病院の勤務医となりました。ある日、「医者だか患者だかわからなくなったので、引き取りに来てほしい」と病院から電話が入りました。家族を全く顧みない自分勝手な父でしたが、認知症になったときは、とても穏やかな好々爺となっていました。父が病院に入院した時は、同室の患者さんを指さし、「あの患者の診察をしなければならないから、カルテを持ってきなさい」と看護師さんに指示していました。そんな姿を見ながら、「ああ、親父は認知症になっても生涯現役を貫いているんだな」と密かに感心してしまったものです。
著者から 7/17
6月号NPO法人POSSE代表 今野晴貴 Konno Haruki世代間対立をしている場合ではない
6月号NPO法人POSSE代表 今野晴貴 Konno Haruki世代間対立をしている場合ではない
私は著者である藤田孝典氏とは、2007年から震災復興支援やブラック企業対策などで連携を深めてきた。
最初の読者から 6/2
6月号金沢大学助教 日比野 由利 Hibino Yuri世界の現状を見据えた議論が必要
6月号金沢大学助教 日比野 由利 Hibino Yuri世界の現状を見据えた議論が必要
生殖技術の発展に伴い、子どもが欲しいという人々の願望が、以前にも増して膨張してきている。精子や卵子の提供、代理出産、子どもの男女産み分け、受精卵の遺伝子検査や胎児診断など、次々と新しい技術が開発され、これらの技術を組み合わせれば、あらゆる人が子を持つことができる。生殖サービスの顧客は、不妊カップルだけでなく、独身者や同性愛者にも広がっている。インドやタイなど、安価で法的規制が“緩い”新興国で生殖サービスを利用する動きが加速していくにつれて、様々なトラブルが表面化し、経済振興策として生殖ツーリズムを歓迎していた国も外国人による利用を制限する方向に向かっている。
著者から 6/2
5月号ジャーナリスト 福島 香織 Fukushima Kaori日本の花見文化が思い出させた雪月花を愛でる心
5月号ジャーナリスト 福島 香織 Fukushima Kaori日本の花見文化が思い出させた雪月花を愛でる心
この原稿を書いている今、東京の桜は満開である。千鳥ヶ淵も上野公園も息を呑む美しさで、中国人観光客も大勢訪れていた。知り合いの中国人も、わざわざ桜の開花時期に合わせて日本旅行に来ている。中国にも、桜はたくさんある。それどころか、全世界約150種類の野生種桜のうち中国原産種は50種類以上で、桜の起源は中国だという。日本の桜は、ヒマラヤ山脈あたりの原種が唐代に伝わったものだそうだ。天適集団という中国で初の「桜ビジネス」を展開している企業を以前に取材したとき、そういう話を聞いたし、日本の専門書『桜大鑑』でも桜の原産国は中国とある。なのに、なぜわざわざ日本へ桜を見に?
著者から 6/1
5月号哲学者・山口大学准教授 小川 仁志 Ogawa Hitoshi歴史は繰り返す。ただ、それに抗うチャンスは常に与えられている
5月号哲学者・山口大学准教授 小川 仁志 Ogawa Hitoshi歴史は繰り返す。ただ、それに抗うチャンスは常に与えられている
今多くの知識人やマスコミ、あるいは一般人さえもが、国家主義の強大化を懸念している。現政権が軍事大国へと舵(かじ)を切りつつあることを、誰もが感じ取っているからだ。ところが、不思議なことに大きな反政府運動が起こる気配は感じられない。国民は至って平穏に日常を過ごしているのである。
著者から 6/1
3月号文化庁長官青柳正規 Aoyagi Masanori疲弊した成熟社会を文化が救う
3月号文化庁長官青柳正規 Aoyagi Masanori疲弊した成熟社会を文化が救う
現在の日本では、東京など大都会は多少の活気があるものの、地方の小都市や農村部はたいへん疲弊した状態にあり、地域をどう活性化するかが大きな問題になっています。
著者から 4/9
4月号書評家 大森望 Nozomi Ohmori“嫌韓的”現状を変える“静かでさりげない力”
4月号書評家 大森望 Nozomi Ohmori“嫌韓的”現状を変える“静かでさりげない力”
デビュー作『ハンサラン』で脚光を浴びた新鋭・深沢潮が、ふたたび在日コリアンをテーマに、新作『ひとかどの父へ』を刊行する。
最初の読者から 4/3
4月号装丁家 熊谷 博人 Kumagai Hiroto町人美意識のエッセンス
4月号装丁家 熊谷 博人 Kumagai Hiroto町人美意識のエッセンス
三重県鈴鹿市は江戸時代から現在も「染め型」の本場。内田勲さんは伊勢型彫り師のひとりで「突き彫り」の第一人者である。無骨な手先はザクッ、ザクッと迷うことなくリズミカルに微細な文様を切り込む。型紙は美濃和紙を3枚、柿渋で貼り合わせ、燻(いぶ)しをしてから1年以上乾燥させて渋(しぶ)を枯らす。手間と時間がかかる日本独自の台紙であり、薄い紙なのに耐水性が強く、伸縮せず、丁寧に使えば数千回の染めに耐えられるほど堅牢だ。型彫りの道具、小刀はそれぞれの職人さんたちが自分で作る。型を彫る時は型紙を六枚ほど重ねるので、小刀は専用の小さな砥石でこまめに研ぐ。根気と集中力、まして、高度な技術が必要だ。
著者から 4/3
3月号文芸評論家 菊池仁 Kikuchi Megumi“現代に通底するテーマ”を活写
3月号文芸評論家 菊池仁 Kikuchi Megumi“現代に通底するテーマ”を活写
時代小説が従来のファンはもとより、新しい読者層の支持を受けるためには何が必要か? この重要な課題のひとつが、時代小説だからこそ描ける“現代に通底するテーマ”を内包しているかということである。言葉を変えれば時代を超えた普遍的人間像を刻み、濃密なドラマを展開できるか、ということである。現在、求められているのはそんな作品であることは確かである。
最初の読者から 3/30
この話題を考える
大谷翔平 その先へ

