※写真はイメージです(写真/Getty Images)
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 親が病気やけがで病院に運ばれ、退院後の一人暮らしは無理といわれたときから、ばたばたと老人ホームなどの入居施設選びが始まるケースは多いようです。どの家族も施設のパンフレットを手に入れ、見学に訪れ、職員との面談を希望します。しかし、「その前にやっておいてほしいことがある」と介護アドバイザーの高口光子さんは言います。それがなければ施設選びは不可能だとも。どのようなことなのでしょうか。

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■親の緊急入院。その後の施設選択が急がれる

 一人暮らしをしていた親が脳卒中や転倒による骨折などで急に入院。遠方に住むあなたはとりあえず駆けつけ、命は助かってほっとしたのもつかの間、「退院後の一人暮らしは難しいでしょう」という診断。しかも運び込まれた急性期病院は1カ月ほどで退院しなければならないとのこと。親との同居をするつもりがないなら、施設あるいは一人暮らしのための在宅サービスを選ばなければなりません。

元気がでる介護研究所代表・高口光子氏
元気がでる介護研究所代表・高口光子氏

 一般的には、こうなってもあわてずにすむように、「親が70代80代になったら、心の準備をしておいてください」といわれていますが、それでも現実にその状況になると、やはり驚き、あわててしまい、後悔につながる展開となってしまうこともあります。だからこそ、病院の医療ソーシャルワーカー(MSW)やケアマネジャーなどの介護スタッフへの相談は必須となります。

 しかし、相談の場に臨んで、一番大切なこと、必要なことを押さえていない人が多いのです。それは、子どもであるあなた自身の意思です。

■制度のことはわかっているが、決められない

 母親が脳梗塞で倒れて左半身にまひが残り、それまでの一人暮らしが続けられなくなった、と訪れた50代半ばの男性(息子)の相談も、そんな内容でした。

 まずおかあさんのおおよその状況を聞いたあとで、介護保険サービスでできること、高齢者施設の種類、施設にはそれぞれ特徴があること、おかあさん本人や家族の希望に合わせて選べることなどを、パンフレットを見てもらいながらくわしく説明します。すると、「わかってる、わかってる。だからうちの母親の場合、どうしたらいいんですか。それを教えてください」との答えです。

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高口光子

高口光子

高知医療学院卒業。理学療法士として病院勤務ののち、特別養護老人ホームに介護職として勤務。2002年から医療法人財団百葉の会で法人事務局企画教育推進室室長、生活リハビリ推進室室長を務めるとともに、介護アドバイザーとして活動。介護老人保健施設・鶴舞乃城、星のしずくの立ち上げに参加。22年、理想の介護の追求と実現を考える「髙口光子の元気がでる介護研究所」を設立。介護アドバイザー、理学療法士、介護福祉士、介護支援専門員。『介護施設で死ぬということ』『認知症介護びっくり日記』『リーダーのためのケア技術論』『介護の毒(ドク)はコドク(孤独)です。』など著書多数。https://genki-kaigo.net/ (元気がでる介護研究所)

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