一冊の本

4月号ジャーナリスト 斎藤貴男 Saito Takao「ジャーナリズム」の出番
4月号ジャーナリスト 斎藤貴男 Saito Takao「ジャーナリズム」の出番
今日もテレビで安倍晋三首相が誇らしげな笑みを湛えている。国会中継でも定時のニュースでも自信満々、「強い日本」を掲げては集団的自衛権の行使容認や武器輸出三原則の緩和、憲法解釈の大幅な変更等々を謳い上げ、「積極的平和主義」なるキャッチコピーまで生み出した。
著者から 4/22
4月号東京大学名誉教授・内科医 大井玄 Ohi Gen治せぬ医療の難しさ
4月号東京大学名誉教授・内科医 大井玄 Ohi Gen治せぬ医療の難しさ
若い頃、医療の力に魅せられたことがあった。亡国病といわれた結核をはじめとして感染症が次々に治るようになり、小児白血病の多くは治り、尿毒症といわれ致死的な腎不全が人工透析を受ければ何年も延命できるようになった時代である。
著者から 4/14
4月号書評家 大矢博子 Oya Hiroko読者を抉る企み
4月号書評家 大矢博子 Oya Hiroko読者を抉る企み
10の物語があり、10人の主人公がいる。
最初の読者から 4/14
3月号女優 本上まなみ Honjo Manami朝も昼も夜もごはんのことばかり
3月号女優 本上まなみ Honjo Manami朝も昼も夜もごはんのことばかり
「今日は何を食べようか?」  家族でするこの相談ほど、のんきで幸せなものはありません。穏やかに全員揃って食卓を囲めることのありがたさをしみじみ感じます。  朝ごはんの時にお昼の、お昼には夜の献立を考えるのが私の常です。買いものに行って、いいお刺身のサクを見つけると(半分は昆布じめにしておこう)とか、特売の鶏のささみがあったら(一部は蒸しておいて明日サラダにでもしよう)とか、もちろん外に出て食べるのも、あれこれ思案するのが楽しみ、大げさに言うと生きがいなのです。朝も昼も夜もごはんのことばかり考えているわけで、ちょっとメンボクない。  なんとまあこれで7冊目となるエッセイ集は、初めての食べものしばりで、基調は「今日は何を食べようか」、つまりはいつも以上にたいへんのんきな本となる模様です。重ねてメンボクない。  思えば小さいころから台所に立つのが好きでした。田舎へ行けば、祖母の脇にいて大きなすり鉢でゴマをあたるのを率先して手伝ったものです。祖母がすり鉢に残った甘く香ばしいゴマ和えの和え衣をごはんにちょんちょんとまぶし、ぎゅっと片手で握って「まなたん、ほら」と口に入れてくれるのが嬉しくて、ツバメのヒナみたいにぱかっと口を開けて待っていたのを思い出します。10歳くらいからは家でも一品任されたりして、いつも張り切ってサラダやおひたしを作っていたっけ。  食にまつわる本は早くからうっとり読んでいました。小学生時代からの座右の料理書は、今はなき雑誌『婦人倶楽部』の付録「おばあちゃんの台所知恵事典」。昭和57年4月発行のもので、裏表紙はイチジク浣腸の広告です。付録なので安手の佇まいなれど、この冊子あなどるなかれ、約800の役立ちアイデアが満載の豪華本なのです。  たとえば《火なしコンロの活用を》というのがあって、熱い鍋ややかんをふた付き木箱に入れ、間に布などを詰めて保温しながら余熱で調理すると燃料節約になるというもの。《燃料の不足した戦中、戦後の知恵》だが、《昨今のジャーにも匹敵》とか。ほかにも《パンの耳の利用法》《チャーハンのしょうゆは鍋の縁から入れる》《雑煮の味は、元旦は夫方、2日は妻方の味で作る》。バナナをナイフとフォークで上品に食べる、なんて現代ではたぶん見かけない、胸がきゅんとするような図解もある。ページを開けば、それらにいちいち「へえ!」