大谷翔平 その先へ

米プロスポーツ史上最高額での契約でロサンゼルス・ドジャースへ入団。米野球界初となるホームラン50本、50盗塁の「50-50」達成。そしてワールドシリーズ優勝。今季まさに頂点を極めた大谷翔平が次に見据えるものは――。AERAとAERAdot.はAERA増刊「大谷翔平2024完全版 ワールドシリーズ頂点への道」[特別報道記録集](11月7日発売)やAERA 2024年11月18日号(11月11日発売)で大谷翔平を特集しています。

大谷翔平2024
アメリカ大統領選挙2024

アメリカ大統領選挙2024

共和党のトランプ前大統領(78)と民主党のハリス副大統領(60)が激突した米大統領選。現地時間11月5日に投開票が行われ、トランプ氏が勝利宣言した。2024年夏の「確トラ」ムードからハリス氏の登場など、これまでの大統領選の動きを振り返り、今後アメリカはどこへゆくのか、日本、世界はどうなっていくのかを特集します。

米大統領選2024
本にひたる

本にひたる

暑かった夏が過ぎ、ようやく涼しくなってきました。木々が色づき深まる秋。本を手にしたくなる季節の到来です。AERA11月11日号は、読書好きの著名人がおすすめする「この秋読みたい本」を一挙に紹介するほか、ノーベル文学賞を受賞した韓国のハン・ガンさんら「海を渡る女性作家たち」を追った記事、本のタイトルをめぐる物語まで“読書の秋#にぴったりな企画が盛りだくさんな1冊です。

