※写真はイメージです(Getty Images)
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 誰もが求める「人生の幸せ」。ハーバード大学では84年にわたって2000人以上の人生を調査し、「幸せの研究」をしてきた。そんな長年の研究をまとめたのが、『グッド・ライフ 幸せになるのに、遅すぎることはない』(辰巳出版)だ。そこで言及されているのは、幸福な人生において「よい人間関係」が重要だということ。同書で挙げられている人間関係をよくする方法を、一部抜粋、再編集し、紹介する。

【図版】この本をより知りたい方はこちら

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「ここにあるのに、私が今まで気づいていなかったものは何?」という質問は、人間関係に当てはめると、非常に大きな効果が期待できる。「この人について、私がこれまで気づいていなかったことは何?」「この人が感じていることで、私がとらえ損ねていることは何?」という質問は、「強い好奇心の大切さ」にも通じるものだ。

 誰かと一緒にいても、私たちはその人の経験していることの多くをとらえ損ねている。頭の中で大量の感情や思考が行き交っているからだ。どんなやりとりだろうが、相手が誰であっても(最も親しい間柄であっても)関係ない。だが、究極的に考えたとき、相手の経験について「正しく理解する」ことと「好奇心を寄せること」のどちらが大切なのだろうか?

 二〇一二年、筆者はこの問題の答えを探るべく実験を行った。配偶者や恋人と口論になると、雰囲気はギスギスするし、誤解がどんどん重なっていくものだ。そこで、さまざまな背景をもつ一五六組のカップルを被験者として集め、過去一ヵ月間で相手に対して不満や苛立ち、失望を感じた出来事(例えば、約束を守らなかった、重要なイベントの情報を共有してくれなかった、分担している家事をしなかった、など)を一、二文にまとめ、それを読み上げてもらって録音した。その後、互いの録音を再生し、二人で話し合ってもらったが、その際にはその出来事をよく理解しようと努力してほしい、と指示を出した。

 被験者には知らせていなかったが、共感の重要性を調べる実験だった。相手の気持ちを正確に理解していることが重要なのか、それとも理解しようとする努力が相手に伝わることが重要なのか? それを知りたいと思っていた。

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パートナーの感情を理解すること