と感心していた地味な小学生の私が甦ってきます。文字通り私の「おばあちゃんの台所」の匂いが立ちのぼってくる。  今私の隣にいるのは7歳の娘。あのころの私と同じようにこの“現場”をうろうろ、義母の丹精した大根、千切りにしたのをつまんでみたり、おだしに味噌を溶いたり、おやつの白玉だんごを丸めたり、恐る恐る魚の口を開けて歯を触ったりしている。やっぱり食べること、食材いじりが好きなのです。「何食べてるの?」誰かが口をもぐもぐさせていると思わず聞いてしまうのも娘は受け継いでいて、夫からは「遺伝子ってすごいなあ」と呆れられる始末。  この娘は常に興味津々で私の手元をのぞき込んでくるので、私は直ちに(かなりいばって)指南を始めます。包丁を握ったら左手は猫の手みたいに円くし食材を押さえて切ること。青菜をゆがいたら冷水にとること。魚は頭を左にしてお皿に載せること。手綱こんにゃくの作り方。茹で玉子を糸で飾り切りにすること。料理の盛りつけは中高(なかだか)にこんもりと盛ること。お味噌汁をぐつぐつ煮ないこと。時には一緒に手を動かし、時には横で見守りながら、気づけばまさにあの付録冊子のような数々の教えを説いているのでした。もちろん本以上に教わってきた祖母や母、叔母たちからのごはん作りの技。それを娘や今はまだ足元でころころしている1歳の息子に伝えていくことがこれからの私の喜びであり、使命だとさえ思っています。  たった数年で2人の暮らしが4人になったように、家族というものはとても移ろいやすいカタチです。減ったり増えたり。ただそれが何人でも、中心にあるのはやっぱり食卓だと思う。それを囲む夫や子どもたち、時には両親や友人たちもまじえて、「おいしいね」「おいしいよ」「今日は何食べようか?」と普通に言い合える日々が、普通に続くことを願います。
著者から 3/14
3月号医師 日野原重明 Hinohara Shigeaki102歳、はじめての絵本で伝えたかったこと
3月号医師 日野原重明 Hinohara Shigeaki102歳、はじめての絵本で伝えたかったこと
このたび、私がはじめて書いた絵本「だいすきなおばあちゃん」が刊行されることになりました。  きっかけは2年前です。私は毎年、新年を迎えるごとに新しいことをはじめる習慣を実行しているのですが、100歳のお正月に、今年は絵本を書こうと思いたちました。  かねてから考えていた、「子どもと死」「自宅でできる看取り」というテーマを絵本にして、子どもたちはもちろん、幅広い世代の方にも語りかけたいと思ったのです。  核家族化が進んでいる現代の日本社会ですが、私の子どものころは3世代が一緒に暮らすのは当たり前のことでした。私は今でも、子どもたちがおじいちゃんおばあちゃんと共に暮らすことの重要性を感じています。父親や母親は、仕事や、食事作り、そのほか生活上のいろいろなことで毎日忙しく、子どもとじっくり向き合う時間をとることは現実にはなかなか難しいものです。もし、家庭におばあちゃんが同居しておれば、おばあちゃんから箸の持ちかたやお魚の食べかたなどの生活上必要な作法を教えてもらえるだけでなく、昔からの手遊びやお話などもしてもらえるでしょう。おばあちゃんは、子どもたちの話を「うんうん」と聞いてくれることでしょう。忙しい両親には行き届かない部分を、おばあちゃんは上手にカバーしてくれるはずです。  私も子どものころ、毎晩夕食が済むと床に寝そべって、おじいちゃんやおばあちゃんから、いろいろな話をしてもらったのを懐かしく思い出します。たとえば5本の手の指は何のためにあるのか。指にはそれぞれ名前がついています。それをおばあちゃんは、孫たちに分かりやすく説明してくれます。それを聞いた孫たちは、あぁそうかと納得します。こうしておばあちゃんとお話ししながら教えてもらったことは、単なる知識ではなく、楽しい記憶として子どもの心にずっと残ってゆくでしょう。
