「異次元の少子化対策」として、政府は、児童手当や育児休業給付の拡充、親の就労にかかわらず保育園を利用できる「こども誰でも通園制度」の創設などを進めています。一方、その財源を公的医療保険料に上乗せする形で徴収する見込みで、その額は1兆円といいます。今回の政策により、子どもを産みやすい、子育てしやすい社会になるのでしょうか。政策の評価について、第一生命経済研究所の首席エコノミストの永濱利廣さんに聞きました。

MENU どうして全国民に負担を強いるのか 今後結婚、子どもを考える人を後押しする政策ではない 年収600万未満の夫婦の子ども保有率が“激減”

―――児童手当や育児休業給付などの少子化対策として、政府は「支援金」を徴収する方針を示しています。

 公的医療保険料に上乗せして子育て対策のための費用を徴収する制度「こども・子育て支援金制度」を創設し、2026年から段階的に徴収額を増やし、最終的に1兆円を徴収する見込みです。このお金は、妊産婦の方への10万円の給付や育児休業給付の引き上げ、親が働いていなくても保育所などを利用できる制度、児童手当の拡充に使われる予定です。児童手当は、所得制限を撤廃し高校生年代まで延長。第3子以降は月額3万円が支給される予定です。医療保険制度は加入者が多く、「全ての世代による分かち合い・連帯の仕組み」であると、されています。

どうして全国民に負担を強いるのか

―――支給は増やしつつも負担を課すという仕組みについて、どのようにお考えでしょう。

 日経平均株価が史上最高値を更新し、4日には初めて4万円を超えました。一見、景気が良いように思うかもしれませんが、日本の景気は良くなく、1~3月期もマイナス成長が予想されています。このタイミングで、どうして全国民に負担を強いるのでしょうか。

 当初、負担額は1人当たり平均月500円程度かと言われていました。それぞれの加入する医療保険によって差はありますが、実際は1人当たり平均月1000円ほどとなるでしょう。

 政府は賃上げを目指していますが、もし、賃金が上がったとしても物価も上がっています。確かに今年は所得税1万円と住民税3万円と、1人当たり4万円の定額減税が実施されます。扶養家族も対象となっていますが、それでも物価上昇を勘案すれば今回の負担増は明らかに家計にマイナスとなると考えます。

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永野原梨香
永野原梨香

ながのはら・りか/『週刊エコノミスト』、『AERA』『週刊朝日』などに勤務し、現在、フリーライター。識者インタビューのほか、マネーや子育てをテーマに執筆中。

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