東京新聞の望月衣塑子記者(写真=本人提供)
東京新聞の望月衣塑子記者(写真=本人提供)

 そうやって冷静になりつつある米中関係と照らしあわせると、国民の生活のことよりも軍拡に走る日本の姿勢は、浮いて見えます。宏池会はもともと、経済を重視して軍事にはあまり力を入れない方針だったのに、保守リベラル派としての矜持はどこに行ってしまったのかなと、残念です。

――岸田首相は21日から、政権の課題について現場の声を拾う「全国行脚」をスタートしました。原点に立ち返り、「聞く力」を再アピールする狙いのようですが……。

 岸田さんの場合、ただ聞いているだけで、何をするわけでもない。政策として実行する現実感が乏しいです。福島で「原発処理水の海洋放出をやめてください」って言われても、対処するとは思えませんし。「聞く力」ではなく、「聞くふりの力」じゃないですか? それか、「アメリカの言うことだけは聞く力」。

■今の方向性は変わるか

――支持率回復のために、岸田政権が為すべきことは?

 やっぱり、まずは国民の生活を第一にすべきです。来るかわからない戦争に備える前に、少子化のような既に起きている問題の解決に踏み切らないと。政府は今、毎年4兆円の追加財源を確保して、2027年度に防衛費をGDPの2%まで引き上げる方針です。そんなお金があるなら、軍拡ではなく教育に回すべきでしょう。年3兆円あれば、公立校において、高校までの授業料や給食費を完全無償化できると聞きます。まずは子どもたちの未来に投資をしてほしいし、暮らしが楽になる実感を持てるようにしてほしい。

 でも正直、自民党が政権についているうちは、全体的な国の方向性は変わらないと思うんです。安倍政権の後も軍拡はさらに加速していて、たとえ岸田政権が倒れて別の人が首相になっても、この流れには逆らえないだろうなと。今の自民党はまさに金太郎飴で、切っても切っても似たような金太郎しか出てこない。そうなると、もう政権交代しかないと思っています。

――野党に求めることはありますか?

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日本維新の会から学ぶこと