著者から 3/14
2月号作家 堂場瞬一 Doba Shunichi「家族小説」への挑戦
2月号作家 堂場瞬一 Doba Shunichi「家族小説」への挑戦
初めての週刊誌連載だった。
著者から 2/27
2月号ノンフィクション作家 森功 Mori Isao新聞記者と敏腕捜査員の神経戦の面白さ
2月号ノンフィクション作家 森功 Mori Isao新聞記者と敏腕捜査員の神経戦の面白さ
警察の事件捜査をモチーフにした小説は、場面場面のきめ細かい描写が生命線ではないだろうか。本書『連写 TOKAGE(トカゲ)3――特殊遊撃捜査隊』を一読すると、ことのほかそう感じる。タイトルの「連写」は物語における重要なキーワードに位置付けられている。一方、捜査で描かれるそれぞれの情景が、題名どおり読む側の瞼に次々と活写され、つい引き込まれていく。本書は、まさに警察小説の傑作『TOKAGE』シリーズの第3弾である。
最初の読者から 2/27
2月号建築史家 山岸常人 Yamagishi Tsuneto根来寺史を通じて中世社会を理解する
2月号建築史家 山岸常人 Yamagishi Tsuneto根来寺史を通じて中世社会を理解する
日本の中世社会において、宗教が担っていた社会的役割の重さは、現代に生きる我々には想像しがたいものがある。1960年代に中世史家黒田俊雄が唱えた権門体制論以降、中世の国家は公家・武家・寺社の諸勢力が相互補完しつつ、分担することによって成り立っていたと理解されるようになった。このように3本の鼎の足の一つとしての宗教界を位置付けると、その重要性は明確になる。
最初の読者から 2/27
1月号朝日新聞記者 山田佳奈 Yamada Kanaこれから何かあるたびに、私はページを開く
1月号朝日新聞記者 山田佳奈 Yamada Kanaこれから何かあるたびに、私はページを開く
天野さんだったら何て言うだろう。
最初の読者から 1/6
1月号ライター・編集者 速水健朗 Hayamizu Kenro食で読み解く政治思想
1月号ライター・編集者 速水健朗 Hayamizu Kenro食で読み解く政治思想
政治について語ることとはどういうことか。党の分裂がどうの、不正資金がどうの、小沢が――猪瀬が――江田が――という些末な雑事を考えることではなく、これから何を食べるのかを考えることのほうが、よっぽど政治について考えることになるのではないか。それが、この本のスタート地点です。
著者から 1/6
12月号朝日新聞記者 牧村健一郎 Makimura Kenichiro世界的なスケールの一匹狼
12月号朝日新聞記者 牧村健一郎 Makimura Kenichiro世界的なスケールの一匹狼
高碕達之助という男に興味を持ったのは、4、5年前、「朝日新聞」夕刊の連載「検証・昭和報道」のチームに入って、昭和史を学び直していたときだった。
著者から 12/9
12月号編集者・書評家 松田哲夫 Mtsuda Tetsuo恋するがごとくに
12月号編集者・書評家 松田哲夫 Mtsuda Tetsuo恋するがごとくに
この本の魅力は、まずその語り口のおもしろさにある。それは「話芸」といった格式張ったものではなく、「話術」といった実務的なものでもない。自然体で融通無碍に、話すことを純粋に楽しんでいる。だから、ぼくたち聞き手には、音楽のように心地良い。造語してみれば「話楽」とでもいったところか。
最初の読者から 12/9
この話題を考える
医師676人のリアル

