朝ドラって見てますか?

『まれ』は支離滅裂。『とと姉ちゃん』は退屈。『あさが来た』は悪くなかったけど『べっぴんさん』は学芸会。以上が最近の朝ドラに対する私の大まかな感想だけど、この本はどうだろう。

 木俣冬『みんなの朝ドラ』。NHKの連続テレビ小説、通称朝ドラがどんな形で時代を映してきたかを2010年代の作品を中心に考察した本だ。個別の作品論に拘泥しすぎたせいか、全体に散漫で分析も評価も甘い印象は否めないけど、頷かせる指摘もある。

 史実を曲げても夫に妾を持たさず、女性に尽くす男性ばかりを登場させた『あさが来た』は〈歴史のなかで男に人生の選択権を握られていた女たちへの、鎮魂の物語〉。結婚より仕事を選んだ『とと姉ちゃん』の常子は〈生涯未婚率が上がっていると言われる現代社会のロールモデル〉。「朝ドラ史上最高傑作」と評される『カーネーション』で〈朝の15分間を時計代わりに消費するドラマから、じっくり観て語るドラマへと変わる下地が醸成された〉。

 低迷していた朝ドラの視聴率が回復に転じたのは『ゲゲゲの女房』(10年)からだった。放送開始時間が8時15分から8時ちょうどに変更されたこと、さらにSNSの普及で、専業主婦が家事の合間に見る番組から〈感想をみんなで分かち合う時代となった〉ことが大きいと著者はいう。

 放送中の『ひよっこ』の脚本を担当する岡田惠和の発言がおもしろい。昭和の復興期や高度成長期というと〈ノスタルジックに、あの頃はよかった、人が温かかった、みたいな世界が好まれるけれど、僕は昭和をそういうふうにはまったく思っていないんです〉。

 朝ドラはしかし、後半になってグズグズになるケースが少なくない。『ひよっこ』もここまでは快調だけど、向島電機が倒産、みね子が「すずふり亭」に再就職したあたりから『ちゅらさん』ぽくなり、やや不安の影が……。そんなことが気になるのも〈もはや朝ドラは、古典芸能のひとつと言っていい〉からなんでしょうけどね。

週刊朝日  2017年6月23日号