テレビ番組の取材を通じて、地球のふしぎを体験してきた旅人の初めての紀行エッセイ。その場所の名前を聞いたり、写真で見たりしたことはあっても、実際に行くのが難しい「絶景・秘境」の旅20編がまとめられている。
 子どもの頃の「雲に乗りたい」「空を歩きたい」という願いをかなえるため、オーストラリアでは、巨大なロール状の雲の帯「モーニンググローリー」の上をモーターグライダーで飛ぶ。塩の大地に雨がたまり、水面が鏡のような状態になるボリビアの「ウユニ塩湖」では、水面に立ち、空を歩くような気分で青と白の世界を体感する。さらに南極では砕氷船の上で年越しを体験し、元日に南極大陸に初上陸。興奮のあまり、つまずいて転んでしまう。
 夢がかなった喜びと、想像を超える絶景に「私もこの惑星の一部なんだ」と著者は感動する。
「自分たちの住んでいる地球はこんなにも素敵なんだ」(「おわりに」から)。世界各地で様々な人に出会い、触れ合うなかで成長していく著者の言葉に引き込まれる。元気をもらえる一冊である。

週刊朝日 2016年4月15日号