食道がんのリスク因子について、大阪国際がんセンター消化器外科主任部長・食道外科長の宮田博志医師はこう話します。

「食道がんの中でも、腺がんというタイプは、逆流性食道炎がリスク因子とされています。日本では、扁平上皮がんというタイプが95%以上で、欧米で多い腺がんは3~4%と少ないものの、食生活の欧米化などに伴い少しずつ増加傾向にあります。今後は、新たなリスク因子として逆流性食道炎にも注意が必要かもしれません」

■初期は自覚症状がなく、早期発見には内視鏡検査が必要

 初期の食道がんは、自覚症状がほとんどありません。そのため、ステージ0期、I期で症状により発見されることは、まずないといわれています。のどの詰まりや胸やけなどの症状がみられてからの受診では、すでに進行がんとして発見されることが多く、早期発見のためには定期的に内視鏡検査を受けることが必要です。

 食道がんの診断には、食道がんであることの確定診断と、治療方針を決めるための病期(がんの進行度)診断があります。

確定診断のためには、食道内視鏡検査で食道の状態を調べるのと同時に、病変がある部分の組織を採取し、顕微鏡でがん細胞の有無を確認する病理検査をおこなうのが一般的です。

 病期診断には、「内視鏡検査とCT検査が必須」と宮田医師は話します。内視鏡検査で、がんが食道壁のどの程度の深さまで及んでいるか、周囲の臓器まで広がっているかなどを調べ、CT検査では周辺の臓器への広がりと、リンパ節や肺、肝臓などへの転移の有無を調べます。

「プラスαとして、PET(陽電子放射断層撮影)検査をおこなうこともあります。この検査も転移診断に有用です」(宮田医師)

■手術ではがんのある食道を切除し、胃や腸で食道を再建

 食道がんの治療法は、病期や患者の年齢、からだの状態、合併症の有無などによって検討します。一般的に、がんが食道壁の粘膜内にとどまりリンパ節への転移がない早期がん(0期)では、内視鏡によるがんの切除が推奨されます。

次のページ
化学放射線治療はメリットがあるが、副作用も