3月号医師 日野原重明 Hinohara Shigeaki102歳、はじめての絵本で伝えたかったこと
このたび、私がはじめて書いた絵本「だいすきなおばあちゃん」が刊行されることになりました。 きっかけは2年前です。私は毎年、新年を迎えるごとに新しいことをはじめる習慣を実行しているのですが、100歳のお正月に、今年は絵本を書こうと思いたちました。 かねてから考えていた、「子どもと死」「自宅でできる看取り」というテーマを絵本にして、子どもたちはもちろん、幅広い世代の方にも語りかけたいと思ったのです。 核家族化が進んでいる現代の日本社会ですが、私の子どものころは3世代が一緒に暮らすのは当たり前のことでした。私は今でも、子どもたちがおじいちゃんおばあちゃんと共に暮らすことの重要性を感じています。父親や母親は、仕事や、食事作り、そのほか生活上のいろいろなことで毎日忙しく、子どもとじっくり向き合う時間をとることは現実にはなかなか難しいものです。もし、家庭におばあちゃんが同居しておれば、おばあちゃんから箸の持ちかたやお魚の食べかたなどの生活上必要な作法を教えてもらえるだけでなく、昔からの手遊びやお話などもしてもらえるでしょう。おばあちゃんは、子どもたちの話を「うんうん」と聞いてくれることでしょう。忙しい両親には行き届かない部分を、おばあちゃんは上手にカバーしてくれるはずです。 私も子どものころ、毎晩夕食が済むと床に寝そべって、おじいちゃんやおばあちゃんから、いろいろな話をしてもらったのを懐かしく思い出します。たとえば5本の手の指は何のためにあるのか。指にはそれぞれ名前がついています。それをおばあちゃんは、孫たちに分かりやすく説明してくれます。それを聞いた孫たちは、あぁそうかと納得します。こうしておばあちゃんとお話ししながら教えてもらったことは、単なる知識ではなく、楽しい記憶として子どもの心にずっと残ってゆくでしょう。
著者から
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