OLが誕生したのは約100年前のことだ。第一次世界大戦の総力戦がきっかけとなり、「台所から、街頭へ!」を合言葉に、オフィスで知的労働をする「職業婦人」が大挙して都市に出現した。彼女らはどう働き、何に悩んだのか。表象文化論などが専門の大学教授が、当時の雑誌記事や図版から、その実像を読み解いていく。
 本書は小説仕立てになっていて、若手の商社マンが主人公。彼の早朝から退社までの一日を追い、そこで出会うお局様や腰掛け、独立志向の才媛ら職業婦人たちの悩みや仕事ぶり、職場環境を詳細にあぶりだす。
 その描写を通じて、黎明期のOLも現代のOLと同様の悩みを抱えていたことがわかる。男女間の賃金格差に怒り、「職場の華」としてのプレッシャーに遭い、旧来の家族観を壊す脅威として叩かれることもあった。
 それでも本書に引用された雑誌記事や投書からは、誇りを持って働く女性たちの姿が浮かび上がってくる。男性中心社会の中で、苦難の道を切り開いていった先人の姿に励まされる。

週刊朝日 2014年8月22日号