
写り込み、夕景の撮影、花のピント合わせ、白飛び……鉄道情報サイト「鉄道コム」で募集した鉄道撮影の悩みや疑問の数々に、櫻井寛と助川康史の二人の人気鉄道写真家がガチンコで答えます! 初歩的な質問が多いなどと侮るなかれ。実は奥深いテクニックが満載なのだ。「アサヒカメラ」2月号から鉄道写真対談をお届けする。
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■Q 一般人の写り込みの処理方法を教えてください(栃木県・墜落さん)
櫻井:一般人はいてあたりまえなんだから何とも思わないですね。
助川:それを生かした写真を撮ればいいんです。
櫻井:そう。お客さんのシルエットを生かすとか。旅客あっての電車ですから。
助川:究極的には、撮影後のデジタル処理で無き者にするという方法もあります(笑)
■Q 先に到着した撮影者が目の前でウロウロした場合、注意したほうがいいですか?(次世代撮り鉄さん)
助川:そこは「どういうふうに撮られますか?」とたずねます。構図などを聞いてそれに合わせて対処します。聞かれた相手も「撮り方を決めなくちゃ」と思うでしょう?
櫻井:僕はこちらの撮り方を細かく伝えます。僕が先にポジションを取った際には必ず伝えます。
助川:ウロウロしている撮影者って、だいたい撮り方に悩んでいる人ですよね。
櫻井:たまにコミュニケーションができない人がいますけどね。
助川:その場合もデジタル処理で無き者にします(笑)。後で消せると思えば、トラブルにもならないじゃないですか。
櫻井:どんなことでも注意されると嫌なもんですからね。
助川:大切なのは自己中心的にならないこと。
櫻井:「みんなの電車」です。
助川:また名言が(笑)。ホント、「俺の電車」にならないよう要注意です。
■Q 息子が電車にハマり、一緒に巡って鉄道撮影していますが、車両の前で記念写真を撮っていると、「邪魔だ」「どけ」などと言われることがあります。どうしたらいいでしょうか?(東京都・撮り鉄のママさん)
櫻井:「みんなの電車じゃないんですか?」と言ってやればいいんですよ。
助川:そのとおり。撮り鉄は記念列車や電車のラストランを駅のホームで撮らないほうがいいと思いますよ。混乱だけでいい写真はまず撮れないですし、一般客の迷惑になる可能性もありますからね。
櫻井:はたしてどれだけの人がちゃんと切符を買っているんだろう? お金は落とさないといけないと思いますよ。
助川:いい写真を撮りたいなら駅のホームじゃなく、外で撮るほうがいいと思いますね。
櫻井:質問者はiPhoneで撮っているんですね。子どもの記念写真だ。
助川:撮り鉄側には寛大な気持ちを持って欲しいですね。昔、JR品川駅のホームでお召し列車牽引機のEF5861とお座敷列車を展示するイベントがありました。子どもがEF5861の前で記念写真を撮ろうとしたら、おじさんが「どけよ!」と大声をあげた。つい自分もおじさんに怒りました。「いいじゃないですか! 子どもがどういう気持ちになるか考えたことがありますか!」と。おじさんは逃げちゃいましたけど、撮影に夢中になると周囲が見えなくなるんでしょうね。ここは親子に写真を撮らせてあげて当然。何なら記念に親子の写真を撮ってあげるぐらいの余裕が欲しい。むしろ親子の姿と車両がうまくハマれば、コンテストでの受賞だってありえますよ。
櫻井:そうそう。いい絵になると思いますよ。