この他、ワカメなどの海藻やカイワレ大根、ワラビなどの山菜類もおなじみのつま。今村さんによると、カイワレもそうだが、最近は野菜の「スプラウト(新芽)」の商品の種類が増えており、つまに使われることが多くなっているという。

「江戸時代の書物には、つまに関する記述がたくさんあります。日本人は、それだけ古くから魚のおいしい食べ方を考えてきたということ。先人たちからの工夫の積み重ねがあって、さまざまなつまが存在しているのだと思います」

 ただ、そもそも食べていいのかを知らない人や、残すことがマナーだと思っている人もいるかもしれない。

「どうしてなのかと疑問に思います。最近はめったに見ませんが、昔はスーパーなどで売っているお刺し身の下に敷かれた大根に、魚の水分が染みて色がついてしまっていたものがありました。あれを見て、つまは食べる物ではなく刺し身を乗せる飾りのようなものと思ってしまったのかもしれません」

 重ねて書くが、料理人は刺し身をおいしく食べられるようにつまを添えている。大人数で刺し身の盛り合わせを食べるときも、遠慮なくつまを食べてほしいという。

 今村さんに、おすすめの刺し身とつまの組み合わせを聞いてみた。

「ナガイモと酢でしめた青魚のお刺し身を一緒に食べると、おいしいですよ」

 え? つまと刺し身を同時に食べちゃってるじゃないですか。交互がおすすめなのでは?

「あはは、そうですよね。でも、本当に相性が良くて好きなんです」

 刺し身とつまの楽しみ方は、人それぞれの自由。今村さんは最後に、一番大事なことを教えてくれた。(AERA dot.編集部・國府田英之)

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國府田英之

國府田英之

1976年生まれ。全国紙の記者を経て2010年からフリーランスに。週刊誌記者やポータルサイトのニュースデスクなどを転々とする。家族の介護で離職し、しばらく無職で過ごしたのち20年秋からAERAdot.記者に。テーマは「社会」。どんなできごとも社会です。

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