自分を創る本
3月号ライター 豊崎由美 Toyozaki Yumi都市への新しい感受性
3月号ライター 豊崎由美 Toyozaki Yumi都市への新しい感受性
IngressというスマホやiPhoneで遊ぶゲームがある。レジスタンス(青)とエンライテンド(緑)の陣営が、街の中に存在するポータルと呼ばれるたくさんの拠点を取り合って陣地を広げる、スタンプラリー要素のある位置情報ゲームだ。ポータルに設定されているのは名所旧跡ばかりではない。ヘンテコな看板、オブジェ、小さな地蔵、駅、ビルなどさまざま。現実の道路地図をもとにした画面に点在するポータルを探して歩いていると、「よく知っていると思っていたところに、こんなものが!」という発見があり、新しい街歩きの楽しさを教えてくれるゲームなのだ。白い道を浮かび上がらせた黒い画面に点在するポータルが、青や緑の炎をボォーッと立ちのぼらせる。その仮想現実上の街と、スマホから目を上げた時に広がる現実の光景が重なる感覚は、Ingressが存在する以前にはなかったものだ。都市ばかりが変容し続けるだけではない。そこにいる人間が都市から感受する何かも変わり続けているのだ。
最初の読者から 3/30
2月号文芸評論家 細谷正充 Hosoya Masamitsu著者の新境地、新人警官の成長物語
2月号文芸評論家 細谷正充 Hosoya Masamitsu著者の新境地、新人警官の成長物語
今野敏の新刊で、主人公は警察官。と書くと、作者お得意の警察小説だと、誰もが思うだろう。しかし、それは間違いだ。本書は新人警官が、さまざまな体験を経て、SAT(特殊急襲部隊)の一員になるまでを描いた、成長小説なのだ。
最初の読者から 2/27
2月号作家・元国連職員 川内有緒 Kawauchi Ario漢方という名の心優しき隣人
2月号作家・元国連職員 川内有緒 Kawauchi Ario漢方という名の心優しき隣人
「人間は考える葦」と言ったのは哲学者だが、「人間の体は皮袋」と言ったのは、漢方薬局の先生である。なるほど、と思わず頷く。柔らかな皮袋に、入れては出す。入れては出す。そのシンプルな反復を、人間は生涯繰り返す。しかし、基本は単純でも、そこに生まれ持った体質やライフスタイル、生活環境や時代の変化といった要素が絡まると、時に皮袋も厄介なことになる。群ようこさんの場合、それは原因不明のめまいという形で現れた。
最初の読者から 2/27
2月号評論家 貴田 庄 Kida Sho志賀直哉と熱海の映画館
2月号評論家 貴田 庄 Kida Sho志賀直哉と熱海の映画館
昨年、「一冊の本」の2月号から12月号まで連載した「志賀直哉、映画に行く エジソンから小津安二郎まで見た男」が、この2月に朝日選書として世に出る。「一冊の本」へは選書の内容の3割ほどの発表であった。執筆に長い時間がかかり、紆余曲折があったが、ともかく出版までたどり着き、筆者として、今、ひと息ついている。
著者から 2/27
1月号日本国際交流センター・シニアフェロー 若宮 啓文 Wakamiya Yoshibumi苦節20年、3度目の正直
1月号日本国際交流センター・シニアフェロー 若宮 啓文 Wakamiya Yoshibumi苦節20年、3度目の正直
このほど朝日選書から『戦後70年 保守のアジア観』を出版した。そこで「一冊の本」への執筆を頼まれたのだが、それには「三冊の本」を語らなければならない。何しろ今度の本はオリジナルの『戦後保守のアジア観』と、その改訂版だった『和解とナショナリズム――新版・戦後保守のアジア観』を踏まえた3度目の作品だからである。
著者から 1/22
1月号ノンフィクション写真作家 常見 藤代 Tsunemi Fujiyo日本人が知らないイスラムの姿
1月号ノンフィクション写真作家 常見 藤代 Tsunemi Fujiyo日本人が知らないイスラムの姿
現地の人の家に呼ばれ、お茶や食事をごちそうになり、そのまま泊まってしまう。イスラムの国々で、そんな勝手気ままで、ずうずうしい旅をかれこれ20年続けてきた。
著者から 1/22
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