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一冊の本

10月号文芸評論家 菊池 仁 Kikuchi Megumi歴史の“場”を借りて、人間の生きる姿勢を描く
10月号文芸評論家 菊池 仁 Kikuchi Megumi歴史の“場”を借りて、人間の生きる姿勢を描く 本書は武士の高潔な生きざまを端正な筆致で刻み込んだ作者のライフワークとも言うべき一編である。作者は三作目の『銀漢の賦』(2007年刊行、松本清張賞受賞)以降、武士の精神のありようを主題として、多くの作品を手がけてきた。本書はそんな作者がさらに精神の高みを極めようと、主人公の人的造形に心血を注いで、この物語を紡いだことをうかがわせる作品に仕上がっている。
10月号美術史家 門脇 むつみ Kadowaki Mutsumi十七世紀画壇のスーパースター
10月号美術史家 門脇 むつみ Kadowaki Mutsumi十七世紀画壇のスーパースター 狩野探幽(かのうたんゆう)(1602~74)は、五代続く画家の名門に生をうけ、徳川家康の御用(ごよう)をつとめ、秀忠以降、家光、家綱の御用(お抱え)絵師となり、後水尾(ごみずのお)天皇をはじめとする宮廷の愛顧を得て、73歳で亡くなるまで精力的な活動を続けた。江戸城や御所の障壁画から画帖(がちょう)の小さな画面まで、瀟洒(しょうしゃ)な山水画、迫真の肖像画、華麗な歌仙絵、可憐な花鳥画など、どんな絵にも巧みであった。生前から圧倒的な名声を誇ったが、死後も大きな影響力をもち続け、狩野派が江戸時代を通じて幕府御用絵師の地位を守り日本の画壇を牽引する基礎をつくった画家として顕彰されてきた。
10月号言語学者 加藤 重広 Kato Shigehiroことのはぞ悩ましき
10月号言語学者 加藤 重広 Kato Shigehiroことのはぞ悩ましき 言語学を専門にしていると言うと、ときに思いもしない質問を受けることがある。「不良をツッパリというのは相撲用語から来たのですか」「踏切(ふみきり)は通るときエイヤと踏み切るからですか」「consent(コンセント)は同意するという意味の動詞なのに、なんで電源の差込口を言うんですか」など、その多くは語源に関わるものである。たいていはその場でなんとか答えられるが、それでも詳しく調べないと断定できないことが多く、中には全くの難問でお手上げということもある。
9月号文芸評論家 細谷正充 Hosoya Masamitsu「キマイラ」の世界に遊べ
9月号文芸評論家 細谷正充 Hosoya Masamitsu「キマイラ」の世界に遊べ 夢枕獏のライフワークである「キマイラ・吼」シリーズの最新作が、遂に刊行された。前作『キマイラ9』の出版が、2010年8月なので、実に4年ぶりになる。だがまあ、作者のファンにとっては、それほど待ったという思いはない。シリーズ第1弾『幻獣少年キマイラ』が、今は無き朝日ソノラマ文庫から出たのが、1982年のこと。すでに30余年以上にわたり、読み続けているのだ。とっくの昔に、いつまでも待つ覚悟は出来ている。だから4年程度、どうということもない。

この人と一緒に考える

9月号株式会社インスパイア取締役ファウンダー 成毛 眞 Naruke Makotoめまぐるしい変化を先読みする目
9月号株式会社インスパイア取締役ファウンダー 成毛 眞 Naruke Makotoめまぐるしい変化を先読みする目 2011年あたりを境にして、日本だけではなく世界中が驚くべきスピードで変化しはじめた。あまりに多くの地域と分野が同時に変化しつつあるため、それぞれの変化の激烈さにも慣れてしまい、感覚が鈍化しはじめているようだ。個人も国家も思慮に欠け、予測が立っていないような手荒なことを、いとも簡単に行ってしまうことが普通になりつつあるような気がするのだ。
8月号茨城大学教授・マヤ考古学者 青山和夫 Aoyama Kazuo「真の世界史」から学ぶ
8月号茨城大学教授・マヤ考古学者 青山和夫 Aoyama Kazuo「真の世界史」から学ぶ 私たちが、中学・高校で学んだ世界史は、「真の世界史」では決してない。それは、西洋史が西ヨーロッパの列強とアメリカ合衆国、東洋史が中国を中心とする「偏った世界史」である。世界はいわゆる旧大陸の「四大文明」だけではなかった。メソアメリカとアンデスという、コロンブス以前のアメリカ大陸の二大文明を十分に語ることなくしては、世界史を正しく再構成できない。なぜならば古代アメリカの二大文明は、旧大陸と交流することなく、「四大文明」と同様に、もともと何もないところから独自に生まれた文明、つまり一次文明を独自に形成したからである。

特集special feature

    6月号朝日新聞特別編集委員 星浩 Hoshi Hiroshi最高権力者にどう仕えるか
    6月号朝日新聞特別編集委員 星浩 Hoshi Hiroshi最高権力者にどう仕えるか 政治記者の取材対象として面白いポストは、自民党幹事長と内閣官房長官だと思う。朝日新聞を含め新聞社の政治部だと、駆け出しの1年ほどは「総理番」と呼ばれる首相の追っかけ取材をする。その後、野党や役所に配属され、さらに政権与党や首相官邸の官房長官などを担当する。この数年間は、夜討ち朝駆けの毎日。体力がものを言う。
    6月号英文学者・文芸評論家 阿部公彦 Abe Masahiko教室で体感する小説的世界
    6月号英文学者・文芸評論家 阿部公彦 Abe Masahiko教室で体感する小説的世界 大学の教室で文学作品を扱うのには困難が伴う。とりわけ小説は難しい。大学という場の性質上、どうしても“解釈”や“議論”を看板にかかげたくなるが、そもそも小説とは「俗」に発するもの。それなのに日常生活の中でほとんど小説など読まない今の若者に対して、小説作品についての精妙な解釈を開陳したり、複雑な議論を熱っぽく展開して何の意味があるのか。
    5月号帝京大学医学部外科准教授 新見正則 Niimi Masanori進歩し続けているからこそ不確実な医療
    5月号帝京大学医学部外科准教授 新見正則 Niimi Masanori進歩し続けているからこそ不確実な医療 2014年4月5日付の朝日新聞に「『健康』基準、緩めます 血圧・肥満度など、学会見直し」という記事が掲載された。11年に人間ドックを受けた約150万人のうち、「たばこを吸わず、持病がない」などの条件を満たす約34万人の「健康な人」から5万人を抽出して27検査項目を調べたものだそうだ。
    5月号甲南大学教授 田中貴子 Tanaka Takako青い鳥を探して
    5月号甲南大学教授 田中貴子 Tanaka Takako青い鳥を探して ふた昔、いや、ひと昔前でも、オジサンと呼ばれる年代の男性が通勤電車で開く本は時代小説が多かった。それも、剣豪小説と呼ばれる男性作家のものばかり。しかし現在、時代小説はもう「男の聖域」を離れ、世代や性別を問わず広い読者層に親しまれるようになった。その功績者は、女性の時代小説作家だと言ってよいだろう。忠義と剣に生きる「おさむらい」に、お色気悪女か純情おぼこといったステレオタイプな女が絡む小説を喜ぶ読者ばかりではない(ドラマの「水戸黄門」に由美かおるの入浴シーンが1回はあるようなヤツですね)。女性時代作家の特色は、今まであまり描かれることのなかった職業や境遇の人々を細やかに語る点である。本書の著者もその一人だ。

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