エマニュエル・トッドほか著『2035年の世界地図』※Amazonで本の詳細を見る
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 民主主義は、特定の場所における、特定の人びとによる自己組織化です。そして、極右政党のほとんどは、労働者階級や低学歴者を代表します。強い排外的傾向を持っているからと言って、民主主義の担い手として失格にはできません。

 問題は、それがうまく機能しないということです。高学歴者は、極端な右翼政党の権力を受け入れず、抵抗します。

 米国では市民の統合は実現していません。トランプ支持者と民主党支持者の間で、まったく合意はありません。新たな戦いが出てきただけです。エリート、そして高学歴層は低教育層をいっそう軽蔑するという経験をし、そして何も生まれていません。これが教育の階層化がもたらす問題です。

 さて、私は、我々のシステムをリベラルな寡頭制だと申しました。しかし、この寡頭制はさらに、断片化の危険にさらされています。

 次のような移行を思い浮かべられるでしょう。リベラルな民主主義から、リベラルな寡頭制、そして何もなし。あるいは分解ということです。こんな話をしてしまった。自分でも、最近はちょっと悲観的になっている、と思っています。

エマニュエル・トッド
歴史家、文化人類学者、人口学者。
1951年フランス生まれ。家族制度や識字率、出生率に基づき現代政治や社会を分析し、ソ連崩壊、米国の金融危機、アラブの春、英国EU離脱などを予言。主な著書に『グローバリズム以後』(朝日新聞出版)、『帝国以後』『経済幻想』(藤原書店)、『我々はどこから来て、今どこにいるのか?』『第三次世界大戦はもう始まっている』(文藝春秋)など。