鈴木俊一財務相は1月6日の閣議後会見で甘利氏の発言について、

「将来の消費税について政府が具体的な検討はしていない」

 と述べた。

 松野博一官房長官も同様に、

「(消費増税に)当面触れることは考えていない」

 と火消しに躍起となっている。

 21年秋の自民党総裁選で勝利を勝ち取り、首相の座についた岸田首相。その流れをつくり、党内をまとめたのが甘利氏だ。岸田首相は、最初の党人事で甘利氏を幹事長に据えた。それほど2人は緊密な関係だ。

「防衛増税に加えて、公約の少子化対策の実現となれば財源が必要。防衛増税で支持率はさらに下落して、厳しい状況に置かれるのは岸田首相だ。さすがに、これ以上は増税論には踏み込めない。甘利氏が岸田首相の立場を考え、防衛増税の次は少子化対策の財源として消費税増税、と自らが先に発言することで憎まれ役を買って出たと思います。2人は当然、裏でそのあたりについて話をすり合わせているはず」

 そう話すのは、岸田派の国会議員だ。

 もしそうであれば、防衛増税に加えて少子化対策の消費税増税も自民党内では「決着」ということになりかねない。

 増税ありきという岸田首相の方針について、前出の泉市長は、

「家庭で、子育てお金が必要となればどうするのか。お父ちゃんは晩酌のビールを2本から1本に減らす、お母ちゃんは冬物コートを今シーズンはあきらめる。そうやって子どもへのお金を捻出してゆく。明石市がやったことも、同じようなことなんです」

 と前置きをした上で、

「日本は30年間、経済成長しておらず、収入も増えていない。一方で消費税増税や介護保険で国民の負担は増すばかり。もう国民は十分に負担しているのです。もし、少子化対策を消費税増税でするならば負担はさらに増えるので、子どもが生めなくなっていきます。当然、明石市のような経済効果もありません。少子化対策というのは、国民に安心というキーワードを提示するものなんです。それが消費税増税となれば、逆に不安に陥らせてしまう」

 と厳しく批判する。

兵庫県明石市の泉房穂市長(左)。商店街で子育て中の市民らから声を掛けられることも
兵庫県明石市の泉房穂市長(左)。商店街で子育て中の市民らから声を掛けられることも
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少子化対策のグローバルスタンダードは