岸田内閣が先月末にまとめた「異次元の少子化対策」のたたき台に対して、冷ややかな視線が向けられている。朝日新聞社が今月8、9日に実施した世論調査によると、少子化問題の改善に「期待できない」という回答が61%を占め、「期待できる」の33%を大きく上回った。日本では1990年代から少子化対策が進められてきたが、事実上、失敗に終わってきた。その原因について、家族社会学が専門の中央大学の山田昌弘教授は「これまでの少子化対策は、子育て世帯の3割程度にすぎない正社員同士の夫婦の世帯に向けたものだった」と指摘する。大多数の世帯に届かない施策が、また繰り返されかねないという。
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「少子化が加速しているといっても、ここ20年、東京23区内で生まれた子どもの数は減っていないんですよ」と、山田教授は言う。
「23区には大卒の大企業の正社員同士の共働き、いわゆる『パワーカップル』が集中している。ここでは育児休業制度の推進や保育所の整備が成功した。パワーカップルにとっては子どもを産みやすくなっている。一方、夫が中小企業勤めで、妻がパートという地方の典型的な世帯や、そもそも結婚していない人に対してはあまり意味のない対策です。そんなわけで、ずっと少子化が続いてきた」
厚生労働省の「人口動態統計」によると、日本全体の出生数は2001年が117万662人、21年は81万1622人で、30.7%も減少した。それに対して、東京23区の出生数は01年が6万4240人、21年は6万9345人で、0.8%増えた。その差は歴然としている。
パワーカップルはタワーマンション購入の中心層でもある。臨海部にタワマンが林立する中央区は東京23区内でも特に出生率が高い。同区の合計特殊出生率は06年まで1.0以下だったが、その後は上昇に転じ、10年ほど前から1.4前後を推移し、全国平均の1.30(21年)を上回ってきた。