●沖縄で露呈する地方自治の無視

 次に11月17日には、異例の事態が発生した。米軍普天間基地の名護市辺野古への移設計画をめぐって、国が沖縄県を相手に裁判に踏み切ったのだ。この背景には「外交と防衛にかかわる問題は、われわれの専管事項だ」という政府の考え方がある。だが忘れてならないのは、それが成立している現状は、国民が外交や安全保障の分野を国に委ねた結果だということだ。つまり主体=主役はあくまでも国民であり、国は権限を委ねられて、その分野の政治を担当しているに過ぎないのだ。にもかかわらず政府は「このままでは普天間飛行場の危険を除去できず、日米の信頼関係にも亀裂が入る」と提訴した。地方自治の無視である。各局、これをどう扱うか。ニュースの伝え方が注目された。

 結論からいえば驚いたことに、この異常事態をトップ項目で扱ったのは、「報道ステーション」だけだった。「NEWS ZERO」にいたっては、20秒の扱いで、編集者のセンスに呆れ果てた。

 だがそれでも各局の夜のニュースを順に見ていくと、耳に残る発言は少なくなかった。例えば「政治の場で解決できないことが、司法の場で解決できることは普通あり得ない」(ニュースウオッチ9)、「安倍政権のやり方はかつての琉球処分と重なって見える」(報道ステーション)、「国は著しく公益を害することを理由にあげるが、アメリカとの協議で、別の道を探す余地はないのか」(NEWS23)などである。

 なおこの問題は、第1回口頭弁論が行われた12月2日にも再度ニュースで扱われ、「報道ステーション」と「NEWS23」は沖縄県の翁長雄志知事と直接結び、沖縄の思いをしっかり伝えた。また「NEWS23」の岸井成格キャスターは、「沖縄の魂」と「沖縄の飢餓感」をキーワードに語ったうえで、「政府与党は沖縄の心としっかり向き合う必要がある」と注文した。

 この2社に比べて見劣りしたのはNHKだ。「ニュース7」は翌日地球に最接近する「はやぶさ2」に焦点をおき、「ニュースウオッチ9」は人間の代わりに仕事をするロボットにポイントをおいて、重い事件よりも面白い事象を伝えようとする編集ぶりを見せていた。最悪はこれを30秒で片づけた「あしたのニュース」(フジテレビ)だ。この裁判の本質は、沖縄が戦争で本土の捨て石にされたのと同じ構図だ。そう考えればこんな扱いはできないはずだが、政府のすることには逆らわないということか。

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