●ダブル選は在阪局が健闘も工夫がいまひとつ

 最後に11月22日に大阪で行われた大阪府、大阪市のダブル選挙報道にも一言触れる。

 告示前から選挙戦にかけて、在阪局は全力をあげているのが見てとれた。なかでも目についたのは、知事選、市長選の候補者をスタジオに呼んで開いた討論会だ。だが各候補、都構想の問題を除くと似たりよったりの主張の持ち主だ。投票行動の参考に供すつもりであれば、もっと工夫した変化球を投げ、それぞれの候補の内面や人柄に迫ることもできたはずだ。もう少し知恵をしぼってほしかった。

 また投票日にはNHKは長時間の「開票速報」を編成し、民放各局は夜の深い時間帯で「選挙特番」に取り組んだ。だが「開票速報」は冒頭で「維新圧勝」を打ったため山場が作れず、退屈な内容に終始した。街の声のインタビューで同じ人物が3度も登場したのも興をそいだ。さらに致命的だったのは、番組の主軸になった松井一郎知事と吉村洋文新市長の話が魅力に欠けたことだ。すり減ったカセットテープを何度も聞く感じで辟易した。それに比べて民放各局の「選挙特番」は、何が勝負を分けたかと選挙後の大阪をコンパクトにまとめていて、見応えがあり評価できた。

●つじ・いちろう ジャーナリスト。元毎日放送取締役報道局長、大手前大学教授など。「対話1972」「20世紀の映像」でギャラクシー賞、「若い広場」「70年への対話」で民間放送連盟賞などを受賞。著書に『私だけの放送史』など。