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●発表ものなのにミスの報ステ 放送法に誰も触れない謎

 2015年11月6日、放送倫理・番組向上機構(BPO)は、NHKの「クローズアップ現代」など、2つの番組のやらせ疑惑に関する意見書をまとめて発表した。

 このなかでBPOは、NHKの番組には重大な放送倫理違反があったとする一方で、この番組をめぐる総務大臣の厳重注意や、自民党が行ったNHK幹部への事情聴取は、「放送の自由とこれを支える自律に対する政権党による圧力」であり「激しく非難されるべき」だとした。また政府が厳重注意の根拠を放送法に求めているのは、法解釈の誤りだと指摘した。

 この意見書を扱ったニュースのなかで最悪だったのはテレビ朝日の「スーパーJチャンネル」と「報道ステーション」だ。いずれも意見書の前段、NHK批判の部分だけを取り上げ、後段の政府与党への批判には触れなかった。なぜなのか。発表もののニュースで、ここまでのミスは珍しい。おそらくこれは局内でも問題になったのだろう。3日後の11月9日、「報道ステーション」は菅義偉官房長官が意見書に反論した機会をとらえ、政府批判の部分を短く伝えた。だが古舘伊知郎キャスターの結びのコメントは歯切れが悪く、もの足りなかった。言いたいことはわからぬでもないが、思いはもっと単刀直入に述べてほしい。

 BPOはこの意見書で放送法の解釈にも触れ、放送法第1条第2号でいう「不偏不党」は、放送局や番組担当者に課せられた義務ではなく、政府が放送に介入することを防ぐためのものだとした。つまり「不偏不党」が求められるのは、放送局の側でなく公権力の側だとし、さらに第4条第1項にある「政治的公平」などは、放送局が自らを律するための倫理規定であり、憲法21条との関係からも、法規範ではないとした。

 BPOは親切にもここまで踏み込んで放送法の解説をしてくれた。にもかかわらずこの会見を最も丁寧に伝えた日本テレビの「news every.」や「NEWS ZERO」も、またこの種のニュースに日頃敏感な「NEWS23」(TBSテレビ)もこれに触れなかった。なぜなのか。

 いま放送法は誤って使われることが多いだけに、これを材料に「放送の自由」を語り、自らの立ち位置をアピールする絶好の機会にしてほしかった。それをあえて避けたのは、政府与党の反応をおそれたのか。それとも別の理由なのか。合点がいかなかった。

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