医師676人のリアル

すべては命を救うため──。朝から翌日夕方まで、36時間の連続勤務もざらだった医師たち。2024年4月から「働き方改革」が始まり、原則、時間外・休日の労働時間は年間960時間に制限された。いま、医療現場で何が起こっているのか。医師×AIは最強の切り札になるのか。患者とのギャップは解消されるのか。医師676人に対して行ったアンケートから読み解きます。

あの日を忘れない

あの日を忘れない

どんな人にも「忘れられない1日」がある。それはどんな著名な芸能人でも変わらない。人との出会い、別れ、挫折、後悔、歓喜…AERA dot.だけに語ってくれた珠玉のエピソード。

インタビュー
国際女性デー

国際女性デー

3月8日は国際女性デー。AERA dot. はこの日に合わせて女性を取り巻く現状や課題をレポート。読者とともに「自分らしい生き方、働き方、子育て」について考えます。

国際女性デー
12月号文芸評論家 菊池仁 Kikuchi Megumi奇想天外な着想と、波瀾万丈の物語を予感させる
12月号文芸評論家 菊池仁 Kikuchi Megumi奇想天外な着想と、波瀾万丈の物語を予感させる
本書は時代小説の新しい書き手の登龍門として、年々評価を高めつつある朝日時代小説大賞第五回受賞作である。
最初の読者から 12/9
11月号文芸評論家 野崎六助 Nozaki Rokusuke-東西文明の衝突と明治冒険譚-
11月号文芸評論家 野崎六助 Nozaki Rokusuke-東西文明の衝突と明治冒険譚-
明治が遠くなるにつれ、時代小説の鉱脈としての価値も高まってくるようだ。本書の主人公たるイザベラ・バードと伊藤鶴吉の冒険コンビも、その有力な素材にちがいない。明治11年、イギリスの旅行家バードは47歳で日本の地に渡り、20歳の通訳伊藤を従えて、東北から北海道を縦断するハードな旅程を敢行した。その旅行記『日本奥地紀行』は、数種の翻訳によって、長く読み継がれている。
最初の読者から 11/7
11月号書評家 土屋敦 Tsuchiya Atsushi-小説だからこそ書けた「がん」という病-
11月号書評家 土屋敦 Tsuchiya Atsushi-小説だからこそ書けた「がん」という病-
「残念ですが、もうこれ以上、治療の余地はありません」
最初の読者から 11/7
11月号文芸評論家 西上心太 Nishigami Shinta-《逆風》の時代にふさわしい物語-
11月号文芸評論家 西上心太 Nishigami Shinta-《逆風》の時代にふさわしい物語-
順風満帆の時ではなく、逆風にさらされた時にこそ人間の真価は発揮される。流れに棹さすことは容易だが、逆境に抗い立ち向かうことには肉体的にも精神的にも大きなパワーが必要となる。仁志耕一郎は、《逆風》の男たちを好んで描く作家なのではないだろうか。
最初の読者から 11/7
11月号哲学者 國分功一郎 Kokubun Koichiro-哲学は人生論でなければならない-
11月号哲学者 國分功一郎 Kokubun Koichiro-哲学は人生論でなければならない-
今度、人生相談の本を出版することになった。2012年9月から2013年5月まで、宇野常寛さんが編集されている週刊のメールマガジン「メルマガ・プラネッツ」で連載していたものをまとめた本である。
著者から 11/7
11月号朝日新聞瀋陽支局長 石田耕一郎 Ishida Koichiro-証言と事実で伝える等身大の中国共産党-
11月号朝日新聞瀋陽支局長 石田耕一郎 Ishida Koichiro-証言と事実で伝える等身大の中国共産党-
携帯電話から聞こえた声からは、柔らかな口調の中に、困惑や怒り、懇願が感じられた。中国共産党をテーマにした朝日新聞の長期連載「紅(くれない)の党」最終編の開始を2日後に控えた6月21日、中国東北地方の政府職員から私にかかってきた電話だ。
著者から 11/7
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